大阪線開業当初からあり100年以上の歴史を有する、近鉄の大阪方のターミナル駅であり、第3回近畿の駅百選認定駅。
阪急梅田駅・南海なんば駅に次ぐ日本第三位7面6線の頭端式ホームを有する地上駅に加え、1970年の難波線開業に伴い建設された相対式2面2線の地下駅を併せ持つという、全国でも珍しい構造となっている。地下連絡通路を介して、大阪地下鉄谷町線・千日前線との乗り換えが可能(谷町九丁目駅)。
日本最初の駅ビルを有し、特急のぞく大阪線の大半の列車は当駅を始発とする等、ターミナル機能は維持されているものの、難波線開業により、利用客はなんば方面に流れ、栄枯盛衰の姿を肌で感じ取ることが出来る。
目次
外観
上本町六丁目交差点南東側に聳える近鉄百貨店上本町店。
建て替えはされているものの、これが1926年に建てられた日本最初の駅ビルだ。
同交差点から上町筋の南方向を望む。
今度は千日前通の西方向を望む。上町筋も千日前通も余裕をもった作りとなっており、梅田・なんば・天王寺と比べると落ち着いた雰囲気になっている。
バスターミナル
バスは近鉄と大阪市バスが路線を走らせている。これは近鉄百貨店ビル一階「近鉄上本町」停から発車するあべの・上本町循環バス。
あべのハルカスまで連絡する100円バスで2013年6月より運行されている。
大阪市バスは上本町六丁目交差点を中心にバス停が合計7か所に点在し、うち4つは「上本町六丁目(上六)」停を名乗り、残りは「上本町六丁目南(上六南)」「上本町六丁目東(上六東)」「上本町七丁目北(上七北)」という、「プチややこしや状態」となっている。
このうち、近鉄上本町駅に最も近いのがこの「上本町六丁目南」停。上本町六丁目交差点の南東側近鉄百貨店前の上町筋沿いにある。写真は62系統住吉車庫行き。
コンコース・改札口
上本町六丁目交差点南東側から駅ビルに入ると、南北を貫く天井の高い綺麗なコンコースが出迎えてくれる。
右側が近鉄百貨店上本町店。
上の写真をさらに進むと、左側に地上改札口が見える。
今度は南側からこのコンコースを望む。適度な人通りで落ち着いた雰囲気を維持している。
南側に出ると、近鉄百貨店が専門店を誘致して運営管理する複合商業施設「上本町YUFURA」に出る。
2010年8月にオープンし、難波から移設した二代目新歌舞伎座が6階にある。
初代は「歌舞伎を上演しない新歌舞伎座」として有名だったらしいが、2代目はそれなりに歌舞伎も上演しているようだ。
地上改札口に接近。日本第三位、大阪線の7面6線の大頭端ターミナルが見える。
近鉄はここから南に3km下ったところにも、あべのハルカスを備える、近鉄最多の乗降客数を誇る6面5線の頭端ホームのある大阪阿部野橋駅を持つ。
上本町駅と阿部野橋駅は近いせいか、同じ会社の駅だからかはわからないが、雰囲気が似ている。
この地上改札口を改札内から撮影。高い天井、正面にそびえる近鉄百貨店。近鉄のターミナル駅の雰囲気が存分に味わえる。
地下鉄谷町九丁目駅との連絡通路のある地下2階の地下中央改札口。立派な作りの地上改札口よりも、もしかしたらこっちの方が人通りが多いかもしれない。
同改札を入った地下2階のコンコース。
地下にある奈良線・難波線と地上の大阪線との乗り換えにも利用されるが、両線の乗り換えは対面乗り換えが可能な鶴橋駅の方が便利ということもあり、構内の広さの割に人通りが少ない。
時刻表
奈良線:生駒・大和西大寺・奈良方面
奈良線は総工程は30キロ程度の短い路線だが、大阪・奈良間の最短ルートを通るため、近鉄の基幹路線となっており本数も多い。
平日日中は、1時間あたり
阪神なんば線から直通する快速急行奈良行き:3本
大阪難波始発の急行奈良行き:3本
阪神なんば線から直通し東花園から各駅に止まる準急:3本(大和西大寺行きor奈良行き)
