日本三大商人の一つ・近江商人発祥の地として有名な湖東の中心都市・近江八幡の代表駅である、琵琶湖線(東海道本線)の2面3線の地上駅。
草津以東の複線区間では最多の利用客数を誇る新快速停車駅だが、自ら拒否した車両基地が南の野洲駅に設置されたために、当駅発着本数がほぼ半減するという悲運を有する。
しかし、八幡堀を始めとする商都として栄えた歴史を今に残す街並みは絶景そのものであり、メンターム発祥の地や願いが叶う隠れパワースポット等、観光地にふさわしい魅力的な周辺環境を有する。
また、隣接する近江鉄道の光景が堪能できることに加え、かつて同線と繋がっていたレトロ感満載の廃線跡を伺うことが出来、駅構内も観光スポットに負けない見どころが詰まった魅力的な駅となっている。
目次
外観・駅周辺
滋賀県中部・琵琶湖の東岸に位置する近江八幡市の代表駅である近江八幡駅。その南口を望む。
当駅は運行上の境界駅である野洲駅よりも2駅北にあるが、駅前は同駅よりもかなり発展しており、この駅南側は昭和終盤期に土地区画整理事業によって様変わりしたらしい。
そして、その駅南側にはイオン近江八幡ショッピングセンターが直結している。
元々経営破たんしたマイカルが1991年(平成3年)に開業させた近江八幡サティを前身とする大型ショッピングセンターで、地元商店街とイオンで共同運営を行っている。
その南口からは、JRの駅に隣接する近江鉄道八日市線(万葉あかね線)の近江八幡駅の姿を見ることが出来る。
一方、古くからの表玄関として機能している北口。その歴史は当駅開業の1889年(明治22年)にまでさかのぼる。
この近江八幡は、大坂商人・伊勢商人に並ぶ日本三大商人の一つ・近江商人発祥の地としても知られている。
ちなみに近江商人とは、通常近江国(滋賀県)外に進出した商人のことを指しており、近江国内に活動地域が限定されていた商人は「地商い」と呼ばれていたらしい。
駅北口には、大規模なバスターミナルに加え、滋賀県お決まりの平和堂も堂々と軒を構えている。
【日牟禮八幡宮と八幡堀】
その北口駅前広場から、平和堂と滋賀銀行の間の通りを北方向に向かう。
八幡山(鶴翼山)の眺望が美しいこの通りを3キロほど北に進むと、、、
外国人紳士・ウィリアム・メレル・ヴォーリズの銅像に出会う。
氏は1905年(明治38年)にキリスト教の布教を担う英語教師としてこの近江八幡後に派遣され、その活動を支えるためにメンソレータム(現・メンターム)で有名な近江兄弟社を創業させた大実業家で、ここはその本社・創業地なのである。
そして、そのヴォーリズ像から少し東に進むと見えてくるのが、日牟禮(ひむれ)八幡宮の一の鳥居。
そして、その一の鳥居をくぐった先にある橋の上からは、、、
近江八幡に来たら絶対に外せない観光スポットである八幡堀の絶景が堪能できる。
この地に城を築いた豊臣秀次(秀吉の甥)が堀を転用した一大運河で、大津・堅田と並ぶ琵琶湖三大港の一つとして大いに賑わいを見せたらしい。
今では映画やドラマのロケに使われることも多い八幡堀だが、高度成長期には開発偏重で荒廃の一途をたどり、埋め立ての危機にまで瀕した。
それを地元が一丸となって回復運動を繰り広げ、現在のこの風情ある姿を取り戻すことが出来たらしい。
その八幡堀に架かる橋を渡った先から、一の鳥居方向を望む。
今では一大観光名所となったこの地だが、荒廃の極みの中を雑草やヘドロとの格闘によって蘇った、まさに観光地再生のシンボルとも言える存在である。
そして、上の写真の場所から八幡山方向に向かう。
ほどなく見える日牟禮八幡宮の神門を横目に見ながらさらに進むと、、、
八幡山(鶴翼山)の頂上に向かう八幡山ロープウェイの公園前駅が見える。
1962年(昭和37年)に開通した近江鉄道運営の索道線で、山頂にある八幡山城跡や瑞龍寺への観光客輸送を担っている。
そして、これが日牟禮八幡宮の拝殿。
平安時代に京都府八幡市の石清水八幡宮の神霊を勧請して創建したとされ、近江商人の氏神様として篤い信仰を受けている神社である。
また、この日牟禮八幡宮では、毎年3月に「左義長祭」と呼ばれる豪華絢爛な山車が魅力の壮大な祭りが執り行われ、数万人の人が詰めかけるらしい。
八幡山に城を築いた豊臣秀次は、秀吉に謀反の疑いをかけられ無念の最期を遂げ、お城も廃城となったが、八幡堀擁する城下町はその後も発展を続け、この日牟禮八幡宮も守護神として崇められ続けた。
【近江八幡の隠れパワースポット・願成就寺】
八幡堀擁する八幡山城の城下町は、近江八幡駅から3キロほど離れていることが奏功し、往時の街並みが綺麗に保存されているのが魅力となっている。
近江商人の大規模な商家が軒を連ねる新町通りは、滋賀県下で初の国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
その新町通りは京街道と交差しており、その京街道を奥にまっすぐ進むと、、、
「パワースポット」なるのぼりが目に付く、京街道門前通りに繋がる。
その京街道沿いも風情ある街並みが保存されており、、、
