奈良県西の玄関口である近鉄生駒駅に直結する、生駒鋼索線(生駒ケーブル宝山寺線)の頭端式3面2線の地上駅。
大正時代に開通した日本最初の営業ケーブルカーの始発駅で、経営危機に瀕した創業当時の近鉄を救った宝山寺への返礼の意味合いから敷設された逸話が残されている。
また、ケーブル線にしては珍しい通勤通学路線であり、ケーブル特有の車窓からの絶景に加え、複々線区間や踏切の存在等、これもケーブル線ではなかなか見られない珍しい光景が堪能できる、見どころ満載のケーブル線となっている。
外観・駅周辺
王寺駅に並ぶ奈良県西の玄関口である近鉄生駒駅にほぼ直結している鳥居前駅は、生駒駅南口から宝山寺駅前に至る奈良県道237号生駒停車場宝山寺線に面している。
その鳥居前駅から北東方向にあるのが、近鉄生駒駅の南口バスターミナルである。
駅名が「鳥居前」となっているのは、当地付近に生駒聖天・宝山寺の一の鳥居があったためだが、1982年(昭和57年)の駅前再開発に伴い同寺院境内に移設されたらしい。
近鉄生駒駅へは、上の写真の手前にある再開発で誕生した「グリーンヒルいこま」の館内を抜けていく。
再開発で出来た商業施設だが、すでに誕生から35年程度経過しており、いい感じのレトロ感が漂っている。
その「グリーンヒルいこま」の館内を東に抜けると、近鉄生駒駅に繋がるペデストリアンデッキに繋がっている。
そのペデストリアンデッキの突き当たり右手(南側)には、「びっくり通り」かと思いきや「ぴっくり通り」なる商店街の入り口が見える。
商店街のアーケードがたったの50mしかなく、日本一短いがゆえに「びっくり」なのだが、意味なく語呂をかけて「ぴっくり」としたらしい。
そして、その突き当りを左に曲がると、近鉄生駒駅の中央改札に出る。鳥居前駅からは徒歩にして3分もかからない距離にある。
今度は、その生駒駅南口から鳥居前駅方向を望む。
今では大阪のベッドタウンとして有名な生駒だが、元々はケーブル線がつながっている山の中腹の宝山寺の門前町として発展してきたらしい。
そして、生駒駅北口にある近鉄百貨店生駒店の屋上広場からは、生駒山をまっすぐ登っていく生駒ケーブル宝山寺線(近鉄生駒鋼索線)の様子が一望できる。
改札口・コンコース
当駅含む生駒ケーブル(生駒鋼索線)は、1918年(大正7年)に、近鉄の前身である大阪電気軌道(大軌)の系列会社である生駒鋼索鉄道によって開通された、日本で最初の営業用ケーブルカーである。
生駒ケーブルは、次の宝山寺駅までが宝山寺線、同駅から生駒山上駅までが山上線と、路線が分かれているのが特徴的で、当初は宝山寺への参拝客輸送用として宝山寺線が開通した。
鳥居前駅改札内コンコースから近鉄生駒駅に繋がる「グリーンヒルいこま」方向を望む。
生駒鋼索鉄道は、開業から4年後の1922年(大正11年)に近鉄の前身・大阪電気軌道(大軌)に合併され、そのまま近鉄の路線となった。
鳥居前駅に直結する生駒駅は、生駒ケーブル開業の4年前の1914年(大正3年)に宝山寺の請願によって開業したと言われており、それによって宝山寺はかなりの参詣客が訪れるようになったらしい。
生駒ケーブルには自動改札が無く、改札は駅係員によって行われるローカル線スタイルとなっている。
ケーブル線の駅だが、まるで鉄道の終着駅のような立派な構内となっている。
時刻表
生駒鋼索線(生駒ケーブル宝山寺線):宝山寺方面
生駒ケーブルは、当駅ー宝山寺間の宝山寺線と、宝山寺ー生駒山上間の山上線に分かれており、終点の生駒山上駅に向かうためには、宝山寺駅での乗り換えを要する。
ケーブルカーにしては早朝から深夜まで運行されているのが、この宝山寺線の特徴となっている。
乗り場
ホームは頭端式3面2線の立派な構造となっている。
宝山寺線はケーブルカーには珍しい複線路線だが、運用上はそれぞれが分離された単線並行状態となっている。
宝山寺線1号線は開業当時から存在する線で、2000年(平成12年)に車両の大幅リニューアルを施しており、この三毛猫を模した「ミケ号」を筆頭に独特の車両が見られるのが特徴である。
一方向かい側の2号線は、1号線開業から8年後の1926年(昭和元年)に開通した線だが、1944年(昭和19年)から1953年(昭和28年)まで一時休止された歴史を持つ。
このすずらん号は、1953年(昭和28年)の運転再開時から使用されているベテラン車両である。
普段は1号線のみでの運行が行われている宝山寺線だが、取材当日は木曜日で1号線の点検日であったため、珍しく2号線での運行が行われていた。
その立派な頭端ホームを出発し、ケーブル線では珍しい複線の沿線風景を望む。
創業当時の近鉄は、生駒トンネル開削負担から一時経営破たんの危機に瀕したが、宝山寺の賽銭を融通してもらってその危機を乗り切った逸話が残されている。
単線並列型の配線のため、途中にある両線の行き違い箇所は、複々線のような形状となり、これもケーブル線にしては非常に珍しい光景が味わえる。
この生駒ケーブルは、経営危機に際して資金を用立てしてもらった宝山寺への返礼の意味合いが込められているらしい。
そして、何とケーブル線なのに踏切が存在するのも生駒ケーブルの見どころである。
平地が少ない生駒では山の傾斜地にも住宅がひしめいており、元々は宝山寺への参拝客輸送用に敷設された宝山寺線だが、この沿線風景から推察されるように今では立派な通勤通学路線として機能している。
従って、ケーブル線では珍しく早朝から深夜まで運行されており、日本最初のケーブルカーは今でも珍しモノづくしの見どころ満載の路線として、その存在感を堅持している。
そして、踏切のある複々線区間を過ぎると、山間部の沿線風景へ段々と変化していき、、、
生駒駅擁する生駒山麓の絶景が堪能出来る。この斜面からの絶景はケーブルカーのお楽しみの一つである。
えきログちゃんねる
[本邦初のケーブルカー・近鉄生駒鋼索線]宝山寺線鳥居前(生駒駅)行き発車風景201604