世界最大級の水族館・海遊館擁するウォーターフロント開発の一大拠点・天保山の最寄駅で、中央線初代終着駅でもある、島式1面2線の高架駅。
大阪地下鉄最初の高架区間として開業し、日本初の公営路面電車・大阪市電の創業路線も走行した深い歴史を有する駅である。
天保山擁する駅北側に注目が集まりがちだが、駅南側にも大阪港の鎮守・港住吉神社や旧・国鉄大阪臨港線の大阪港駅の廃線跡が偲ばれる築港赤レンガ倉庫等、見どころが詰まった駅となっている。
外観・駅周辺
【大観覧車・公営渡船擁する観光スポット・天保山方面の駅北側】
日本の五大港の一つ・大阪港で最初に開港した築港地区の中心・築港交差点に位置する大阪港駅。その駅北側から望む。
この築港交差点には、地下鉄中央線開通までの間、日本初の公営路面電車である大阪市電の創業路線・築港線の三条通四丁目電停を存在していたらしい。
その築港交差点から北方向の大通りは、旧・大阪市電築港線の廃線跡となっており、巨大なハイカラ観覧車とのギャップが魅力的なレトロな大通りを突き当りまで進むと、、、
旧・大阪市電築港線の天保山桟橋電停のあった天保山交差点に出る。
一時世界最大を誇った高さ112.5mに及ぶ天保山大観覧車擁する天保山桟橋は、かつては内航客船のターミナルとして栄華を誇ったが、現在はその地位を南港に譲り、船の出入りは少なくなっている。
船舶の往来が少なくなった代わりに、当地付近はウォータフロント開発の先駆けとして再開発され、現在では世界最大級の水族館である海遊館やレゴランド擁する大阪有数の観光スポット「天保山ハーバービレッジ」に生まれ変わった。
その天保山交差点に右手(東側)にある大阪市バスの天保山バスターミナルの右奥(北東)には、、、
安治川に架かる巨大な天保山大橋をバックにした天保山公園が姿を表す。
その公園の北東奥には、当地の由来となった天保山の山頂が見える。
この天保山は山と言えど、何と山頂の高さが標高たったの4.5mという日本で二番目に低い山であり、江戸時代の1831年(天保2年)に川底が浅くなって氾濫激しい安治川からさらった土砂を積み上げて出来た人口の山である(公園には「日本一低い山」と掲示されているが、2014年(平成26年)に標高3mの日和山(仙台市)が認定されたことにより低さ第二位となった)。
その天保山山頂には、明治天皇が日本初の艦艇式を行った行幸記念碑が建てられている。
この天保山は、実は1993年(平成5年)に一時地形図から抹消されてしまったが、3年がかりの地元の復活運動によって再度山として認定された逸話が残されている。
その天保山山頂の奥の天保山大橋の真下には、大阪市が運営する公営渡船である天保山渡船場が存在する。
この天保山渡船は、自動車専用道である天保山大橋を渡れない歩行者・自転車用の航路となっており、この天保山と対岸の桜島とを結んでいる。
この天保山渡船は日中30分間隔で運行されており、大阪有数の観光スポットである大観覧車擁する天保山と大阪が世界に誇るテーマパーク・USJに近い桜島を結んでいるため、観光客やUSJの外国人スタッフの乗船も見られ、1日約900人ほどの利用があるらしい。
天保山側の渡船場から対岸の桜島方向を望む。
ウォータフロント開発のメッカとして商業施設へと大変貌を遂げた天保山側と対照的な、大阪北港の工業地帯が拡がっている。
安治川を渡る船の上から、東側・天保山大橋の向こうに見えるUSJ方向を望む。
この天保山渡船は、初代桜島駅である天保山駅開業と同時の1905年(明治38年)に、大阪港の繁栄を企図した大阪市が港湾振興策の一環として始めたものらしい。
今度は船の上から西方向の天保山・咲洲方向を望む。
かつては天保山ー桜島ー築港大桟橋(現・中央突堤)を三角運航していたが、1926年(昭和元年)の現在の桜島ー天保山ルートとなったらしい。
江戸時代には景勝地として栄え、明治に入って湾岸警備の要衝となり、その後内航客船ターミナルの栄華を経て、現在は商業施設ひしめく観光スポットとなった天保山。
歴史の移り変わりと共に、その役目を変化させているが、大阪湾岸の要衝としての地位は、いつの時代も変わりがないようだ。
船はものの数分で安治川対岸の桜島に到着する。
当航路含め8か所ある大阪市公営渡船は、繁華街や観光地では見られない普段着の大阪に触れることの出来るスポットとして静かな人気を呼んでいるらしい(しかも無料で乗船可能)。
そして、その渡船場から徒歩10分弱で工業地帯のローカル線からUSJアクセス線へと大変貌を遂げたJRゆめ咲線(桜島線)の終着駅・桜島駅に到着する。
【旧国鉄大阪臨港線・大阪港駅の哀愁感漂う駅南側】
今度は大阪港駅のある築港交差点から南方向に進む。天保山のある北側とはまた違った住宅地の雰囲気に加え、、、
