和歌山市の市街地北西部に位置する、南海本線・加太線・和歌山港線にJR紀勢線が乗り入れる3面6線の地上駅で、第4回近畿の駅百選認定駅。
和歌山市の代表駅として長らくその栄華を誇るも、利用客数の大幅減少からJR和歌山駅にその座を譲るという悲運の歴史を有する。
しかし、かつての栄華を彷彿とさせる壮大な駅舎は、和歌山の玄関口にふさわしい風格を保ち続けており、賑わいではJR和歌山駅に譲るも、頭端式と通過式ホームの混在に加え、車止めを介して向かう合うホーム等、駅構内は同駅を凌ぐ楽しさが味わえる。
その和歌山の玄関口のシンボル的存在である駅ビルは、駅周辺活性化事業に伴い、残念ながら数年後に解体撤去される予定となっている。
目次
外観・駅周辺
長らく和歌山市の代表駅であった風格を今も残す壮大な駅舎・南海和歌山ビル。
和歌山市駅は、全国で数十存在する「市駅」の中で最も古くから存在している。
その遠景。和歌山市の代表駅の座はJR和歌山駅に譲ったものの、開業は1903年(明治36年)とJR和歌山駅駅よりも20年以上長い歴史を有し、第4回近畿の駅百選にも選定されている。
その和歌山市駅の真正面に向かい合う、和歌山市駅前中央商栄会。近代的な駅ビルとは好対照なレトロな雰囲気が漂う。
和歌山市は、郊外化や大阪への交通網の整備に伴うストロー現象による人口減少が大きな課題となっており、市内有数の一等地であると思われる当駅周辺も、人の回帰に苦労しているようだ。
上の写真の場所からさらに南東方向に引くと、、、
和歌山市内の三大通りの一つである中央通りにつながる。その綺麗に整備された中央通りを北方向に望む。
日本100名城の一つ・史跡和歌山城
そして、その中央通りを南に進んだ西汀丁(にしみぎわちょう)交差点歩道橋から南東方向に開ける城郭の眺望。
これが、国の史跡に指定された、かつての徳川御三家の居城であった和歌山城だ。
その西汀丁交差点から、けやき大通りを東に進んだところにある公園前バス停付近が和歌山城への入り口だ。
中に入り、壮大な石垣の階段を上ると、、、
和歌山市街地が一望できる。
そこからさらに登ると天守にたどり着く。
和歌山城は1585年(天正13年)に羽柴(豊臣)秀吉の命を受けた羽柴秀長によって築城された。
和歌山はもともと「若山」と呼ばれていたが、古代からの名勝「和歌浦」にちなんで、秀吉が当城築城の際に「和歌山」に改められたらしい。
姫路城、松山城と並んで日本三大連立式平山城の一つに数えられる大規模なお城である。
そして、入り口の公園前バス停付近まで戻る。和歌山城周辺は、行政機関や商店等が集積する和歌山市の中心市街地だ。
綺麗に整備された、和歌山市のメインストリートである「けやき大通り」を東に進むと、、、
競合であるJR和歌山駅にたどり着く。和歌山市駅より20年遅れで当時の阪和電気鉄道によって、東和歌山駅として開業された。
和歌山市駅からは3キロほどの距離があり、かつては和歌山軌道線と呼ばれる路面電車が両駅間を結んでいた。
バスターミナル
バスターミナルは、駅の南西側に広がっており、、、
JR和歌山駅前と共に、南海グループの和歌山バスの重要拠点となっている。
改札口・コンコース
和歌山市の中心機能の役割を長年果たし、和歌山の玄関口としてシンボル的存在であるこの南海和歌山ビルだが、建替えが決まり、この壮大な駅ビルは解体撤去され、コンパクトな駅舎になるらしい。
その南海和歌山ビル2階に一か所ある改札口。
当駅にはJR紀勢線も乗り入れているのだが、完全に南海仕様の駅となっており、JRの痕跡は全く見られない。
和歌山市駅は、南海で最初に自動改札機が設置された駅である。
かつては1階に百貨店・高島屋が入居していたが、2014年(平成26年)に閉店。
