兵庫県の南東端にあり、大阪市とも接する尼崎市の北の玄関口である、神戸線・伊丹線の2面3線の地上駅。
近江鉄道高宮駅と逆アングルの大胆な三角ホームが魅力的で、阪急線内で最も急な半径60mのカーブをしなりながら走行する伊丹線の驚愕必至の光景が堪能できる。
また、狭隘な尼崎の商店街に大胆に乗り入れる伊丹市営バスの驚きの光景や、40年の年季が入ったレトロ感が魅力の塚口さんさんタウン等、駅周辺も見どころ満載の魅力的な駅となっている。
目次
外観・駅周辺
【高級スーパー・いかり1号店擁する狭隘商店街が魅力の北口】
兵庫県の南東端にあり、大阪市とも接する尼崎市の北の玄関口である阪急塚口駅。その北口を望む。
駅北口は、この塚口中央商店街を初めとした活気あふれる商店街が形成されている。
そして、その塚口中央商店街の真ん中付近には、関西における高級スーパーの代名詞的存在である「いかりスーパーマーケット」の栄えある1号店が存在する。
今から半世紀以上前の1961年(昭和36年)に開店したこの1号店は、その経年にふさわしい年季が漂っている。
そして、このいかりスーパー前には、この狭隘な商店街上に何とバス停が存在する。
そして、この狭隘商店街のバス停に、何とこんな大型路線バスが乗り入れてくる。
伊丹市との市境に近いため、尼崎市内であるにも関わらず、伊丹市営バスの光景を見ることが出来る。
その伊丹市営バスの「塚口停」から、阪急塚口駅北口方向を望む。
白とダークグリーンのツートンカラーが印象的な伊丹市営バスは、兵庫県内では神戸市以外で唯一、かつ国内でも数少ない一般市における市営バス運営自治体となっている。
【レトロ感満載のさんさんタウンが魅力の南口】
商店街の密集空間であった北口とは打って変わって、南口は駅前ターミナルが整備されている。
実は、かつては南口も商店街が密集し、北口と同様の光景が展開されていたが、1978年(昭和53年)に大規模再開発が行われ、この巨大ロータリーと共に、それを取り囲むようにショッピングセンターも建設された。
このショッピングセンターは「塚口さんさんタウン」と呼ばれ、駅前広場を3つのビルで取り囲み、かつそれらをペデストリアンデッキで結ぶという当時としてはユニークな設計となっている。
尼崎の2番目の再開発事業として建設され、駅前再開発の先行モデル的な存在である。
その先駆け的存在は、開業から40年近くの経過により、レトロ感を醸し出してきており、阪急稲野駅近くの「つかしん」やJR伊丹駅前の巨大イオンモール等の出現に脅かされつつあるようだ。
阪急塚口駅から北東に600mほど進んだ住宅地内に唐突に姿を現したのが、この塚口城跡。
塚口城は、室町時代から戦国時代にかけて文献に登場する中世城郭で、塚口御坊と称された浄土真宗興正寺別院の寺内町として栄えたらしい。
現在は住宅地となっており、ほとんど遺構は残されていない。
その塚口城跡からさらに東に向かったところを南北に走る兵庫県道13号・通称産業道路を北方向に望む。
この産業道路は、JR・阪急伊丹駅の中間地点・伊丹中央を経由して、川西(JR川西池田駅・阪急川西能勢口駅)方面に向かう大幹線道路である。
今度は上の写真の場所から南方向を望む。このまま真っ直ぐ南に進むと、JR尼崎駅の北口に繋がっている。
そして、上の写真の右手(西側)にあるこの特徴的な形状の建造物は、通称・ピッコロシアターと呼ばれる兵庫県立尼崎青少年創造劇場。
塚口さんさんタウンと同じ1978年(昭和53年)に開設されたこの劇場は、音響家が選ぶ優良ホール100選にも選ばれているらしい。
そのピッコロシアターから東に200mほど進むと、JR宝塚線(福知山線)の塚口駅にたどり着ける。
駅周辺は落ち着いた雰囲気をしており、競合の阪急の駅を次々と攻略しているJR宝塚線の輸送改善だが、ことこの塚口に至っては、阪急の優位性は揺らいでいないようだ。
改札口・コンコース
活気あふれる塚口中央商店街に面する北口。
ちなみにこの「塚口」という地名は、付近に池田山古墳をはじめとする古墳群(塚)を抱えていることに由来するものらしい。
その北口改札を改札内より望む。北口改札は2・3号線ホームに直結しており、乗降が容易なコンパクトな造りとなっている。
40年の年季が入ったペデストリアンデッキのレトロ感が魅力的な駅南口。
駅舎が橋上化されていないため、南口改札は1階に存在し、2階ペデストリアンデッキとは直結していない。
ペデストリアンデッキとの直結は無いが、南口改札は西宮北口・神戸方面行きの1号線ホームと直結しており、改札を通ってしまえばスムーズな乗降が可能な設計となっている。
その南口改札から1号線ホーム方向を望む。
改札とホームが直結している構造は、同じ神戸線の難読特急停車駅である夙川駅と同じような絵柄となっている。
時刻表
神戸線:神戸三宮・新開地・大阪梅田方面
