滋賀県北東部の中心都市・彦根市の代表駅で、米原駅の一駅南に位置する相対式2面2線の地上駅で、第4回近畿の駅百選認定駅。
譜代大名・井伊家の居城であった国宝・彦根城の城下町として栄え、駅西口から一望できる同城の雄姿や往時の雰囲気を残す歴史ある街並み等の魅力的な周辺環境を楽しむことが出来る。
また、往年の名車が保存されている近江鉄道の大車両基地や、駅舎橋上化前に共用していた近江鉄道線の乗り場の名残等、駅構内も魅力満載の駅となっている。
目次
外観・駅周辺
【国宝・彦根城と護国神社のある西口】
滋賀県北東部の中心都市・彦根市の代表駅である彦根駅。その西口を望む。
その西口駅前広場には、彦根のイメージキャラクターであり「ゆるキャラ」ブームの火付け役となった「ひこにゃん」と、彦根藩・初代藩主であった井伊直政像が出迎えてくれる。
ちなみに、この「ひこにゃん」はその井伊直政の次男である二代目藩主・井伊直孝をお寺の門前で手招きして雷雨から救ったとされる「招き猫」がモデルとなっているらしい。
その西口駅前広場の南側は、バスターミナルとなっているが、それほど多くの本数は走っていないようだ。
中山道と北陸道が合流する古くからの交通の要衝であった彦根は、石田三成の佐和山城に始まり、関ケ原の戦いで三成が敗れた後は、徳川家の譜代大名である井伊家の所領となり、彦根藩として発展した、非常に歴史のある街である。
彦根駅西口からは、メインストリートが綺麗にまっすぐ伸びており、天候が良ければここから彦根城の姿が一望できる。
この滋賀県の駅前にお決まりのように存在する平和堂・アルプラザは、この彦根が創業の地である(一号店は彦根駅前ではなく銀座商店街にある彦根銀座店)。
同じ城下町であるJR和歌山駅前にも似た、開放感が魅力のメインストリートだ。この通り沿いが市役所等がある彦根市の行政の中心地である。
一方、経済の中心地は駅前からはやや離れており、このメインストリートの突き当りから南方向に向かった彦根城の城下付近に存在している。
そのメインストリートの突き当りには、滋賀懸(しがけん)護国神社の大鳥居が堂々と構えられている。
その護国神社の大鳥居から彦根駅方向を望む。高い建造物が少なく、開放的な視界が魅力的だ。
この神社は、「護国神社」と称するだけに、国家のために戦火で命を落とした英霊を祀る神社で、原則各府県1社となっており、滋賀県の護国神社はこの彦根の地に鎮座している。
そして、その護国神社をお膝元に抱えるのが、彦根のシンボル・彦根城。
徳川の譜代大名・井伊氏14代の居城であり、姫路城と共に国宝に指定されている名城で、姫路城に次ぐ世界遺産登録を狙っている。
明治時代に入って、各地の城が廃城令によって取り壊される中、この彦根城も廃城の危機に瀕したが、当地を巡幸された明治天皇の命により廃城が免れた。
その遺構を良く残す城郭は、姫路城と共に映画・ドラマのロケによく利用されている。
この彦根城は明治維新後も井伊家の所有となっていたが、終戦間際の1944年(昭和19年)に当家から彦根市に寄付された。
【近江鉄道車庫のある東口】
古くからの城下町が堪能できる西口に対し、この東口は当駅開業から実に100年以上を経た2007年(平成19年)に出来た新しい玄関口だ。
従って、その東口の駅前は歴史の名残を感じさせる西口とは打って変わった新鮮味のある風景となっている。
そして、この東口の最大の醍醐味がこの隣接する近江鉄道・彦根駅東側に拡がる広大な車両基地。
現役を引退した往年の名車や電気機関車の姿も堪能することが出来、鉄道ファンには萌え萌え感満載の場所となっている。
改札口・コンコース
1889年(明治22年)に開業した彦根駅。100年以上の歴史を有する当駅が橋上化されたのは、1981年(昭和56年)のことである。
JR彦根駅の改札口はその橋上コンコースの西側にあり、その奥に進むと、、、
近江鉄道彦根駅への連絡階段がある。かつてはJR(国鉄)と近江鉄道は共同使用駅だったが、橋上化に伴い改札口が分離されたようだ。
その橋上コンコースからは、近江鉄道の大車両基地の様子を堪能することが出来る。
当駅の開業は1889年(明治22年)だが、実はその7年前の1882年(明治15年)に、東から来る東海道本線は現在は北陸本線となっている長浜駅をその終端としていた。
つまり、東海道本線開通時には、米原はおろか滋賀県北東部の中心都市であるこの彦根までも、線路が通らないという不可思議な現象が起こったのだ。
その理由は、当時の東海道本線は、線路敷設コストの関係から琵琶湖縦断を鉄路ではなく水運で代替する策が採られ、その鉄道連絡船の港が設置できる長浜に線路を敷設させたためであった。
改札内コンコースから南の南彦根・草津方面を望む。