今般の駅ビル建替えは、課題となっていた駅周辺再開発事業の一環として行われるもので、当ビル跡地には大型の市立図書館が入居するらしい。
予定通り進めば、あと5年で見納めとなる2階改札口を改札内より望む。南海名物パタパタ式の発車案内板がいい味を出している。
2番線にJR和歌山行きの発車案内も掲示されているが、JRのロゴ以外はすべて南海仕様だ。
改札内コンコース。
かつては1日5万人弱の利用客を誇る和歌山市の代表駅であったが、現在はその半分以下の1日2万人程度にまで落ち込み、JR和歌山駅に代表駅の座を譲る形となっている。
近年の利用状況の合わせたコンパクト化を企図していると思われるが、この橋上駅舎の哀愁感はなかなか一般受けしないということなのだろうか。
時刻表
南海本線:なんば・関西空港方面
当駅を起点とする南海本線は原則全列車なんば行きで、一部座席指定車の特急サザンが毎時2本、普通車が毎時4本の計毎時6本体制。
かつては特急2本、普通車2本まで激減した時期もあったが、急行系統の空港線シフトを受け、普通車の本数が増加している。
特急の10分後に発車する普通車は、泉佐野まで先着して関西空港からの空港急行と接続し、特急の7分前に発車する普通車は、尾崎で特急の待ち合わせを行う。
南海加太線:加太方面
和歌山市北西部へのローカル線であり、公式には隣の紀ノ川駅起点の加太線は、全列車当駅まで乗り入れを行っており、2両編成のワンマンカーが日中30分間隔で運行されている。
加太線は、1912年(明治45年)に加太軽便鉄道が開業させた路線を1942年(昭和17年)に南海が合併した路線である。
南海和歌山港線:和歌山港方面
和歌山港から出港する徳島行き南海フェリー「南海四国ライン」への連絡船である和歌山港線は、同フェリーの接続に特化したダイヤとなっている。
かつては沿線企業への通勤路線として朝夕に多くの運行本数が設定されていたが、2005年(平成17年)に途中駅が全廃された。
乗り場
橋上コンコースより北方向を望む。当駅は島式と頭端式が混在するホームとなっている。
【2番のりば】JR紀勢線:和歌山方面
JR和歌山へ向かう紀勢線は、駅南端の2番線から発車する。
JR線用の中間改札が設けられているが、標識はすべて南海仕様となっている。
2番線の先は行き止まりとなっている。左側の駅ビルとの間が駐車場となっているが、そこには今は無き1番線が存在していたらしい。
JR紀勢線の当駅ーJR和歌山間は、日中1時間に1本運行されている。
同区間は現在は紀勢線となっているが、その前身は和歌山線を開業させた紀和鉄道であった。
2番線にやってきた105系JR和歌山行きの2両編成ワンマンカー。
その紀和鉄道は和歌山(現・紀和)ー五条間を開業させたが、南海和歌山市駅開業に伴い南海連絡線を介した当駅への乗入れを行う様になった。
従って、当ホームを含む南海との分岐点までは南海の所有となっており、その名残からホームのすべての標識が南海仕様となっている。
当駅からJR線を利用する人は、1日約3000人程度となっている。
【3番のりば】南海加太線:加太方面
2番線のJR線の隣にある加太線ホーム。
こちらも2番線同様西側は行き止まりの頭端式ホームとなっている。
同じ島の向かいにある4番線は、さらに西側に伸びる長いホームとなっており、日中は特急サザンが発着する。
その3番線を頭端側より望む。
現在は紀ノ川駅を経由して当駅東側より乗り入れている加太線だが、1950年(昭和25年)までは西側から乗り入れていた。
3番線にやってきた2200系加太行きの2両編成ワンマンカー。
加太軽便鉄道が開業させ、100年以上の歴史を有する加太線は、当駅北側に「和歌山口駅」という別駅舎を有していた。
