JR2線(大阪環状線・JRゆめ咲線)と接続する大阪市西部のターミナル駅である、阪神なんば線の相対式2面2線の高架駅。
旧・伝法線の延伸により開業した駅で、当初から大阪難波方面への延伸を前提としたホーム構造を有するも、延伸先の九条駅周辺住民の大反対に遭い、開業から約半世紀もの間、意図せざる終着駅であった過去を有する。
また、乗入れ先の近鉄電車との共演に加え、駅前の大阪下町の風情が堪能できる環状線高架下商店街や、全国でも珍しい歩行者専用の河底トンネルである安治川隧道(ずいどう)等、周辺も見どころが詰まった駅となっている。
目次
外観・駅周辺
【全国でも珍しい歩行者専用の河底トンネル・安治川隧道(ずいどう)】
JR2線(大阪環状線・JRゆめ咲線(桜島線))と阪神なんば線が接続する大阪市西部の一大ターミナル駅である西九条駅。その西九条駅を駅北側より望む。
西九条駅は、明治時代から存在するJR(当時:西成鉄道)の駅に、昭和の高度成長期に出来た阪神電車の駅がほぼ直角に覆いかぶさる構図となっている。
上の写真の阪神西九条駅の奥に進んだJR西九条駅高架下は、「OK18番街」と呼ばれるレトロ感溢れた商店街が伸びている。
一方、反対の南側の高架部分も、「OK19番街」なるこれまたレトロ感満載の飲食街となっており、大阪下町の風情を味わうことが出来る。
実はこの環状線高架下でよく見られる「OK●●番街」の栄えある「1番街」は、当駅より2つ大阪寄りにある福島駅高架下に存在している。
「OK」とは恐らく大阪(O)環状線(K)のことなのだろう。
そして、西九条駅前の通りを南に、シェルターで覆われた阪神なんば線の高架沿いに進むと、、、
通りの突き当りに、これもレトロ感満載の巨大な建造物が姿を現すが、、、
実は、これは全国でも珍しい歩行者専用の河底トンネルである安治川隧道(安治川トンネル)のエレベーター塔である。
このトンネルは江戸時代より大阪の主要水路として使用されている安治川を渡るために、戦時中の1944年(昭和19年)に建設された。
当初は自動車も走行可能なトンネルであったが、1977年(昭和52年)より自動車用のトンネルは閉鎖され、歩行者専用という珍しいトンネルとなった。
その安治川隧道(安治川トンネル)の出口を東方向に望む。ここから約700m進むと、阪神なんば線・大阪地下鉄中央線の九条駅に出る。
今度は上の写真の場所から北方向にある安治川を望むと、川に架かる鉄橋を渡る阪神なんば線の光景を見ることが出来る。
かつては、安治川の両岸は「源平渡し」と呼ばれる渡し船で結ばれており、安治川隧道のエレベーター塔はその渡し船の乗り場のあった場所らしい。
【西九条周辺の氏神・西九條神社】
今度は西九条駅の南口から、関空特急はるか号が通過しているJR高架橋手前の信号を右に折れて街中に入っていくと、、、
住宅密集地帯の中に、当地の氏神様である西九條神社が姿を現す。
そもそも「西九条」という地名は、江戸時代の1684年(貞亨元年)に政商・河村瑞賢の治水事業によって開削された安治川(新堀)によって、2つに分断された九条島の西側にあることから名付けられたもので、当地付近は江戸時代に新田開発が盛んに行われた土地らしい。
この西九條神社は、その開発された新田の一つである西野新田に入植した人々が、五穀豊作と海上安全を願って稲荷大社と住吉大神を祀ったのがはじまりと言われている。
当初は南隣に九条駅付近にある茨住吉神社の行宮所として、戦前までは同社への渡御(神輿が出かけていくこと)が行われていたらしい。
現在の西九條神社の社名が改められたのは1946年(昭和21年)のことであり、以降茨住吉神社への渡御も休止されたらしい。
改札口・コンコース
阪神西九条駅の下にあるJR西九条駅は、1898年(明治31年)にJRゆめ咲線(桜島線)の前身である旧・西成鉄道によって開業された歴史ある駅である。
阪神西九条駅は、それから実に66年後の昭和の高度成長期である1964年(昭和39年)に開業している。
地上2階にある天上の低いJR西九条駅の改札口左手の階段を登ると、、、
地上3階の阪神西九条駅西改札口に出る。2階のJR改札口とは打って変わって高い天井の開放感が印象的である。
この阪神西九条駅は、旧・伝法線が千鳥橋駅から延伸される形で終着駅として開業した駅で、開業前日に伝法線から西大阪線へと路線名が改称されている。
改札内コンコースも高い天井が気持ちのいい開放感を演出している。
開業から約半世紀の間終着駅であったが、2009年(平成21年)に実に計画から60年越しで大阪難波駅への延伸を果たし、同時に西大阪線から阪神なんば線へと再度路線名が改称された。
改札内コンコースからは、ほぼ直交するJR西九条駅のホームの様子が伺える。
2番線ホームへの階段から西改札方向を望む。改札の奥に見える下り階段が、JR西九条駅への連絡階段である。
