ケーブル線では非常に珍しい途中駅(中間駅)である、生駒鋼索線(生駒ケーブル山上線)の単式1面1線の地上駅。
生駒山中腹にある現世利益が叶う寺として有名な生駒聖天・宝山寺拝殿の最寄駅であり、実は公式の最寄駅となっている宝山寺駅よりも近いというトリビアを有する。
生駒山中にある秘境感満載の駅であり、途中駅であることのみならず、これもケーブル線は超珍しいスリリング感満載の踏切が存在し、屋根無しホームから望む奈良盆地の大絶景も堪能できる、まさに魅力満載の秘境駅となっている。
目次
外観・駅周辺
【経営危機に瀕した近鉄を救った現世利益の祈願寺・生駒聖天宝山寺への近道】
ケーブル線にしては珍しい途中駅である梅屋敷駅。ケーブル線の駅だけに、かなり急な上り坂の途中に駅が存在している。
この駅は、現世利益が叶う寺として有名な生駒聖天・宝山寺の公式の最寄駅である宝山寺駅の一駅北に位置する駅だが、実は当寺院へはこの駅からの方が近いというトリビアがある。
駅前の案内板に従って、急な下り坂を線路に沿って下っていく。近道とは言えどもきちんと整備された参道ではないため、足場には注意を要する。
しばらく線路と並行して下っていくと、ケーブル線はトンネルの中に消えていくが、、、
宝山寺へは、下った先を左に折れてトンネルの上を横切って道なりに進んでいくと、、、
何と、拝殿への入り口である中門の手前に出てくる。
宝山寺公式の最寄駅である宝山寺駅からは、心臓破り級の急激な上り坂を上る必要があるが、梅屋敷駅からは下り坂でしかも距離が短いのである。
別名・生駒聖天と呼ばれている真言律宗の大本山・宝山寺は、江戸時代の1678年(延宝6年)に湛海律師によって開山された比較的新しい寺院である。
655年(斉明天皇元年)に呪術師で山伏の元祖と言われる役行者(えんのぎょうじゃ)によって、修行道場が開かれたとされており、あの弘法大師・空海もこの地で修業を行ったという言い伝えがあるらしい。
その当時は都史陀山・大聖無動寺(としださん・だいしょうむどうじ)という名であったらしいが、江戸時代になって湛海律師によって再興され、宝山寺に改められた。
湛海律師は、歓喜天(聖天)を山の鎮守と仰いで修行に励んだが、彼の名は広く下界に知れ渡り、時の天皇・将軍から「求子の祈祷」や「世継ぎの安泰祈祷」が相次ぎ、師はその期待に応えたらしい。
そのご加護を得ようと、住友家をはじめとする商売関係者や庶民等、現世利益を求める人の参拝で賑わい、「生駒の聖天さん」として崇められるようになったと言う。
そのためか、荘厳な中にもどこかしら豪華絢爛な雰囲気の漂う寺院となっている。
【「観光生駒」称するディープ感満載の生駒新地(宝山寺新地)】
そして、その豪華絢爛な拝殿を後にして、今度は正式な参拝ルートである表参道に架かる一の鳥居方向に向かう。
宝山寺は、寺院なのに鳥居が存在する神仏習合の様式となっている。
その一の鳥居手前から、宝山寺新地のある聖天通り方向を望む。
一の鳥居は、かつては近鉄生駒駅に隣接するケーブル線の鳥居前駅付近に存在したが、生駒駅再開発に伴い1982年(昭和57年)にこの地に移設されたらしい。
そして、宝山寺の境内を抜けると、視界が開ける石段が続いているが、これが宝山寺の表参道である聖天通りである。
この聖天通りは、一見普通の旅館街となっているが、これらはただの旅館ではないらしい。
その聖天通りの終点にある「観光生駒」称するレトロ感満載のアーチが見える。
「生駒観光」ではなく「観光生駒」と称しているのは非常に謎だが、実はこの聖天通り一帯は、宝山寺新地(生駒新地)と呼ばれる旧遊郭街であり、実は現在でも当時と変わらない営業を行っているらしい。
この何とも言えない哀愁漂う超レトロ感が魅力の宝山寺新地(生駒新地)。
今では大阪のベッドタウン生駒における隠れたディープスポットとなっているが、元々生駒は宝山寺の門前町として発展してきた歴史のある街なのだ。
