「鉄道のまち」として大発展を遂げた奈良県有数のターミナル駅であるJR王寺駅西口に直結する、生駒線の頭端式1面2線の地上駅。
信貴山への参詣客輸送を目論んで信貴生駒電気鉄道(のちに信貴生駒電鉄)によって建設された路線で、何と京阪交野線の建設母体であったという驚きのトリビアも残されている。
元々は別会社であった田原本線・新王寺駅とは150mしか離れていないという珍しい立地にあり、JR王寺駅に沿って近鉄の駅同士を徒歩連絡するという、当地ならではの光景が味わえる駅となっている。
外観・駅周辺
JR王寺駅西出口と直角対峙している近鉄生駒線・王寺駅。
その駅前広場からJR王寺駅沿いに東に向かうと、、、
この王寺駅北側のエリアは、2004年(平成16年)に開業した大複合施設「リーベル王寺」が整備され、近鉄王寺駅はその西館ふもとにあたる。
そして、そのまま真っ直ぐ150mほど進んだ「リーベル王寺」東館のふもとには、、、
何と、もう一つ近鉄の駅が現れるのだが、こちらは駅舎も駅名も異なる田原本線(たわらもとせん)の新王寺駅。
王寺駅とはたったの150mしか離れていないのに別駅舎という珍しい立地となっているが、それは生駒線と田原本線が元々別会社の路線だったことに起因している。
今度は、リーベル王寺東館のペデストリアンデッキから、西館方向を望む。
レトロ感満載のJR王寺駅のホーム屋根と、「町」の駅とは思えない駅前広場とのギャップが面白い。
そして、リーベル王寺の東館と西館との間には、このような立派なバスターミナルが設けられている。
奈良県内をほぼ独占している近鉄グループの奈良交通が路線を張り巡らせているほか、何と東京方面への夜行高速バスも発着している。
高さ40mを誇るリーベル王寺東館。
JR2線と近鉄2線が集結する「鉄道のまち」として発展してきた、奈良県の西の玄関口である王寺町のシンボルとして、堂々たるいで立ちを見せている。
そして、上の写真の場所から北西方向には、聖徳太子ゆかりの毘沙門天で、虎を守り神とするために阪神タイガースの選手が必勝祈願に訪れることでも有名な信貴山が一望できる。
現在は、西側の近鉄大阪線方面からのアクセスが一般的な信貴山へのルートだが、元々はこの王寺からのルートの方が先に開通した。
改札口・コンコース
改札口は、JR王寺駅西口に直結する駅前広場側に1か所。
当駅は、JR(当時:大阪鉄道)王寺駅開業から約30年後の1922年(大正11年)に、生駒線の前身・信貴生駒電気鉄道によって開業された駅である。
ホームから改札口方向を望む。JRとの乗換が非常に容易なシンプルな設計となっている。
ちなみに、150m東にある田原本線の新王寺駅は、当駅より4年早い1918年(大正7年)に、大和鉄道という別会社によって開業されている。
時刻表
生駒線:生駒方面
生駒線は原則当駅ー生駒間の全線通し運行が基本となっており、4両編成のワンマンカーがほぼ毎時4本運行されている。
生駒側は朝ラッシュ時に区間運転も行われているが、王寺側は終日に渡ってラッシュの概念のないダイヤとなっている。
乗り場
ホームは頭端式1面2線の構造。
生駒線を開通させた信貴生駒電気鉄道は、その名の通り国鉄関西本線(現・JR大和路線)と大阪電気軌道(現・近鉄)奈良線沿線から、信貴山への参詣客を運ぶ目的で創立された会社である。
その信貴生駒電気鉄道は、1922年(大正11年)に当駅ー山下(現・信貴山下)間の鉄道線と、山下ー信貴山間の鋼索線(旧・東信貴ケーブル)を開通させた。
ホームからは、隣接するJR王寺駅の様子を伺うことが出来る。
しかし、信貴生駒電気鉄道は程なく経営難に陥り、1925年(大正14年)に当時三重の電力会社であった三重合同電気傘下で信貴生駒電鉄として再出発を果たすこととなった。
JR王寺駅南側に広がる大電留線群の様子も、ホーム上から望むことが出来る。その信貴生駒電鉄は、生駒線の生駒ー王寺間を1926年(昭和元年)に全通させた。
元々は別会社であった現近鉄田原本線を敷設した大和鉄道も、1961年(昭和36年)に信貴生駒電鉄に合併された。
元々別会社の駅であった生駒線王寺駅と田原本線の新王寺駅。
1961年(昭和36年)に信貴生駒電鉄に統合されたが、その3年後の1964年(昭和39年)に近鉄の吸収合併され、現在の姿となった。
現在の生駒線の運用は、1021系の4両編成ワンマンカーが就いている。
生駒線の前身であった信貴生駒電鉄だが、実は現・京阪交野線を敷設した鉄道事業者でもあったという、驚きのトリビアも残されている。
交野線は、実は京都方面からの信貴山への参詣客を目論んで敷設された路線で、私市ー生駒間が建設されることはなかったが、私市駅が終着駅にも関わらず中間駅の構造となっているのは、その延伸計画の名残である。
当駅の利用客数は、1日約1万人。生駒線は現在では大阪・奈良方面への通勤路線となっているが、生駒市南端の東山駅まではローカル色満載の単線が続く。
えきログちゃんねる
[近鉄生駒線車内放送]生駒行き(王寺⇒信貴山下)201603
生駒線の前身・信貴生駒電鉄が最初に開業させた区間の車内放送です。信貴山下駅にはかつてケーブルカーの駅が存在しましたが、今はバス連絡となっています。
[近鉄生駒線車内放送]王寺行き(信貴山下⇒王寺)201603
終点の王寺駅では、150m離れた田原本線の新王寺駅と乗り換え可能であるためか、王寺駅は「終点」とは案内されないのが特徴です。