JR2線・近鉄2線が集結する奈良県内有数のターミナル駅である、大和路線(関西本線)と和歌山線の3面5線の地上駅で、日中大阪方面からの普通電車が折り返す運行上の境界駅。
元々何もない農村地帯が歴史の偶然が重なって駅が設置され、「鉄道のまち」として「町」の駅ながらJRにおける奈良県内最多の利用客数を誇るターミナル駅へと大発展を遂げる。
駅南側の大留置線群と古き良き国鉄のターミナル駅の風情を残すホームは、再開発で大変貌を遂げた駅前とのギャップによって、そのレトロ感がより深みを増す魅力満載の駅となっている。
目次
外観・駅周辺
【近鉄王寺駅・新王寺駅方面の北口】
JR2線と近鉄2線が集結する「鉄道のまち」として発展してきた、奈良県の西の玄関口である王寺町。
その代表駅である王寺駅北口には、再開発によって2004年(平成16年)に開業した大複合施設「リーベル王寺」が堂々たるいで立ちで君臨している。
王寺駅橋上コンコースからは、高さ40mを誇るリーベル王寺東館の眺望が展開される。
寺院をイメージしたデザインの屋根が印象的なこの大型複合施設は、失礼ながら「町」の駅とは思えない風貌を呈している。
そのリーベル王寺東館のふもとにひっそりと存在するのは、近鉄田原本線(たわらもとせん)の新王寺駅。
この駅のレトロ感と、真横にそびえるリーベル王寺の洗練感とのギャップが、何ともいえない味わいを醸し出している。
今度は、リーベル王寺東館のペデストリアンデッキから、西館方向を望む。
近鉄新王寺駅に負けず劣らずのレトロ感を醸し出しているJR王寺駅のホーム屋根と、「町」の駅とは思えない駅前広場とのギャップが面白い。
そして、そのまま西館のふもとまで向かうと、、、
JR王寺駅の西出口に加え、その斜め向かいには何と近鉄生駒線の王寺駅が存在している。
新王寺駅とはたったの150mしか離れていないのに別駅舎という珍しい立地となっているが、それは生駒線と田原本線が元々別会社の路線だったことに起因している。
そして、リーベル王寺の東館と西館との間には、このような立派なバスターミナルが設けられている。
奈良県内をほぼ独占している近鉄グループの奈良交通が路線を張り巡らせているほか、何と東京方面への夜行高速バスも発着している。
そして、上の写真の場所から北西方向には、聖徳太子ゆかりの毘沙門天で、虎を守り神とするために阪神タイガースの選手が必勝祈願に訪れることでも有名な信貴山が一望できる。
現在は、西側の近鉄大阪線方面からのアクセスが一般的な信貴山へのルートだが、元々はこの王寺からのルートの方が先に開通した。
【雪丸ロードから達磨寺方面の南口】
一方の王寺駅南口は、大変貌を遂げた北口と比べるとやや落ち着いているが、ここも「町」の駅とは思えない都会的な景色が展開されている。
その王寺駅南口から達磨寺までの全長1kmの行程は、「雪丸ロード」と名付けられたウォーキングコースとなっており、、、
駅真南を流れる葛下川(かづけがわ)に出ると、駅前の都会的な雰囲気が一変した自然豊かな風景が楽しめる。
その葛下川沿いを東に進んだ、国道25号・国道168号と奈良県道36号とが合流する達磨橋南詰では、王寺町の公式ゆるキャラ「雪丸」が出迎えてくれる。
この「雪丸」は聖徳太子の愛犬だったと言われ、何と人間の言葉を話し、お経まで唱えたと伝えられている。
その達磨橋南詰から、国道168号を500mほど南下したところにある達磨寺。
13世紀前半に古墳の上に三重塔を建立して開基したのが始まりと考えられているらしい。
寺の開基は13世紀だが、その古墳に葬られている人物は7世紀の人物で、飢餓に瀕していたところを聖徳太子に遭遇し、食物と衣服を与えられたとされている。