駅すぐ近くにありながら、まるでここだけ時が止まったかのような港商店街の何とも言えない哀愁感に浸ることが出来る。
その哀愁感満載の港商店街を南側に抜けた交差点の北西角には、築港高野山・釈迦院のお寺が見える。
今はかなり小規模な寺院となっているが、かつては「東の四天王寺・西の築港高野山」と呼ばれるほどの大寺院(約8000坪)であったようだ。
そして、その釈迦院から東に向かった海岸通の東側沿いには、大阪港の守護神である港住吉神社が鎮座されている。
参道が海岸通沿いの公園を突っ切る形となっている当社は、元々は江戸時代に天保山が出来た際に、海の神様・住吉大社の分霊を祀ったことを起源としているらしい。
その後、天保山には砲台建設のため当社は移転を強いられ、大正時代に現在のこの地に遷座されたらしい。
その港住吉神社から、海岸通りを南に下ると、レトロ感満載の築港赤レンガ倉庫の堂々たる姿が目に入る。
この築港赤レンガ倉庫は、1923年(大正12年)に住友倉庫によって建設され、実は倉庫の間と両脇には1986年(昭和61年)まで大阪臨港線なる貨物線が通っており、その西奥には同線の大阪港駅が存在していたらしい。
現在はクラシックカーの展示場として使われている赤レンガ倉庫から南の海側を望むと、日本最長のトラス橋と言われる港大橋の姿が見える。
そして、海岸沿いには、港区が生んだ大建築家・安藤忠雄氏設計の親水護岸が整備され、昔日の喧騒感激しい港湾の工業地帯から観光スポットへと変貌を遂げようとしている。
改札口・コンコース
大阪港駅6番出入口の歩道橋より、みなと通りを西方向に望む。
日本初の公営路面電車である大阪市電の創業路線・築港線は、ここからさらに西の現・中央突堤付近に存在した大阪港電停まで伸びていた。
今度は、上の写真の場所から反対の東方向を望む。
天保山を渡ってきた阪神高速5号湾岸線と、中央線と並走する16号大阪港線が交わる天保山ジャンクションが見える。
こちらは、築港交差点付近にある西改札口。
大阪有数の観光スポット・天保山ハーバービレッジに近い、当駅のメイン改札口となっている。
その改札内は、東改札に繋がる一直線の長いコンコースが伸びている。
乗り場
ホームは島式1面2線の構造。
当駅は、大阪地下鉄中央線(当時:4号線)開通と同時の1961年(昭和36年)に開業し、1997年(平成9年)まで約36年もの間終着駅の座にあった。
ホーム東端から朝潮橋・生駒方面を望む。
開通時の路線は当駅ー弁天町間であり、当時としては大阪地下鉄最初の高架区間であったらしい。
計画当初は当該区間も地下化する予定であったが、軟弱地盤で地下化することが難しかったため、高架構造となったらしい。
1番線に24系の生駒行きがやってきた。中央線の終点長田から、同線と一体運用されている近鉄けいはんな線に乗り入れる。
現在は6両編成での運行となっているが、開通当初は何と1両での運転で、完全6両化されたのは近鉄けいはんな線(当時:東大阪線)への乗り入れを開始した1986年(昭和61年)のことである。
今度の1番線は、近鉄7000系の学研奈良登美ヶ丘行き。日中は生駒行きと交互にそれぞれ15分間隔で運行されている。
けいはんな線は、激しくなった近鉄奈良線のバイパスとして建設された路線で、中央線と完全一体運用されている。
中央線の創業区間として開業した当駅ー弁天町間だが、地下鉄開通により並走する大阪市電築港線も廃止となり、大阪市電で最初に開通し、最初に廃止された路線となった。
当駅の利用客数は、1日約2万人。内航客船ターミナル機能が南港に移った現在は、観光スポット・天保山への利用客が中心となっている。
2番線に近鉄7000系のコスモスクエア行きがやってきた。
当駅ーコスモスクエア間が延伸開業したのは1997年(平成9年)。この延伸はテクノポート大阪計画に基づいて建設されたが、この周辺は当初商業誘致目的の開発地であったため、市の公共交通路線にはふさわしくないとのことで国の補助金が下りなかったことから、建設費削減のため三セク方式(OTS:大阪港トランスポートシステム)にしたという経緯がある。
ホーム西端からコスモスクエア方面を望む。
阿波座駅西側から続く高架区間はここで終わり、コスモスクエア駅のある人工島・咲洲(さきしま)へ繋がる大阪港咲洲トンネルに入る。
当初三セクで開業した当駅ーコスモスクエア間だったが、割増運賃が不評で利用が伸びずにOTSの赤字経営が続いたため、2005年に大阪市交へ線路以外のすべてを譲渡し、局が第二種事業者として路線を運営することで、地下鉄との運賃体系統一を図った結果、利用客増加に成功したらしい。
えきログちゃんねる
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