旧・播磨造船所と栄枯盛衰を共にし、かつて日本有数の造船の街と名を馳せた相生(あいおい)の代表駅である、山陽本線と赤穂線の2面3線の地上駅。
当初「那波駅」として開業し、有年駅・上郡駅に比べて小さな駅だったが、戦後は赤穂線・山陽新幹線乗り入れにより、運行上の要衝としての地位を高めるに至る。
中心市街地から離れているため駅周辺は閑散としているが、1番のりば南側に残る赤穂線のレトロ感満載の旧頭端ホーム跡が、「造船の街」の盛衰感と相まって何とも言えない哀愁感を醸し出す魅力的な駅となっている。
外観・駅周辺
日本の全駅を50音順に並べたら、栄えある一番先頭に来ると言われる相生(あいおい)駅。その南口を望む。
この相生は、長らく播磨造船所(現・IHI)と共に発展してきた日本有数の「造船の街」であった。
当駅はその播磨造船所擁した中心市街地のある相生湾から2キロほど内陸に入ったところにあるため、駅周辺は閑散としている。
長らく造船の町として播磨造船所と共に発展してきた相生だが、1970年代からの造船不況によってその造船所が閉鎖されてしまった。
その駅南口から南の中心市街地のある相生湾方向を望む。かつては企業城下町として栄えた相生は、新たな発展を模索する時代へと入っている。
今度は新幹線ホームのある駅北口にある跨道橋から、国道2号を西方向に望む。
奥に見える山岳地帯を避けるべく、山陽本線は当駅から大きく北にカーブしていく。これは同線を開通させた旧・山陽鉄道の急こう配を避ける方針に基づいたものらしい。
今度は反対側の東方向を望む。相生は東西を山で挟まれた地峡となっているのがわかる。
別名ドラゴンボートとも呼ばれる競槽行事・ペーロンをPRする相生。
日本では長崎が発祥の地だが、長崎出身の播磨造船所(現・IHI)の社員が社内行事として紹介したのが相生におけるルーツだと言われているらしい。
急こう配を避ける方針からこの地に駅が設置された相生だが、その中心市街地と観光地は当駅から南に離れており、海まで向かえば様々な絶景が堪能できるようだ。
改札口・コンコース
山陽新幹線も乗り入れている当駅の開業は、1890年(明治23年)。山陽本線の前身である山陽鉄道の那波駅として開業した。
新幹線も乗り入れているため、改札外コンコースにはコンパクトであるが待合室も設置されている。
当駅周辺は、開業当時は旧・那波町にあり、1938年(昭和13年)に那波町が相生町に編入され、その4年後の当駅も相生駅に改称された。
当駅は、山陽本線と赤穂線が接続し、山陽新幹線も乗り入れるターミナル駅だが、1日の利用客数は約9000人ほどとなっている。
そして、改札口を入ってすぐ横にある新幹線乗り換え改札口。
姫路から20kmしか離れておらず、1日の利用客数が1万人に満たない当駅に新幹線が乗り入れているのは、大いなる謎である。
その改札内コンコースを少し引いてみる。
当駅に新幹線が乗り入れている理由は、地元選出の国会議員・河本敏夫氏の力によるものと評されることが多いが、実際は夢の夜行新幹線構想における単線運転上の待避駅として設置されたものらしい。
その改札内コンコースから東の竜野・姫路方面を望む。
急こう配とトンネルを避けるという旧・山陽鉄道の方針から、奥に見える山を避けるべく、線路は大きく左にカーブしていく。
今度は西方向の有年・西相生方向を望む。
山陽本線はここから奥の山を避けるべく進路を大きく右に変え、戦後敷設された赤穂線は、その山の中をトンネルで突っ込んでいく。
時刻表
山陽線:姫路・大阪方面
山陽本線東行きは、三ノ宮・大阪方面に直通する新快速電車と姫路行きの普通電車が、日中毎時1本ずつ運行されている。
しかし、2016年(平成28年)3月のダイヤ改正により、姫路駅以西への新快速の乗り入れが原則廃止となったため、現在は普通電車のみの運行となっている。
山陽線:上郡・岡山方面/赤穂線:播州赤穂・岡山方面