残念ながらその人物は太子の援助むなしくそのまま還らぬ人となったが、数日後遺体が消えており、太子からもらった衣服がきちんとたたまれていたらしい。
奈良時代から平安時代にかけての聖徳太子信仰と相まって、そのただならぬ人物は実は達磨大師であるとされ、この2人の遭遇は「片岡山伝説(片岡山飢人説話)」として語り継がれている。
太子の愛犬であった雪丸も、この達磨寺に自らを葬るよう遺言を残したとされ、境内には雪丸像が残されている。
改札口・コンコース
改札口は2か所あり、中央改札口がある橋上駅舎は1978年(昭和53年)に完成した。
その橋上コンコースから東の法隆寺・畠田方向を望む。
左側に近鉄田原本線の新王寺駅が見え、ここから数百メートルはJR大和路線(関西本線)・和歌山線と近鉄田原本線の並走区間となる。
その橋上部分にある中央改札口を望む。
自らも認める「鉄道の町」として発展してきた王寺町の代表駅である当駅は、「町」の駅でありながら、奈良県内のJRの駅では最多の利用客数を誇る県内有数のターミナル駅となっている。
その中央改札口の向かい側には、LCD仕様のバス発車案内掲示板も設置されており、鉄道だけでなくバス路線の重要拠点ともなっている。
JR2線、近鉄2線が乗り入れる県内有数のターミナル駅を擁する王寺町は、「鉄道のまち」の地の利を活かして大阪へのベッドタウンとして発展。
全国の町村部で最小級の面積ながら、県内で唯一人口集中地区に設定されており、もはや「町」とは言えない立派な都市圏が形成されている。
その中央改札口から南方向に伸びるペデストリアンデッキは「久度大橋」と呼ばれ、さきほどの「雪丸ロード」の出発点はここにあたる。
歩行者の利便性向上のため、2001年(平成13年)に上屋根が設置された。
その久度大橋からは、駅南側に拡がる多数の電留線の様子が一望できる。
1907年(明治40年)に発足した王寺機関区を起源とする王寺鉄道部が設けられており、まさに「鉄道のまち」さながらの様相が展開されている。
その久度大橋南詰から、駅北口方向を望む。
リーベル王寺西館の左奥には、信貴山の様子も伺え、都会的雰囲気と自然とのマッチングが美しい情景が味わえる。
そして、中央改札に戻って、改札内コンコースから改札口方向を望む。
JRにおける奈良県の代表駅である当駅は、1890年(明治23年)に大和路線(関西本線)の前身である初代・大阪鉄道の奈良ー当駅開通に伴い開業された、奈良県最古の駅の一つである。
一方、こちらは1番のりばに直結している西口改札。この西口改札の醍醐味は、近鉄王寺駅との直角対峙の構図だ。
その西口改札からJR王寺駅ホーム方向を望む。直結している1番のりばのみならず、遠く向こうの電留線群の様子も伺える。
今度は1番のりばホームから西口改札と近鉄王寺駅方向を望む。
近鉄王寺駅は大阪鉄道(現JR)王寺駅開業から32年後の1922年(大正11年)に、信貴生駒電気鉄道によって開業され、近鉄の駅となったのは1964年(昭和39年)のことである。
時刻表
大和路線:奈良・加茂方面
当駅は大和路線の運行上の境界駅となっており、日中の大阪方面からの普通電車は当駅止まりとなる。
従って、当駅以東は大和路快速のみが15分間隔での運転となり、半分が奈良まで、残りが奈良から3つ先の加茂まで向かう。
大和路快速は当駅以遠は各駅に停車する。
大和路線:天王寺・JR難波・大阪環状線方面
一方、大和路線の大阪方面行きは日中での頻発しており、ラッシュ時は大阪のベッドタウンとして、もはや「町」の駅とは思えない本数が運行されている。
