長らく阪急の駅しか存在しなかった大阪府島本町の地に実に約70年ぶりに開業された、JR京都線の島式1面2線の地上駅。
古典文学「太平記」の名場面である「桜井の別れ」の舞台となった「桜井駅跡」に併設し、「桜井ノ駅」駅が駅名候補として上がるも、他所に「桜井駅」が複数存在することから断念した経緯を持つ。
建設コスト抑制の観点から橋上となった駅舎は、自然豊かな島本町の風景を一望できる展望スポットの役割を果たしており、見晴し抜群の複々線と共に素晴らしい眺望が堪能できる魅力的な駅となっている。
目次
外観・駅周辺
1876年(明治9年)の東海道本線敷設から長らく駅の存在しなかった大阪府島本町のこの地に、2008年(平成20年)に開業したJR島本駅。
綺麗に整備された駅東口から東方向を望む。ここから600mほど先に、それまでの島本町唯一の駅であった阪急水無瀬駅がある。
そして、当駅東口広場のすぐそばには、「桜井駅跡」が存在する。
古代律令時代の駅家(駅馬に乗ることが許された公的な使者である駅使向けに宿泊・食料を提供した施設)があった場所で、1921年(大正10年)に国の史跡に指定されている。
その駅跡構内には、「楠公父子訣別之所」と記された大きな石碑が飾られている。
湊川の戦いに出陣する楠木正成が嫡子・楠木正行と別れた、古典文学「太平記」の名場面の一つである「桜井の別れ」の舞台となった場所である。
その桜井駅跡から駅前広場を挟んで向かいにある島本町立歴史文化資料館。
桜井駅跡の記念館「麗天館」として、1941年(昭和16年)に当時大阪財界の重鎮であった一瀬粂吉(いちのせ・くめきち)によって建設された。
当駅属するJR京都線(東海道本線)は、線形抜群の複々線が伸びる絶好の撮影スポット路線となっており、写真奥にみえる歩道橋からは、、、
自然豊かな島本町の風景をバックにした島本駅の絶景が堪能できる。島本駅はJR京都線における大阪府下最東端の駅となっている。
大阪府唯一の名水百選「離宮の水」有する水無瀬神宮
水無瀬神宮参道の入り口は、阪急京都線とJR京都線に囲まれた住宅街のど真ん中に存在する。
現在は住宅地に変貌したが、かつては景観美しい自然豊かな地域で、この地をこよなく愛した後鳥羽上皇がこの地に水無瀬離宮を造営した。
その参道の先にある鳥居。水無瀬神宮は、承久の乱で隠岐に流された後鳥羽上皇の違勅に基づいて、1240年(仁治元年)に水無瀬離宮の跡地に建立されたものだ。
鳥居をくぐった先にある、桃山時代に造営された薬医門造であり、大阪府の重要文化財に指定されている神門。
門の右側には、祀られている名刀を盗みに入ろうとした石川五右衛門の残した手形と言われるものの跡がある。
そして、拝殿の左側には、豊臣秀吉が家臣の福島正則に命じて造営し、寄進したとされる「客殿」が見える。
桃山時代末期の美しい入母屋造が特徴的で、国の重要文化財に指定された立派な建造物だ。
そして、境内の西側、神門に近い場所には何やら人だかりが出来ているが、、、
実はこの場所は大阪府下で唯一名水百選に認定された涌水「離宮の水」が取水できる場所で、平日昼間でもこの水を求める人たちで賑わっている。
この離宮の水が豊富に採れる島本町の水道水の90%は、この涌水が使用されている。
改札口・コンコース
元々当駅は駅舎を地下に設置する「半地下方式」を採用する予定であったが、事業費の大半を島本町が負担する請願駅であるため、建設費用を抑えられる橋上駅舎に変更されたらしい。
しかし、橋上駅舎にしたおかげで、コンコースは自然豊かな島本町の風景が堪能出来る展望スポットとなった。
この駅西側方向の山の中腹には、名神高速道路が通っているのが見える。
今度は、駅南方向を望む。線形の良い複々線の素晴らしい眺望を堪能できる。
島本町は、大阪府北東端の町だが、郵便番号や市外局番は京都府扱いとなっている珍しい場所となっている。
次は、駅北東方向の桜井駅跡方向を望む。
かつてはこの地帯は森に覆われた静謐な雰囲気だったが、当駅開業により、駅前広場整備にために森が伐採された。
改札口は橋上に1か所。改札機が3台のコンパクトな改札口だ。
当駅の利用客数は1日約12000人。
2008年(平成20年)の開業当初は1万人を割っていたが、その後順調に増加を続け、2013年(平成25年)には競合の阪急水無瀬駅を上回った。
時刻表
JR京都線:京都・草津方面
当駅は普通のみ停車する駅で、通常は高槻以東普通となり、滋賀県方面に向かう3扉車と、京都行きの4扉車が毎時4本ずつ運行されている。
但し、昼間時間帯は、4扉普通車の運行は無く、野洲・米原方面に向かう3扉車のみの運行となっている。
JR京都線:大阪・三ノ宮方面
大阪方面行きは、高槻以西快速運転されるクロスシート3扉車と、終点まで各駅に止まる普通電車が毎時4本ずつ運行される。
競合の阪急水無瀬駅との比較では、大阪・梅田までJR快速で23分、普通で27分。対する阪急は茨木市で特急に乗換えても30分を要する。
こちらも、昼間時間帯は快速のみの運転となる時間帯がある。
乗り場
ホームは、内側線にのみ設けられた島式1面2線。当駅の約半年後に開業した桂川駅と同様の構造だ。
計画段階では駅前の名所である桜井駅跡に因んだ「桜井ノ駅駅」も候補に挙がったが、「桜井駅」が他所にすでに存在するため却下されたらしい(JR万葉まほろば線(桜井線)の桜井駅及び阪急箕面線桜井駅)。
JR京都線名物の見晴し抜群の複々線だが、内側線にのみホームのある当駅からは特に格別の眺望が展開され、一大撮影スポットとなっている。
当駅は、JR京都線の駅としては、1964年(昭和39年)の新大阪駅以来実に44年ぶりに設置された新駅となった。
ホームから眺める駅北側の自然豊かな絶景も、当駅の魅力の一つである。
駅北西には、天下分け目の天王山の姿も見える。
西は天王山、東は男山に挟まれた地峡である島本町は、京都盆地から大阪平野に抜ける交通の要衝として古くから栄えた。
その眺望豊かな島式ホームから、外側線を爆速で通過していく新快速の姿を堪能できるのも、当駅の醍醐味の一つである。
そして、内側線の1番のりばに、高槻から快速となる姫路行きが221系でやってきた。
当駅は、2015年(平成27年)3月にJR京都線全駅に接近メロディが導入される以前から、地元の要望で当駅独自の接近メロディが使用されている珍しい駅であった。
その横顔。この快適3扉クロスシート車の種別表記は、次の高槻駅で「普通」から「快速」に代わる。
その221系車内から、高槻方面を望む。
当駅ー高槻駅間は、JR京都線内で最長の駅間距離(5.3km)となっているが、当駅開業前は高槻から山崎まで駅が無く、その駅間距離は実に7.5kmもあった。
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