当駅は、阪急線内で10番目に利用客数の多い重要駅であるが、十三から3駅しか離れていないこともあり、特急は通過となる。
しかし、ラッシュ時に運行される優等は夕ラッシュ時に特急を除いて全て停車となっており、通勤時間帯の利便性は確保されている。
日中の普通は大阪方面行きは終点梅田まで先着、神戸方面行きは西宮北口で後続の特急の待ち合わせを行う。
伊丹線:伊丹方面
伊丹線も神戸線の普通同様10分間隔での運行となっているが、全列車伊丹行きという、シンプル・イズ・ベストが体現されたダイヤとなっている。
乗り場
ホームは神戸線の相対式ホームに、伊丹線の急カーブホームが併設された、独特な2面3線構造となっている。
【1号線】神戸線:神戸三宮・新開地方面
当駅は、神戸線開通と同時の1920年(大正9年)に開業した歴史ある駅である。
1号線ホーム西端から武庫之荘・神戸三宮方面を望む。当初から高速輸送を企図して建設された路線のため、極めて良好な線形をしている。
神戸線ホームの駅票。
実は、当初神戸線は当地ではなく、伊丹・門戸厄神を通るルートで計画されていたが、阪神間の速達輸送を企図する小林一三の意向により、現ルートへと変更されたらしい。
神戸線普通の主力として活躍する改造版5000系の普通同士(梅田行き・神戸三宮行き)が並んだ。
宝塚線開通当時は「箕面有馬電気軌道(箕有電車)」を名乗っていた現・阪急は、この神戸線敷設を契機として社名を「阪神急行電鉄」に変更している。
1号線ホーム西端付近からは、神戸線の相対式ホームしか望めないが、東側に行くにつれて、伊丹線のホームの姿を見せ、三角ホームの全貌が明らかになってくる。
2016年(平成28年)3月19日ダイヤ改正周知のヘッドマークを掲げた、これまた改造版5000系の普通神戸三宮行きが1号線に到着した。
日中の普通は、2つ先の西宮北口駅で、後続の特急新開地行きの待ち合わせを行う。
【2号線】神戸線:大阪梅田方面/【3号線】伊丹線:伊丹方面
梅田方面行きの2号線ホーム東端からは、斜めホームの伊丹線含めた3線全ての姿を一望することが出来る。
上の写真の場所から、園田・十三・梅田方面を望む。ここから線路は高架となり、JR宝塚線(福知山線)との立体交差が展開される。
3号線の伊丹線の線路も神戸線の梅田方面と繋がっているが、直通電車が運行されることはないようだ。
近江鉄道高宮駅とは逆アングルの大胆な三角ホームが魅力的な阪急塚口駅。
当初計画が変更され、神戸線の支線として敷設された伊丹線だが、開通同時の当駅は三角型ホームではなく、甲陽線との接続駅である夙川駅同様に、神戸線と垂直接続するホーム構造だったらしい。
現在のような三角ホームとなったのは1966年(昭和41年)のことである。
その3号線に往年の名車3100系の伊丹行きがやってきた。
伊丹線は、本来神戸線のルートとなるはずだった伊丹の地と神戸線を結ぶための代替線として開通した。
ホーム東端は2号線と3号線の電車が急接近していたが、ホーム中ほどに進むにつれて三角度合いが増してくる。
かつては夙川駅同様の垂直接続型の駅だったが、神戸線の線路とも繋がる現在の三角型ホームにしたのは、神戸線への乗り入れを企図していたのだろうか。
3号線の伊丹線ホームから2号線の神戸線の十三・梅田方面行きホームを望む。
日中の当駅は普通しか停まらないが、梅田までは普通で12分。競合のJR塚口駅からは、大阪駅まで普通で11分とほぼ互角の戦いとなっている。
しかし、当駅の利用客数は1日約6万人弱、対する競合のJR塚口駅は2万人弱と約3倍もの開きがあり、劣勢に立たされることが増えている阪急にしては大健闘となっている。
塚口の中心市街地の機能が、現在でも当駅周辺に集中していることによるものだろう。
2号線から発車する普通梅田行きは、またもや改造版5000系だ。
そして、3号線の急カーブホームには、3100系のトップナンバーを配した伊丹行きが停車中だ。
その3号線ホーム西端から、稲野・伊丹方面を望む。阪急線内では最も急な半径60mの急カーブが待ち受けている。
そのとんでもない急カーブを4両編成の電車が、歩くくらいのゆったりとした速度で出発していく。
そして、その急カーブが終わった地点からは、終点の伊丹駅まで複線が続く。
当初は単線で開通した伊丹線だが、輸送力増強のため不要不急線の資材供出が続出していた戦時中の1943年(昭和18年)に複線化を果たしており、かつての当線の位置づけの高さを示していた事実である。
えきログちゃんねる
[阪急塚口駅]往年の名車3000系伊丹行き入線風景201603
[阪急塚口駅]往年の名車3100系伊丹行き発車風景201603
[阪急塚口駅]2016.3.19ダイヤ改正HM付1000系特急新開地行き爆速通過風景201603
[阪急塚口駅]改造版5000系普通大阪梅田行き入線風景201603