日中は、天王寺から大阪環状線に入る大和路快速と、JR難波行きの普通電車の毎時4本ずつに、和歌山線から乗り入れるJR難波行きの快速が2本加わる。
また朝時間帯には、久宝寺からおおさか東線を経由してJR東西線に乗り入れる直通快速も数本運行されている。
和歌山線:高田・五条方面/万葉まほろば線:桜井・奈良方面
当駅が公式の始発駅となっている和歌山線だが、日中は大和路線のJR難波駅始発の快速電車が、万葉まほろば線との接続駅である高田駅まで乗り入れる運用となっている。
また、朝夕時間帯には高田駅から万葉まほろば線を経由して奈良方面に向かう電車があるが、同駅から和歌山線方面に向かう電車は少なく、当駅ー高田駅間は、和歌山線というよりは、万葉まほろば線と一体運用される形態となっている。
乗り場
ホームは単式1面1線に島式2面4線が加わった、3面5線の構造となっている。
「鉄道のまち」として大発展を遂げた王寺町だが、実は計画当初はこの王寺の地に駅を設置する予定はなかったという驚きのトリビアが残されている。
【1番のりば】大和路線:奈良・加茂方面/和歌山線:高田方面
2番のりばホームから、1番のりば直結の西口改札を望む。
実は、当駅を開業させた初代・大阪鉄道は、当初は王寺ではなく現・奈良県橿原市にある今井を拠点に、大阪・奈良・伊賀・五条等に路線を敷設する計画だったらしい。
今度は1番のりばホームから、駅全景を眺める。
その後北側を通るルートに変更となったが、当時何もない農村地帯だった王寺ではなく、龍田神社で有名な斑鳩町龍田に駅が設置されることになったらしい。
上の写真の場所から、西の三郷・天王寺方面を望む。線路は大きく南にカーブしていく。
しかし、龍田への駅の設置は地元の大反対にあって頓挫したことで当地にお鉢が回るという、まさに偶然が重なった結果王寺駅は設置された。
1番のりばホーム西端からは、隣接する近鉄生駒線・王寺駅のホームの様子を伺うことが出来る。
その偶然によって、典型的な田舎の農村だったこの地が、奈良県有数のターミナル駅として大発展を遂げることとなったわけだから、まさに「事実は小説よりも奇なり」である。
近鉄生駒線・王寺駅と直結する西改札付近には、「信貴山方面」の案内が掲示されている。
生駒線の次の駅である信貴山下駅からは、1983年(昭和58年)まで信貴山に向かう東信貴鋼索線(東信貴ケーブル)が運行されていた。
現在では、大阪からの至便なルートである近鉄信貴線・西信貴鋼索線(西信貴ケーブル)からのルートが主流となっているが、元々はこちらの東側から向かうルートの方が先に開設されていた。
1番のりばと2番のりばの間には、2本の中線が設置されている。
橋上駅舎とリーベル王寺の真新しさとは裏腹のレトロ感満載のホームは、古き良き国鉄ターミナル駅の風情を醸し出している。
その古き良き国鉄の雰囲気に、鳩も自然に引き寄せられてくるのだろうか。
初代・大阪鉄道が開業した当駅は、本来の東海道である名阪短絡ルート敷設を目的とした旧・関西鉄道に1900年(明治33年)に合併された。
1番のりばからは、日中の和歌山線の電車も発着しており、JR難波始発の221系快速高田行きが、当駅から和歌山線に乗り入れている。
そして、次の1番のりばは、同じ221系の大和路快速奈良行き。当駅から先は各駅に停車するが、終点まで「大和路快速」のまま走る続ける。
【2・3番のりば】大和路線:天王寺・JR難波・大阪環状線方面
大阪方面行きの電車が発車する2・3番のりばホームは、当駅で最も忙しい乗り場となっている。
そのホーム中央付近には、これも古き良き時代の名残を感じさせてくれる「だるま軒」。