その2番線ホームへの連絡階段を上がったところからは、JR西九条駅西側の様子を見ることが出来る。
この少し右側から、大阪環状線とJRゆめ咲線(桜島線)が分岐していく。
時刻表
阪神なんば線:ドーム前・難波・奈良方面
阪神なんば線は、大阪難波駅で接続する近鉄奈良線(難波線)と一体運用されており、ほぼ全ての電車が同線に乗り入れている。
平日日中は、奈良行き快速急行、大和西大寺行き区間準急、そして東花園行きの各駅停車がそれぞれ毎時3本ずつ運行されている。
大阪難波以東は、これに同駅始発の奈良行き急行と、大和西大寺行き普通が毎時3本ずつ加わる形となっている。
阪神なんば線:尼崎・神戸三宮・明石・姫路方面
当駅以西も毎時9本の運行となっており、尼崎行きの各停が6本と、同駅から本線に乗り入れて神戸三宮に向かう快速急行が3本となっている。
西大阪線時代は、4両編成の各停が毎時6本の運行であったが、大阪難波延伸による近鉄線との接続効果により運行本数・編成両数ともに増加している。
乗り場
ホームは相対式2面2線。当初から大阪難波方面への延伸を企図していたため、約半世紀の間の終着駅時代においても中間駅想定の相対式ホームであった。
1964年(昭和39年)の開業当初から東への延伸計画があったものの、2009年(平成21年)の実現までには実に約半世紀もの歳月を要したことになる。
ホーム西端から千鳥橋・尼崎方面を望む。左の丸囲みのプレハブ倉庫の場所には、階段をふさいだ後が残っている。
この場所は旧・大阪市電が走行していた西九条交差点付近に当たり、開業当初はこの階段を用いて西口改札を設ける計画があったらしいが、市電廃止により幻となったらしい。
1番線に近鉄5800系の各停・東花園行きがやってきた。
阪神・近鉄の相互乗り入れは、実に戦後直後の1946年(昭和21年)より計画されており、当初は本線の野田駅ー鶴橋駅間を結ぶ路線が計画されていた。
今度の東花園行きは阪神車1000系でやってきた。
しかし、この計画は市営モンロー主義を掲げる大阪市が全く同じルートを通る地下鉄千日前線の建設計画で妨害を図ってきた。
向かいの2番線には、近鉄9820系の神戸三宮行き快速急行がやってきた。ここから尼崎まではノンストップで走破する。
大阪市の妨害にあったことから、阪神・近鉄側は旧・伝法線の当駅延伸計画を近鉄線方面まで伸ばす現行ルート(当駅ー大阪難波間は阪神なんば線、同駅以東は近鉄難波線)に計画に変更した。
次の神戸三宮行き快速急行は、保有球団・阪神タイガースカラーが印象的な阪神1000系。
阪神車は19m3扉、近鉄車は21m4扉だが、費用対効果を考慮してあえて規格を統一せずに相互乗り入れを行う、全国でも珍しい例となっている。
次は、阪神1000系の奈良行き快速急行と、近鉄5800系の各停・尼崎行きとの並び。
大阪市は現行ルートにも反対姿勢を示したが、国の仲介を経て地下鉄千日前線と阪神なんば線両線の着工を認めることで決着を経た。
今度の2番線は、阪神1000系の尼崎行き区間準急だが、阪神なんば線内は各駅に停まるため、時刻表上は各駅停車となっている。
向かい側1番線には、近鉄9820系の大和西大寺行き区間準急がやってきた。区間準急は近鉄線内の鶴橋ー東花園間で通過運転を行う。
長らくローカル線である西大阪線の終着駅であった当駅だが、阪神なんば線開通により利便性が飛躍的に向上し、1日の利用客数は延伸前より4割増の約3万人となっている。
そして、近鉄との相互乗り入れにより最長10両編成の電車が入線するようになったため、西大阪線時代はホームの東端がJR西九条駅の西端にあったが、ホーム延伸により同駅を跨ぐ格好となった。
その延伸されたホーム東端から九条・大阪難波方面を望む。
ここから先ほどの安治川を超えて九条駅に向かって緩やかな下り勾配となっているが、なぜか高架区間にも関わらずシェルターで覆われている。
実はこの防音シールドに、当駅以東の延伸に約半世紀の時間を費やした理由の一つが伺える。
実は当駅開業直後に大阪難波延伸のための用地買収に取り掛かっているが、買い物客が逃げることと騒音を恐れた九条商店街を中心とする地元の大反対にあい、裁判沙汰まで担った結果、敷設の際にこの防音シールドが設けられることになったらしい。
えきログちゃんねる
[阪神西九条駅]神戸三宮行き快速急行接近放送201604
[阪神西九条駅]奈良行き快速急行接近放送201604
正式駅名は大阪難波駅ですが、阪神電車では「大阪」を冠するのは梅田駅だけで、大阪難波駅は単に「難波」と案内されます。
[阪神西九条駅]近鉄車と阪神車・快速急行同士の共演201604
近鉄9820系神戸三宮行き快速急行が発車すると同時に、阪神1000系の奈良行き快速急行が入線してきました。
[阪神西九条駅]各駅停車東花園行き接近放送201604
阪神電車では優等は「行先・種別」、各停のみ「種別・行先」の純で案内されます。