普通:6本(阪神線から直通する東花園行き:3本・大阪難波始発の奈良or大和西大寺行き:3本)
の計15本の高頻度体制となっている。夕ラッシュ時でも本数が増えないのが特徴的だが、多両編成化で対応していると思われる。
大阪線:八尾・大和八木・名張・五十鈴川方面
大阪から橿原神宮への短絡を目的に建設された大阪線は全長100キロを超える大手私鉄では最長路線だが、沿線人口が相対的に少ないため、本数も少ない。
平日日中は、1時間あたり
伊勢方面に向かう急行:3本(うち伊勢神宮の最寄り駅五十鈴川行き:1本、青山町止まり:2本)
榛原・名張行きの区間準急:3本(八尾以遠各駅停車・ラッシュ時は河内国分まで速達の準急に)
高安・河内国分行きの普通:5本の計11本/時体制となっており、これに名古屋・伊勢志摩方面の特急が毎時3本程度加わる。
高安は上本町から10キロ程度、河内国分は18キロ程度しか離れておらず、普通はそこより先にはいかない。
夕ラッシュ時は、急行を布施から五位堂まで止まらない快速急行化させて毎時1本増発、区間準急を河内国分まで速達の準急にして毎時1本増発、そして昼間時間帯はほとんど高安止まりの普通を河内国分まで延長運転させることで対応している。
近鉄特急:名古屋・伊勢志摩・奈良方面
有料の近鉄特急は毎時4本程度。
立派な頭端式ホームがあるにも関わらず、大半は大阪難波始発のため、地下の奈良線1番のりばから発車する。
夜は名古屋・伊勢志摩方面が松阪止まりとなり、着席サービス目的の奈良行きが夕ラッシュ時に増発される。
乗り場
地上1階・7面6線の頭端式ホームと地下3階・2面2線の相対式ホームの二重構造。
郊外へのターミナル駅であり、市内の地下鉄の駅という遠近両方の性格を併せ持つ全国でも珍しい様相を呈する駅となっている。
【1番のりば(地下)】奈良線:生駒・大和西大寺・奈良方面/近鉄特急:名古屋・伊勢志摩・奈良方面
地下3階のある奈良線・難波線の地下ホーム。手前1番のりばからは奈良線の電車と大半の近鉄特急が発車する。
ホーム中央に柱がない構造となっているので、見晴しが良い。
1番のりばは、1時間当たり奈良線の通勤電車を15本に加え、大阪難波始発の近鉄特急を3本の計18本をさばかないといけないので、ホーム幅が広くとられている。
この1番のりばは、地上の立派な頭端ホームを差し置いて、大阪上本町駅で最も忙しいのりばとなっている。
その1番のりばにやってきた、阪神なんば線から直通の阪神9000系快速急行奈良行き。
阪神車が18m、近鉄車が21mという規格の違う車両が相互乗り入れするという珍しい事象が起きている。
2番のりばは5800系の各駅停車尼崎行き。大阪難波から阪神なんば線に乗り入れる。各駅停車なのにクロスシートだ。
【2番のりば(地下)】難波線:大阪難波・阪神線方面(尼崎・神戸三宮)
1番のりばから望む2番のりば。こちらも1番のりば同様ホーム幅が広くとられている。
2番のりば中央付近からは近鉄百貨店に直結する近鉄百貨店改札口につながる。
1番のりばに阪神1000系が各駅停車東花園行きとしてやってきた。阪神本線では「赤胴車」と呼ばれる急行車扱いだが、阪神なんば線と近鉄線内では各駅停車としても運用される。2007年営業開始で登場から10年満たない。
対する2番乗り場は、12200系の新スナックカー特急大阪難波行き。こちらは現役40年超の大ベテランだ。
【3~9番のりば(地上)】大阪線:八尾・大和八木・五十鈴川方面/近鉄特急:伊勢志摩方面
地上の大阪線ホームから地下の奈良線・難波線につながる連絡階段。この階段を下から登ってくると、、、
阪急梅田駅、南海なんば駅に次ぐ、地上の7面6線の日本第三位の頭端ターミナルが現れる。