かつては当駅1番のりばホームで駅弁も販売していたらしいが、改良工事と共にその駅弁も姿を消してしまったらしい。
1900年(明治33年)に関西鉄道に譲渡された関西本線だが、その後1907年(明治40年)に国有化されている。
しかしその国有化劇はすんなりとはいかず、元々官設鉄道(国鉄)と泥沼の顧客獲得競争まで演じた関西鉄道は、嘆願書まで提出する激しい抵抗を見せたと伝えられている。
3番のりばには、当駅始発の201系普通JR難波行きが停車中。関東ではほぼ全滅した国電車だが、関西ではまだまだ現役の姿が堪能できる。
その普通電車が待ち合わせを行うのが、2番のりばにやってきた221系大和路快速大阪行き。
本当は天王寺から大阪環状線を一周して再度天王寺に戻ってくるが、混乱を避けるため、放送上は「大阪行き」と案内される。
その2番のりばホームから見えるリーベル王寺東館の雄姿。
歴史の偶然が重なってこの地に駅が設置されることが無ければ、「町」の駅前の建造物とは思えないこの巨像の出現もなかったことだろう。
和歌山線の高田駅始発の快速JR難波行きは、短い4両編成で、始発普通電車と同じ3番のりばから発車する。
大和路快速や普通電車と異なり、30分ヘッドでの運行なので、当駅での普通電車との接続は無い。
和歌山線は当駅ー高田ー和歌山間だが、当駅ー高田間は初代・大阪鉄道が、そして高田ー和歌山間は南和鉄道と紀和鉄道によって開通された路線である。
1890年(明治23年)12月に奈良ー当駅間が開通した初代・大阪鉄道だが、その約1年後の1892年(明治25年)2月に、先行開通していた湊町(現・JR難波)-柏原間と繋がり、湊町ー奈良間が全通した。
大和路線の主力系統である大和路快速。
天王寺まで18分、大阪までは35分でたどり着ける王寺駅は、完全に大阪のベッドタウンである。
JR民営化から早30年近く経ち、このような国鉄仕様の案内板が残る駅も、もはや少数派となってしまっているだろう。
2・3番のりばホーム西端から、三郷・天王寺方面を望む。
国鉄仕様の案内板に未改修のホーム。この年季こそが「鉄道のまち」である当駅の味わいをさらに深めていることは間違いない。
【4・5番のりば】和歌山線:高田・五条方面/万葉まほろば線:桜井・奈良方面
4・5番のりばの島式ホームは、駅南側に拡がる大留置線群に隣接しているが、、、
日中の和歌山線方面の電車は、全て大和路線から直通する快速高田行きのため、当該時間は閉鎖されている。
和歌山線の電車は、大和路線の電車の比べて有効長が短いため、ホーム長も短くなっている。
そして、上の写真の場所から反対方向に見える留置線群には、きのくに線で使用されている和歌山色の117系の姿を見ることが出来た。
かつて京阪神の新快速電車として一世を風靡した名車は、こんなところで余生を送っていた。
1890年(明治23年)12月に奈良ー当駅間を開通させた大阪鉄道は、その3か月後の1891年(明治24年)3月に高田駅まで延伸開業させた。
鉄道網形成の中心地となった王寺には、その後1918年(大正7年)には大和鉄道(現・近鉄田原本線)が、そして1922年(大正11年)には信貴生駒鉄道(現・近鉄生駒線)も開通し、「鉄道のまち」として大いなる発展を見せた。
その日中は使用されない4番のりばに、JR難波始発の221系当駅止まりの普通電車が入線してきた。
1日5万人を誇る当駅の利用客数は、県庁所在地駅である奈良駅を1万人以上も上回る、奈良県内のJRの駅では最多の利用客数を誇っている。
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