中山道第二の宿場町であり、多賀大社一の鳥居門前にある高宮宿の最寄駅である、本線(彦根・多賀大社線/湖東近江路線)と多賀線が接続する2面3線の地上駅。
駅舎はリニューアルされたものの、120年の歴史が刻まれた開業当時のままの三角ホームは、その大胆な構造と余りのレトロ感に、訪れるものを惹きつけて離さない魔性的魅力を有している。
また、駅周辺も多賀大社一の鳥居の門前町として栄華を誇ったかつての喧騒感がウソのような静寂が拡がっており、世紀を超えた歴史を刻む駅と共に哀愁的魅力を放っている。
目次
外観・駅周辺
滋賀県最古の私鉄・近江鉄道開通と同時の1898年(明治31年)に開業した歴史ある高宮駅。その正面入り口を望む。
当駅の西側は、旧中山道第二の宿場町として栄えた高宮宿の面影を残す町並みが展開されている。
かつては宿場町として大いなる賑わいを見せたようだが、幹線がJR琵琶湖線側に移った今となっては、往時の喧騒感が嘘のような哀愁感漂う静寂が拡がっている。
高宮駅西側を走るこの滋賀県道223号高宮停車場線が、旧中山道六十九次における64番目の宿場町である高宮宿にあたる。
その高宮宿のランドマークとなっているのが、高宮郵便局前交差点に君臨するこの多賀大社一の鳥居。
滋賀県下にある石の鳥居としては古式で最大のものらしく、幅8m・高さ11mにも及び、高宮宿のランドマークにふさわしい風格を呈している。
その一の鳥居をくぐった先から東に向かう道は、延命長寿の神として親しまれる多賀大社への正式な参道となっているが、ここから多賀大社までは直線距離にして4キロほどの距離がある。
改札口・コンコース
当駅は開業以来120年以上の歴史を有するが、駅舎は2002年(平成14年)にコミュニティセンターを併設した新駅舎に生まれ変わった。
かつては駅員による改札があったことを伺わせる改札口。現在は朝夕以外は無人駅となったため、乗車時に整理券を受け取る。
こんなところにも往時の賑わいの面影が感じられ、何とも言えない哀愁感に浸ることが出来る。
そして、その改札口を入ったところにあるレトロ感満載の構内踏切。もう都会の駅では見られなくなった哀愁感漂う光景が堪能できるのが、近江鉄道の醍醐味である。
その構内踏切上から改札口方向を望む。駅舎は新しく生まれ変わったが、120年の歴史を刻んだ風情満載のレトロな光景が今も息づいている。
リニューアルの波に負けることなく、いつまでも残ってほしい風景である。
時刻表
本線:彦根・米原・八日市・貴生川方面/多賀線:多賀大社前方面
当駅は公式上は米原ー貴生川間の本線と、当駅ー多賀大社前間の多賀線との交換駅である。
しかし、2013年(平成25年)より、本線・米原ー多賀線・多賀大社前間が彦根・多賀大社線、そして本線の当駅ー八日市間が湖東近江路線の愛称が設定され、案内上も愛称が使用されるようになった。
とはいえ、運行形態は愛称路線と一致しておらず、日中は本線系統と多賀線系統では従来通り運行が分断されている。
日中は全線毎時1本の運行だが、多賀大社からの電車と本線の彦根・米原方面と、彦根からの本線と多賀大社行きの電車の接続は考慮されたダイヤとなっている。
乗り場
ホームは2面3線構造だが、1番線と2番線が千鳥式、島式の2・3番線が阪急塚口駅を思わせるような三角ホームという、かなり独特のホーム構造となっている。
【1番線】本線(彦根・多賀大社線):彦根・米原方面
本線の彦根・米原方面行きの1番線は、2・3番線の島式ホームとは、構内踏切を挟んで南側に位置する千鳥式配置となっている。
構内踏切北側から望む。1・2番線の間には中線も存在しているが、かつてはこの中線を使用するほど列車が頻繁に通っていたのだろうか。
その余りにレトロ過ぎて感動しきりの1番線に、元西武101系を改造した100系潮風号の米原行きがやってきた。
日中は毎時1本だけなので、貴重な遭遇だ。
毎時1本の列車が行ったあとの静寂感漂う1番線ホームから、南の尼子・八日市方面を望む。
かつて中山道第二の宿場町として栄えた喧騒感は遠い昔となってしまったが、その栄枯盛衰を刻んだ哀愁感が、この駅の価値を逆に高めているように思われる。
【2・3番線】本線(湖東近江路線):八日市・近江八幡・貴生川方面/多賀線(彦根・多賀大社線):多賀大社前方面
そして、構内踏切の向こう側にある当駅のハイライトである三角ホームに向かう。
まず、1番線と千鳥配置となっている2番線に、本線の100系・貴生川行きがやってきた。
本線の米原ー貴生川間47.7kmは、実は阪急京都線の梅田ー河原町間と同じ距離である。近江鉄道はその間を阪急特急の約2.5倍の時間をかけてのんびりと走破する。
今度はホーム北端から彦根口・彦根・米原方面を望む。右側に急カーブする線の先は、、、
三角ホームの斜辺にあたる3番線に繋がっている。阪急神戸線と伊丹線との接続駅である塚口駅の逆アングルの構図だ。
3番線は当駅から分岐する多賀線のホームとなっており、往年の西武電車ファンには懐かしさ満載の旧401系を改造した820系が当駅始発多賀大社前行きとして出発待ちをしている。
日中の多賀線の電車は、米原・彦根方面からの電車の接続を受けてすぐに発車するダイヤとなっている。
その3番線を1番線ホームより望む。
元々旧彦根藩士族と有力近江商人という地場資本によって1896年(明治29年)に設立された近江鉄道だが、後に電化のため1926年(大正15年)に現・関西電力の前身である宇治川電気系列となり、終戦直前に西武グループ入りしている。
この強烈な急カーブに元西武の20m級電車を入線させるために、電車の四角をカットすることに加え、このホームも削り取られた。
その3番線の西側は留置線となっており、何と改造前の西武電車の長編成車両が留置され、これだけ見ると関東の駅と錯覚するような光景が展開されている。
そして、3番線の向かい側はどうもかつて使用されていた形跡が伺えるホーム跡が残っている。
このような歴史の生き証人的な形跡が数多く残されているのも、近江鉄道の魅力の一つであり、この高宮駅はそんな中でもピカイチ級の掘り出し物の駅である。
今度は駅南側の踏切から、3番線ホームと留置線を望む。120年の歴史が刻み込まれたその存在だけで、立派な鉄道遺産的価値を有している。
今度は上の写真の場所から、多賀線のスクリーン・多賀大社前方面を望む。
多賀線の開通は当駅開業から約15年後の1914年(大正3年)。多賀大社への多数の参拝客輸送で賑わい、経営に苦しむ近江鉄道反転の起爆剤となった。
えきログちゃんねる
[魔性的魅力を放つ近江鉄道高宮駅]元西武101系潮風号貴生川行き発車風景201603
[レトロな魅力を放つ近江鉄道車内放送]本線貴生川行き(彦根⇒高宮)201603
[レトロな魅力を放つ近江鉄道車内放送]多賀線高宮行き(多賀大社前⇒高宮)201603