「伊丹空港(大阪国際空港)」で全国にその名が知れ渡る兵庫県伊丹市のかつての代表駅であり、伊丹線の終着駅でもある、頭端式1面2線の高架駅。
輸送改善と駅前巨大イオンモールの出現により、代表駅の座をJR伊丹駅に譲り渡すものの、震災復興で建設された立派な駅ビルや市内最大のバスターミナルを擁する等、長らく伊丹の代表駅であった風格が十二分に体現されており、栄えある第1回近畿の駅百選に選定されている。
また、奈良市と「清酒発祥の地」の称号で激しいバトルを繰り広げるほど、古くからの酒造の街として栄え、その風情を残す町並みは一見の価値を有する、魅力的な周辺環境となっている。
外観・駅周辺
「伊丹空港(大阪空港)」で全国にその名が知れ渡っている兵庫県伊丹市。長らく同市の代表駅であった阪急伊丹駅の北口を望む。
その北口バスターミナルから発車する、白とダークグレーのツートンカラーが印象的な伊丹市営バス。
伊丹市営バスは、兵庫県内では神戸市以外で唯一、かつ国内でも数少ない一般市における市営バス運営自治体となっている。
そして、駅北側にはその伊丹市営バス最大のバスターミナルである「阪急伊丹停」が君臨している。
現在は輸送改善で利用客数が上回るJR伊丹駅発着が原則となったようだが、長らく伊丹市の中心であったことを示す風格は今だ健在である。
阪急伊丹停には、伊丹市営バスの他に阪急バスも乗り入れており、一部路線では競合関係となっているようだ。
北口ターミナルには、伊丹市営バスが3つ、阪急バスが2つの乗り場を有している。
今度は駅東側を望む。東口は伊丹市営バスのみが4つの乗り場を有しており、北口と合わせて全部で9つの乗り場を有する大バスターミナルとなっている。
上の写真の場所から南方向を望む。駅ビルの3階のあるホームから、阪急伊丹線の先頭部分がちょっとだけ顔をのぞかせる姿が何ともほほえましい。
【酒造で栄えた中心市街地・伊丹郷町と猪名野神社】
阪急伊丹駅からJR伊丹駅にかけての「伊丹郷町」と呼ばれる地域は、かつて存在した伊丹城時代に城下町として形成され、同城落城後は近衛家の所領となり、同家の保護の元、酒造の町として発展を遂げたらしい。
まずは、阪急伊丹駅東口から伸びる「阪急伊丹駅前ひがし商店街」に入る。
この下町風情が魅力的な商店街を抜けると、、、
「三軒寺前広場」に出る。
文字通り、手前(西)から法巌寺・正善寺・大蓮寺と3つの寺が並んでいることから名付けられた広場で、様々なイベントも開催される伊丹市民の憩いの場となっている。
その「三軒寺前広場」からまっすぐ東に進むと、大通りである産業道路に出る。
ここは伊丹の中心市街地の真ん中に当たるからか、当地にあるバス停は「伊丹中央」と称されている。
今度は上の写真の場所から、産業道路を北方向に望む。
現在は尼崎と池田を結ぶ産業道路となっているが、江戸時代には本町通りと呼ばれ、最盛期にはこの通り沿いに85軒もの酒蔵が立ち並んでいたらしい。
その「伊丹中央」から少し北に進んだところにある「みやのまえ文化の郷」では、旧岡田家住宅を中心とした古風な街並みが堪能できる。
旧岡田家住宅は現存する最古の酒蔵らしく、1992年(平成4年)に国の重要文化財にも指定されている。
その産業道路(本町通り)に西側が面する家具量販店・ニトリ。
その外観は伊丹郷町の景観に配慮されたものとなっており、入り口東側には、伊丹の酒造業が発展する江戸時代前期に築造されたと言われる大溝が再現されている。
そのニトリから東側も、江戸時代からの酒造の街の面影を彷彿とさせる美しい風情が魅力的な通りとなっている。
伊丹は「清酒発祥の地」と称されることもあるが、その称号を巡っては実は奈良市と激しいバトルを繰り広げているらしい。
そして、その先には阪急伊丹駅から東に約1キロの距離にある、カリヨン時計塔が美しいJR伊丹駅にたどり着く。
かつては単線非電化ローカル線のしがない駅だったが、度重なる輸送改善と駅前巨大イオンモールの出現で大変貌を遂げ、伊丹の代表駅の地位に上り詰めた。
今度は、先ほどの「三軒寺前広場」に戻ってそこから北に向かうと、伊丹豊中線との交差点北西端に特徴的な外観の「伊丹アイフォニックホール」が姿を表す。
地球音楽の発信地として、世界諸民族の音楽を幅広く紹介する講演や講座を行っているらしい。
そして、そのアイフォニックホールからさらに北には、猪名野神社参道が伸びているおり、同社門前町としての歴史を有する「宮ノ前商店会」が店群が軒を構えている。
その参道中央の東側には、猪名野神社の管理(別当)も務める真言宗御室派の仏教寺院・金剛院が存在する。
904年(延喜4年)に宇多法王の勅願によって開基した由緒ある寺で、その由緒にふさわしい立派な薬院門が存在感を醸し出している。
かつては広大な敷地を有していたが、信長による有岡城攻略時の戦禍に見舞われ、一度炎上した波乱の歴史を有する。