ホーム地上改札口付近にある発車案内掲示板。これは地上ホームから発車する大阪線用。
こちらは地下ホームから発車する奈良線・難波線用の発車案内掲示板。
3番のりばに停車中の各駅停車高安行き。大阪線ホームはのりば番号と種別が特にリンクされていない模様。
4番のりばには2430系の急行名張行きが停車中。上本町から名張まで60キロを超す長旅を繰り広げる急行なのに短い4両編成かつロングシート車だ。
かつては大阪線の急行はクロスシート車が多用されていたが、近年はこのようないわゆる「ハズレ急行」も多くなっており、各駅停車でもクロスシートが使われる奈良線と明らかに格差が生じてしまっている。
この急行の横顔を拝見。始発駅なのに乗客はまばら。奈良線との対面乗り換えが可能な次の鶴橋駅からの利用客が多い。
5番のりばに、同じく2430系の折り返し各駅停車高安行きが入線。
この5番のりばから地上改札口方向を望む。大阪上本町駅は大頭端ターミナルを有するが、人は地下ホームの難波線を経由してなんば方面に流れ、大阪線から難波線への流れは対面乗り換えが可能な隣の鶴橋駅で行われるため、何とも物悲しい雰囲気を醸し出している。
同じ場所から3番のりば方向を望む。奥から各駅停車・急行・そしてまた各駅停車と並ぶ。
6線あるホームから1時間に発車する電車が12本。単純に割って、1線は30分に1本捌ければいいという、何とも贅沢な作り。
1970年の難波線開業前は、奈良線の列車もここから発車していたので、当時はさぞ賑わっていたのだろう。
今度は同じ場所から9番のりば方向を望む。
6番のりばには急行、7番のりばが空きの状態で8番のりばに区間準急が停車している。
1線で1時間に18本もの列車を捌かないといけない地下1番のりばからすると、同じ駅とは思えないのどかな時間が流れている。
6番のりばに停車中の5820系急行五十鈴川行き。大阪線の最東端伊勢中川から山田線を経由して伊勢神宮の最寄り駅五十鈴川まで、実に約140キロものロングラン運転を行う。
さすがにこれはクロスシート車でやってきた。これがロングシートだとハズレ度はかなり高い。
阪急梅田駅、南海なんば駅と比べると、利用客が少ないこともあってか、ホーム幅は狭い。
7番のりばに12200系当駅止まりの特急がやってきた。
8番のりばと9番のりばの線は共用で、特急は9番のりばから、それ以外の電車は8番のりばから乗車する。
停車中は、1620系区間準急榛原行き。短い4両編成。
昼間時間帯の区間準急は八尾以遠各駅に停車するので、榛原までの全工程50キロのうち、8割以上は各駅運転となる。
鶴橋方面を望む。大阪上本町駅は全ホーム10両編成対応となっているが、昼間時間帯は4両か6両での運転となるため、ホームの半分から先はこのようにガランとした空間が広がる。
近鉄開業時のターミナル駅が、時代の流れと共に、かつての賑わいを懐かしむかのような哀愁を醸し出している。
栄枯盛衰の姿を肌で感じ取ることが出来る。20年前は1日12万人を超える利用客があったが、現在は約7万5千人、鶴橋駅の半分程度となってしまった。
えきログちゃんねる
阪神線から直通している快速急行の発車風景。車体長の異なる阪神と近鉄の相互乗り入れはなかなか趣深い。
前4両がスナックカー(12000系)、後ろ2両が22600系(ACE)の編成。アーバンライナーではないので、いろんな駅に止まる。
地下2番のりばに到着する急行大阪難波行き。急行だが、各駅に止まるため、案内では種別は放送されない。
阪神三宮からの直通快速急行でクロスシート車。阪神との直通運転のおかげで奈良線もクロスシート車が増えた。
上本町地上頭端ホームから発車する急行五十鈴川行き。ダイヤ改正により宇治山田行きが一つ先の五十鈴川まで延長運転に。
始発駅だが、案内放送とベルのいたってシンプルな発車放送だ。