のぼりの場所から500mほど進むと、、、
長い階段の麓にたどり着き、その長い階段を登ると、、、
小高い丘の上にある願成就寺に到着する。
この願成就寺は、近江国内に48か所の寺院を建立する勅を受けた聖徳太子が、その最後の48番目に開基したお寺で、ついに願いが叶ったことから「願成就寺」と号されたらしい。
当寺のふもとにあった京街道門前通りでは、願いを書いて奉納版に貼り付けると願いが叶うと称する12種類の願成就絵札を販売し、地域活性化に取り組んでいる。
右手に願成就の本堂、そして左手に不動堂という何とも贅沢な並び。願いが叶う上に、何事にも動じない不動心も手に入れば、こんなに有難いことはない。
改札口・コンコース
1981年(昭和56年)に駅舎が改築され、橋上化された。下校時間帯に遭遇したのか、学生たちの集団と鉢あってしまった。
JR線の改札口は橋上コンコースの北側に1か所ある。
そして、隣接する近江鉄道線の乗り場は、その南側に位置している。
上の写真の場所からは、近江鉄道八日市線の走行風景を見ることが出来る。
ちょうど、親会社である元西武鉄道401系を改造した800系の八日市行きが発車する場面に遭遇することが出来た。
そして、反対側は、左手に近江鉄道、右手にJRの近江八幡駅の姿が一望できる。
当駅は開業当初は「近江」を冠しないただの「八幡駅」を名乗っていたが、開業から30年後の1919年(大正8年)に現駅名である近江八幡駅に改称された。
当時はまだ国鉄の駅であったため、福岡県にあった「八幡駅(やはた)」との同名回避が目的とのことだが、実は改名した当駅の方が13年先に開業している。
時刻表
琵琶湖線:草津・京都・大阪方面
当駅は快速系統の運行上の境界駅である野洲駅の2つ北にある関係で、日中は新快速・普通共に30分間隔の運行となっている。
そのため、普通電車も京都までは新快速に追い抜かれずに先行逃げ切り出来るダイヤとなっている。
琵琶湖線:米原・長浜・大垣方面
米原方面行きも同様に、日中は新快速・普通ともに30分間隔での運行となり、普通電車も終点の米原まで先着する。
新快速は米原から北陸本線に入り、長浜行きと湖西線との接続駅である近江塩津行きが毎時1本ずつ運行されている。
乗り場
【1番のりば】琵琶湖線:米原・長浜・大垣方面
当駅は1日約3万5千人弱が利用する、草津駅以東の複線区間では突出して利用客の多い駅となっている。
しかし、当駅から2つ先の野洲駅に車両基地があり、日中の半分近くが同駅止まりとなる関係で、新快速・普通ともに30分間隔の運行となっている。
阪急京都線・長岡天神駅や南海本線・堺駅を上回る利用客数を誇りながら、本数は両駅の3分の1に留まっている。
1番のりばに、223系の新快速米原方面長浜行きがやってきた。まもなくオープンする京都鉄道博物館のラッピングを身にまとっている。
次の1番のりばは、同じ223系の普通米原行き。琵琶湖線内の普通電車は、米原まで先着するダイヤとなっている。
当初は当駅付近に車両基地を設置し、ここを運行上の境界駅にする計画であった。
しかし、地元の反対によって頓挫し、南の野洲駅に変更されたことで、運行上の境界以遠に位置する当駅の本数が激減する結果となってしまったらしい。
【2・3番のりば】琵琶湖線:草津・京都・大阪方面
30分に1回だけやってくる貴重な新快速電車。ここから約80km離れた大阪までたったの1時間強で爆走する。
2・3番のりばは島式となっており、待避線である3番のりばのさらに南側は、かつて取扱のあった貨物廃線跡が残る楽しい展開が繰り広げられており、、、
ホーム西側に進むと、近江鉄道の駅も見られるというさらに楽しい展開が待っている。
この近江鉄道八日市線の駅は、国鉄八幡駅(現・近江八幡駅)から遅れること四半世紀の1913年(大正2年)に開業した駅で、当初は新八幡駅を名乗っていた。
そして、橋上化される前は、近江鉄道の改札は存在せず、国鉄と構内を共有する共同使用駅であったらしい。
そして、ホーム西側にもっと進むと、さらに楽しい展開が待っている。
何と、近江鉄道の駅から伸びる線路が、かつて繋がっていた形跡が残っており、、、
その先は何とJR線(国鉄)と繋がっているという、貴生川駅と同じような接続廃線跡の超萌え萌え光景が繰り広げられていた。
かつて国鉄と近江鉄道は線路が繋がっており、この線路で貨物の授受が行われていたらしい。
1番のりばと2番のりばの間にホームの無い線路があるが、これは上り米原方面の待避線で、貨物列車等の待避で使用されている。
2番のりばに、223系の普通姫路方面網干行きが到着した。琵琶湖線内は、普通電車も京都までは新快速に追い抜かれずに先着する。
単行で通過するEF64形にも遭遇した。
その後の2番乗り場には、223系新快速姫路行きがやってきた。
ホーム西端から篠原・大阪方面を望む。新快速は先行する普通を追いかけ、長岡京駅付近で追い抜きをかける。
えきログちゃんねる
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