赤穂線は公式上は当駅始発となっているが、利用客数が山陽本線よりも多いこともあり、運行上は姫路方面からの電車は原則赤穂線に乗り入れている。
従って、山陽本線の上郡・岡山方面は当駅始発となり、当駅以東の山陽本線とは運行が分断されている。
赤穂線には、播州赤穂行きの新快速電車が乗り入れていたが、2016年(平成28年)3月のダイヤ改正によって原則廃止となり普通電車のみの運行となった。
乗り場
ホームは2面3線構造。在来線の地上ホームの北側に新幹線の高架ホームが併設されている。
当初「那波駅」として開業した相生駅。
当初は有年駅・上郡駅よりも小さな駅で、当駅から播磨造船所のあった相生港まで臨港鉄道を建設する動きもあったらしい。
ホーム橋から西方向を望む。右に折れる複線が山陽本線、左に折れる単線が赤穂線。
赤穂線は、山陽本線の短絡ルートとして、戦後の1951年(昭和26年)に開通した路線である。
日中はすべての電車が島式ホームの2・3番のりばから発車するため、単式の1番のりばは使用されない。
その日中は誰もいない1番のりばの西の方に向かうと、、、
何と、1番のりばの南側に、レトロ好きにはたまらない廃線と廃止された頭端ホーム跡がひっそりと存在するではないか。
その廃線の先は赤穂線の線路と繋がっており、かつて赤穂線の列車はこのホームから発着していたようだ。
開通当時の赤穂線は、山陽本線と直通せずに、その頭端ホームからの折り返し運転が主流だったのだろう。
山陽本線の起点である神戸駅から75.5kmの地点にあることを示すキロポストが、1番のりばホーム東寄りに設置されている。
かつては姫路方面からの列車は、山陽本線の有年・上郡方面に直通していたが、2005年(平成17年)のダイヤ改正以降、より利用客の多い赤穂線の播州赤穂方面への直通に切り替えられた。
取材当日は青春18きっぷのシーズンだったこともあってか、岡山方面からやってきた当駅止まりの電車から神戸・大阪方面に乗り継ぐ人たちでホームが混雑を見せていた。
この季節特有の「相生ダッシュ」なる光景も見られる。
赤穂線の電車は、両方向とも2番のりばから発着する。
つい先日乗り入れが廃止となった223系新快速敦賀行きの最後の雄姿が見られた(正確には朝晩には当駅乗り入れの新快速は残る模様)。
そして、反対方向の赤穂線に乗り入れる225系新快速播州赤穂行きも2番のりばから発車する。
同駅の利用客数は敦賀駅よりも多いが、当駅から赤穂線内は新快速唯一の単線閉塞区間でなり、遅延防止のために乗入れ廃止を決断したようだ。
そして、山陽本線の上郡・岡山方面は3番のりばから折り返し運転を行い、2番のりばから発着する赤穂線の列車と対面乗り換え出来るよう配慮されている。
写真は115系の上郡行き。当駅からたった2駅先までの運行だが、駅間距離が長いため、走行距離は14kmほどになる。
続いて折り返し岡山行き115系は「ふるさとおこし2号」ラッピング車でやってきた。
JR西日本岡山支社が展開する「吉備之国くまなく旅し隊」キャンペーンの一環として、そのイメージキャラクターである「くまなく・たびみゃん」をデザインしたかわいらしいラッピング車である。
3番のりば北側の新幹線ホームとの間には、かつて側線が存在した形跡を示す空間が残っている。
まもなく日中の乗り入れが廃止となる、新快速電車の発車案内も記録しておこう。
その新快速敦賀行きが、225系でやってきた。途中の姫路までは各駅に停車し、同駅から新快速名物の爆速運転が開始される。
ホーム東端から竜野・姫路方面を望む。
急勾配とトンネルを避けるため、山を迂回して大きく北にカーブする在来線と、それをものともせずにトンネルで真っ直ぐ突き切っていく新幹線とのコントラストが興味深い。
えきログちゃんねる
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