そのレトロ感満載の「観光生駒」アーチをくぐって左に進むと、宝山寺公式の最寄駅である宝山寺駅にたどり着く。
この宝山寺駅は、日本最初のケーブル線の駅として、1918年(大正7年)に近鉄の前身・大阪電気軌道の系列会社である生駒鋼索鉄道によって開業された歴史ある駅で、梅屋敷駅を通る山上線と宝山寺ー鳥居前(生駒)間を結ぶ宝山寺線との接続駅となっている。
時刻表
生駒ケーブル山上線:生駒山上・宝山寺方面
生駒ケーブルは鳥居前ー生駒山上間の路線だが、運行上は鳥居前ー宝山寺間の宝山寺線と、同駅ー生駒山上間の山上線に物理的に分断されている。
当駅属する山上線は、生駒山上遊園地へのアクセス線であるため、同園開園時間に合わせた運行体系となっており、日中40分間隔で運行されている。
種別に「普通」とあるのは、山上線がケーブル線には珍しく途中駅を2駅有する路線であり、臨時の際は生駒山上までノンストップの直行便が運行されることもあるためらしい。
乗り場
ホームは単式1面1線の構造。
この駅には何と驚くべきことに、ケーブル線の駅にしては超珍しい踏切(遮断機の無い第3種踏切)が存在することである。
この踏切を駅の向こう側に抜けると、宝山寺奥の院への参道に繋がっているが、急斜面になっていることもあり、渡るのは思った以上にスリリングである。
自分も渡ってみたが、年のせいか案の定滑ってしまい、ケーブルをつかんで落下は免れたが、手が油で真っ黒になってしまった。
ホーム端から宝山寺方向を望む。
そのスリリングな踏切を渡った先には、「生駒聖天さん近道」と書かれた看板が掲げられているが、あまりにレトロな状態となり、もはや文字の判別がかなり困難になっている。
途中駅があり、通過運転を行う優等も存在するという、ケーブル線では珍しモノづくしの生駒ケーブル山上線。
生駒山上への直行便は当駅は通過となるが、直行便は臨時期のみの運転で普段は当駅にも停車する各駅停車が運行されている。
そして、踏切に並ぶ当駅のハイライトとなるのが、このホームから見下ろす奈良盆地の絶景である。
晴天の日のホームからの大絶景は言葉を失るほどの美しさがあるが、その大絶景を陰で演出しているのがこの屋根のないホーム。
当駅は、山上線開通と同時の1929年(昭和4年)に開業した駅で、長らくホーム屋根が存在する駅であったが、2010年(平成22年)に撤去されている。
老朽化が原因なのかはよくわからないが、そのおかげでこの大絶景が堪能できるようになった。
宝山寺駅よりも宝山寺に近い梅屋敷駅だが、山麓の鳥居前駅からは宝山寺駅で一旦乗り換えを要することに加え、山上線の運行本数が宝山寺線の半分であることもあり、利用客がごくわずかとなっているらしい。
今度はホーム北端から、生駒山上方面を望む。
スリリングな踏切に、屋根のないホームからの大絶景、そしてほとんど無い利用客は、秘境駅の要件を十二分に満たす魅力にあふれている。
そして、その駅の秘境感に似つかわしくないポップな外観のケーブルカーがやってきた。
山上線では2000年(平成12年)に車両がリニューアルされており、これはバースデーケーキを模した「スイート」号である。
通勤通学路線の意味合いを持つ宝山寺線と違い、生駒山上遊園地へのアクセス線である典型的な行楽路線である山上線は、終戦間際に不要不急線として運行休止となった歴史を持っている。
今度は、誕生日会を模した「ドレミ号」をスリリング感満載の踏切を渡った先から決死の(?)の撮影を試みる。
その「ドレミ号」が宝山寺駅に向かって下っていった。山麓の鳥居前駅(生駒駅)に向かうためには宝山寺駅で乗り換えが必要となる。
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[ケーブル線なのに踏切・近鉄生駒ケーブル]山上線宝山寺行き発車風景@見晴し抜群梅屋敷駅201604