それが、1942年(昭和17年)の南海との合併により和歌山口駅が和歌山市駅と統合され、1950年(昭和25年)の現ルートへの切り替えにより、本格的に和歌山市駅構内への乗り入れを行うようになった。
加太線もモータリゼーションの波に逆らえず、利用客数は減少傾向をたどっているが、2014年(平成26年)より沿線の海産物を売り物に観光客を誘致するための「加太さかな線」プロジェクトが実施され、沿線活性化に努力がなされている。
4番線に停車中の8000系特急サザンなんば行きとの並び。
加太線は、工場への通勤路線だけでなく、磯ノ浦や加太への海水浴場への行楽路線にもなっている。
【4~6番のりば】南海本線:なんば・関西空港方面
4番線以降の線路は和歌山港線につながっているため、通過式ホームとなっている。
ホーム東側は頭端式ホームとなっている2・3番線が見えるが、、、
その2・3番線は途中で切れ、西側は4番線だけが伸びている。特急サザンプレミアム12000系が停車中。
一部列車は和歌山港駅まで向かい、当駅ーなんば間を最速57分で駆け抜ける。
特急サザンは、和歌山市寄りの4両が座席指定車となっており、なんば寄りの4両は4扉の自由席車となっている。
日中の急行が空港線シフトとなり、泉佐野ー当駅間は特急が唯一の通過系統となるため、和歌山大学前・尾崎・みさき公園とこまめに停車する。
2~4番線の一つ北側の島にある5・6番線からは、主になんば行きの普通車が15分間隔で発車している。
6番線ホームは東側に伸びている。左手奥に見えるのが、今後解体される南海和歌山ビルだ。
上の写真の場所から東方向、紀ノ川・紀和方面を望む。
ここからしばらくは南海とJRが並走し、JR紀勢線の和歌山方面は途中から右に折れていく。
3番線に加太線の2200系、5・6番線の南海線普通車の8000系が並んだ。
その8000系の横顔。南海本線は南海の基幹路線の一つだが、普通車は短い4両編成で運転されている。
6番線の北側は車庫になっており、留置されている列車群を眺めることが出来る。
その車庫を橋上コンコースより望む。右奥の車庫のある付近に、かつて加太線の和歌山口駅が存在したらしい。
そして、6番線が5番線よりも東にせり出していた理由が、ホームの西寄りに存在する。
何と、6番線ホームは途中で車止めが設置された行き止まりとなっているのだ。
【7番のりば】南海和歌山港線:和歌山港方面
その行き止まりの先が、実は和歌山港行きの列車が発車する7番線となっている。
7番線の北側の留置線に、急行の空港線シフトにより日中は見られなくなった「急行」なんば行きの姿が見られた。
7番線の向かい側はまだ5番線が続いている。和歌山港線へは4・5・7番線の線路がつながっていることになる。
和歌山港線の開通は1956年(昭和31年)と南海では比較的新しい路線で、徳島行きの南海四国航路への連絡が目的だった。
7番線の停車中の7100系の和歌山港行き。
かつては和歌山港駅から一つ先に水軒駅が存在し、当駅ー和歌山港駅間にも途中駅が存在したが、2005年(平成17年)に全廃され、南海フェリーに特化した連絡輸送のみを行う路線となった。
7番線と車止めを介して向かい合う南海本線の6番線。
賑わいではJR和歌山駅に譲るも、頭端式と通過式ホームの混在に加え、車止めを介して向かう合うホーム等、駅構内は同駅を凌ぐ楽しさが味わえる。
今度はその向かい合い状況を6番線ホーム側から望む。地方のターミナル駅の雰囲気が存分に発揮された実に味のある駅である。
7番線ホーム端から和歌山港方面を望む。4・5・7番線が単線になり、約3キロ離れた和歌山港駅まで続く。
えきログちゃんねる
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