しかし、やはり鉄路敷設の必要性が認識され、1889年(明治22年)に関ケ原ー馬場(現・膳所)が開通したことに伴い滋賀県北東部の中心都市である当地にも駅が設置された。
今度は、反対側の米原・大垣方面を望む。右手に、かつて石田三成が居城を置いた佐和山の美しい眺望が開けている。
時刻表
琵琶湖線:草津・京都・大阪方面
快速系統の運行上の境界駅である野洲駅以東の琵琶湖線(東海道本線)は新快速と高槻から快速となる普通電車が毎時2本ずつ運行されている。
普通は草津・京都までは新快速の追い抜きを受けずに先着する。その爆速ぶりが人気の新快速は、当駅から約60km離れた京都まで48分、約105km離れた大阪駅へも78分で走破してしまう。
琵琶湖線:米原・長浜・大垣方面
国鉄分割民営化後は、米原から以遠は東海道本線ではなく北陸本線の長浜方面と一体運用されている琵琶湖線。
日中は次の米原止まりの普通と、同駅から北陸本線に入る新快速が毎時2本ずつ運行されている。
新快速は、当駅より先は各駅に停車するが、そのブランド力からか、各駅に停車する区間でも「新快速」のまま走り続ける。
乗り場
ホームは相対式2面2線のシンプルな構造だが、実は当駅は第4回近畿の駅百選に選定されている。
当駅の利用客数は1日約2万人。彦根市内にある駅の中で最多を誇り、新幹線・北陸本線との接続駅である隣の米原駅をも上回っている。
【1番のりば】琵琶湖線:米原・長浜・大垣方面
国鉄分割民営化以前は、当駅ー米原間が大阪鉄道管理局と名古屋鉄道管理局の境界となっていた。
当駅の醍醐味である近江鉄道の大車両基地を2番乗り場越しに望む。JRの駅のシンプルさを補って余りある生きた鉄道博物館である。
1番のりばに到着した225系新快速米原行き。
当駅への新快速電車乗り入れは、1985年(昭和60年)にまでさかのぼるが、当駅以遠が名古屋鉄道管理局の管轄にあったため、せっかくの新快速電車も米原までの乗入れは叶わなかった。
従って、民営化によってJR西日本とJR東海の境界が米原ー醒ヶ井間に移るまでは、新快速は当駅止まりであり、この1番のりばで折り返し運転を行っていたらしい。
その後、1989年(平成元年)に新快速は米原への乗入れを果たし、その2年後の1991年(平成3年)には北陸本線に入って長浜、さらに2006年(平成18年)には湖西線との接続駅である近江塩津・敦賀まで運行区間が拡大されている。
その223系新快速電車が次の米原駅に向けて発車した。新快速は当駅以遠は各駅に停車するが、最後まで「新快速」のまま運行される。
【2番のりば】琵琶湖線:草津・京都方面
一見、シンプルな相対式2面2線の駅に見える彦根駅だが、この2番のりば側には実は色々と楽しみが詰まっている。
ホーム北端から米原方面を望む。奥に見える佐和山をJR琵琶湖線は左から複線で、そして近江鉄道本線は右から単線で回り込み、6キロ先の米原駅で再び合流する。
そして、上の写真から後を振り返って、2番のりば東側に拡がる近江鉄道の大車両基地を拝む。
その2番のりばに、223系の新快速姫路方面網干行きが到着した。
ここから約200km離れた姫路駅まで約140分で走破する。その表定速度80km/hは特急電車顔負けの爆速ぶりである。
そして、近江鉄道の大車両基地もさることながら、それに負けず劣らず興味深いのが、2番のりばと近江鉄道の線路の間の微妙な空間。
その微妙な空間をよそに、地元フジテックの鮮やかなラッピングがまぶしい近江鉄道800系が当駅始発の米原行きとして入線していく。
そのままホーム南側に移動すると、駅票越しに隣接する近江鉄道の彦根駅の姿が現れる。
そして、線路が無く列車が来るはずの無い2番のりばホームの柵側に、なぜか黄色い点字ブロックが埋め込まれている。
近江鉄道の彦根駅は、当駅開業から9年後の1898年(明治31年)に開業した、こちらも歴史ある駅で、この駅が近江鉄道発祥の地でもある。
今では完全に区切られてしまったJRと近江鉄道だが、何とこの微妙な空間には、当駅橋上化まで線路が走っていた。
その線路は近江鉄道の電車が走行し、実は米原方面行きの電車は、この2番のりば向かい側から発着していたらしい。
その名残が、微妙な空間とかつて乗り場が存在していたことを示す黄色い点字ブロックとして残っているのだ。
駅舎橋上化以前は、このホームで近江鉄道と国鉄の列車が対面乗り換えが出来たのだろうか。
そのホーム南端から南彦根・草津方面を望む。ローカル色満載の近江鉄道と、都会色満載のJR線とのコラボが楽しめるのも当駅の魅力の一つである。
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