その後秀吉の命によって再興されたが、明治時代に本堂が再度炎上し、現在は旧・持仏堂を本堂としているらしい。
そして、先ほどの参道に戻ってその突き当たりまでやってくると、猪名野神社の立派な鳥居が姿を見せてくれる。
伊丹郷町の氏神であるこの猪名野神社は、金剛院と同じ904年(延喜4年)に創建された古い歴史を持り、アマテラス・ツキヨミと共に三貴神と称される「スサノオ」を祀る神社である。
当社は、古くは「野ノ宮」や「天王ノ宮」と言われていたが、1869年(明治2年)に神仏分離により仏教関係のものを金剛院に移し、「野ノ宮」から現社名に改称されたらしい。
拝殿には、奈良市とバトルを繰り広げている「清酒発祥の地」に関連する酒造業者の酒樽が寄進されているらしい。
改札口・コンコース
当駅は1995年(平成7年)に発生した阪神・淡路大震災で駅舎が倒壊してしまい、その後約4年をかけて復興した。
復興によって1998年(平成10年)に再建された駅ビルはReita(リータ)と名付けられ、阪急伊丹駅はその駅ビルの3階の入居する形となった。
駅ビル再建の間は、現在地から約400m南に離れた地上に、1面1線ホームを持つ仮駅が設置されていた。
その駅ビル3階の北端に位置する改札口。
倒壊前は改札階は2階、ホームは3階にある構造だったが、再建後は改札口とホームを同一フロアに設けるバリアフリーの発想を取り入れた。
その改札口のある駅ビル北端からは、さきほどの北口大バスターミナルの眺望が楽しめる。
当駅の開業は、神戸線開通と同時の1920年(大正9年)に伊丹線の終着駅として開業した。
実は、当初は神戸線は伊丹・門戸厄神を通るルートで計画されていたが、阪神間の速達輸送を企図する小林一三の意向により、現ルートへと変更されたらしい。
改札口と乗り場が同一階で直結したこのバリアフリー構造は高く評価され、阪急では梅田駅と並んで、栄えある第1回近畿の駅百選にも選ばれている。
そして、改札内コンコースの北端になぜか大量に存在するガチャガチャの自動販売機。
現在は「ガチャガチャコーナー」と標されているが、かつては「ガチャガチャの駅」と掲示されていたらしい。
時刻表
伊丹線:塚口方面
伊丹線は、本来神戸線のルートとなるはずだった伊丹の地と神戸線を結ぶための代替線として開通した。
全列車神戸線との接続駅である塚口止まりという、シンプル・イズ・ベストが体現されたダイヤとなっている。
乗り場
ホームは頭端式1面2線構造。コンコースとホームとは階段ではなく緩やかなスロープでの連絡となっており、バリアフリー対応が徹底されている。
倒壊前のホームは島式2面4線形態の中間駅構造の駅だった。
これは、かつて当駅から宝塚方面への延伸計画があり、優等列車運転時に緩急接続を行えるようにするためだったらしい。
伊丹線開通当初は塚口ー当駅間に中間駅は存在しなかったが、開通翌年の1921年(大正10年)に稲野駅が、そして約15年後の1935年(昭和10年)には新伊丹駅が開業し、現在の形となった。
伊丹線に使用されているのは往年の名車である3000系と3100系。1号線には、その3000系が留置されている。
そして、向かいの2号線に3000系のトップナンバー車3001形を擁する塚口行きがやってきた。
1964年(昭和39年)に登場し、実に半世紀以上に渡って活躍を続ける3000系。今でも全く色あせない魅力はまさに名車である。
その3000系同士の並び。
新型車両のワクワク感も楽しいが、長く大事に使い続けることによって出てくる味わいは、どんな新車でも出すことが出来ない魔性の魅力である。
今度の2号線塚口行きは、3000系の宝塚線仕様・3100系で登場。
当駅は全列車塚口行きにも関わらず、種別・行先も律儀に案内してくれる詳細型の接近放送が流れる。
当駅の利用客数は、1日約25000人。
かつては競合のJR伊丹駅を寄せ付けない独壇場を演じていたが、輸送改善で大変貌を受けた同駅に逆転を許している。
しかし、立派な駅ビルや市内最大のバスターミナル等を擁する当駅は、かつて伊丹の代表駅であった風格が残っている。
ホーム南端から、駅東口方向を望む。
宝塚方面への延伸計画だけでなく、実は大正末期から昭和初期にかけては、川西能勢口から能勢電妙見線を伊丹まで延伸させる計画も存在したらしい。
今度は上の写真の場所から東方向を望む。JR伊丹駅へ向かうバスはこの通りを通っていくようだ。
今度は反対の西方向には、六甲山系の美しい情景が垣間見える。
ホーム南端はご覧のような狭隘空間となっている。
そのホーム南端から、新伊丹・塚口方面を望む。
当初は単線で開通した伊丹線だが、輸送力増強のため不要不急線の資材供出が続出していた戦時中の1943年(昭和18年)に複線化を果たしており、かつての当線の位置づけの高さを示していた事実である。
えきログちゃんねる
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