神戸の中心繁華街に位置し、阪急第二位の利用客数を誇る神戸三宮駅の一駅西に位置する、神戸高速線の相対式2面2線の地下駅。
一見駅があるかすらわからない地上での存在感の薄さとは裏腹に、旧・神戸高速鉄道管内で唯一の阪急管理の駅で、かつ独特の神戸高速仕様の構内放送を使用し続けていることから、神戸高速鉄道時代のレトロ感を今に引き継ぐ生き証人として、にわかに存在感を高めつつある。
また、わずか10年で廃城となった見晴し抜群の展望スポット・花隈城跡や、港町神戸の「ハイカラ」が体現されたモダン寺の愛称で有名な本願寺神戸別院、それに至近にあるJR元町駅北側の神戸高速線唯一の地上区間等、魅力的な周辺環境となっている。
目次
外観・駅周辺
【花隈公園・JR元町駅付近を通る神戸高速線唯一の地上区間方面の駅東側】
神戸の中心繁華街である神戸三宮駅からわずか1kmほど西の位置にある花隈駅。その東口を望む。
一見すると駅があるかどうかわからない自己主張の薄い駅東口を、駅前を東西に走る中央幹線(兵庫県道21号神戸明石線)を東に向かうと、、、
立派な花隈城の模擬石垣を擁する花隈公園に出る。
この「鼻隅城」とも称された花隈城は、戦国時代にJR宝塚線・伊丹駅前に存在した有岡城主であった荒木村重が築城したと言われている。
しかし、主君・織田信長に反旗を翻した村重は有岡城を追われ、最後の砦となったこの花隈城の戦いでも敗れたため、築城からわずか10年程度で廃城となった。
落城した花隈城の遺構は、当城を落城させた池田恒興が兵庫城築城の際に転用したため、ほとんど残っていないが、公園北西隅にはその流れを汲むと思われる「侯爵池田宣政」書による花隈城跡の石碑が掲げられている。
当時の遺構はほぼ残されていないが、見晴しの良い展望スポットとなっている花隈公園からは、東方向にあるJR元町駅の様子が肉眼で堪能できる。
花隈駅は地下駅であるが、そのJR元町駅3・4番のりばホームからは、地上に出現する阪急神戸高速線の様子を伺うことが出来る。
この花隈ー阪急神戸三宮間は、神戸高速線唯一の地上区間となっている。
【モダン寺で有名な本願寺神戸別院・阪神西元町駅方面の駅西側】
今度は、駅西口に回る。
左手に見えるJR神戸線(東海道本線)の高架の北側に花隈駅は存在するが、西口は東口よりもさらに自己主張が薄くなっている。
その西口横の交差点を少し北に入ったところには、「モダン寺」の愛称で親しまれている本願寺神戸別院の姿が見え、こちらは立派な存在感を示している。
言われなければ仏教寺院には見えないこの本願寺神戸別院は、元々1639年(寛永16年)に善福寺として開基され、当時は通常の寺院と同じ造りをしていたらしい。
その善福寺は大正時代に本殿が焼失し、1929年(昭和4年)に復興されたが、その際に日本初のインド仏教様式のデザインが採用された。
現在の建物は1995年(平成7年)に改築されたものだが、阪神・淡路大震災後初の新築寺院となったことから、復興の先駆けとして夜になるとライトアップされるらしい。
かつてのハイカラがレトロに変化した西元町駅周辺だが、往時のハイカラ感はこの本願寺神戸別院に息づいている。
そして、さきほどの交差点に戻って、中央幹線を跨ぐ歩道橋から東方向の神戸三宮方面を望むと、道路沿いのマンションの1階に花隈駅西口がひっそりと佇んでいるのが見える。
今度は上の写真の場所から反対の西方向の高速神戸・新開地方面を望む。
左側の高架がJR神戸線(東海道本線)で、阪急神戸高速線はこの地下を通っており、JRより北側は東行き一方通行となっている。
この歩道橋は、JRの高架をくぐって南側まで伸びており、、、
そのJR高架の真下は、「花隈南商店街」称するレトロ感満載の商店街が展開されている。
この商店街含むJR元町駅から神戸駅までの高架下は、元町高架通商店街(通称:モトコー)と呼ばれ、裏通り的存在としてマニア受けする商店街となっているようだ。
そのモトコーを北に抜けたJR高架の南側も同じ中央幹線だが、こちらは西行き一方通行となっており、この地下を阪神神戸高速線が通っている。
今度は、上の写真の場所から西方向を望む。このまま西に進むと、JR高架北側を走る阪急神戸高速線と合流する高速神戸駅となる。
そして、上の写真の中央幹線が左にカーブする手前の交差点南側にあるのが阪神神戸高速線・西元町駅である。
阪急花隈駅からの距離はわずか200mほどだが、西隣の高速神戸駅で合流することもあってか、乗換駅には指定されていない。
その西元町駅東口のすぐ南側は、アーケード街となっており、、、
大丸前スクランブル交差点から伸びる、東京・銀座、大阪・心斎橋と共に老舗が並ぶ名門高級商店街として知られる元町商店街となっている。
この元町商店街は、西元町駅の西口まで約1.2kmほどの長い商店街で、昭和初期まではモボ・モガ(モダンボーイ・モダンガール)が闊歩するハイカラな商店街として名を馳せていたらしい。
現在は、当時のハイカラがレトロな雰囲気を醸し出している。
改札口・コンコース
当駅は神戸市内に点在する私鉄ターミナル駅を結ぶ目的で1968年(昭和43年)に開業した神戸高速鉄道唯一の阪急管理の駅であり、神戸高速線内で阪急仕様の駅名票が唯一見られる駅である。
開業から約半世紀経っていることもあり、構内は往年のレトロ感漂う魅惑の空間となっている。
当駅含む神戸三宮ー新開地間は阪急神戸高速線となっているが、同線は神戸市内に点在する私鉄ターミナル駅を接続する目的で1968年(昭和43年)に開業した神戸高速鉄道の路線であり、阪急は第二種鉄道事業者として運行する形態となっている。
改札内コンコースもレトロ感満載の光景が展開されている。
当駅の利用客数は1日約8600人。200mしか離れていない阪神西元町駅の倍近い利用客数であるが、隣の阪急神戸三宮駅と比べるとその10分の1にも満たず、同駅以西の利用は極端に少なくなっている。
改札口からホームに向かう通路は、昭和レトロと言うよりも、むしろドラゴンクエストのダンジョン的な様相を呈しており、まるで迷宮に入ったような気分を味あわせてくれる。
時刻表
神戸高速線:阪急神戸三宮・大阪・京都・宝塚方面
阪神神戸高速線との混同回避のためか、阪急仕様の時刻表でありながら、「阪急神戸三宮」の記載が妙に新鮮に映る。
当駅含む神戸高速線は、神戸線と一体運用されており、日中は新開地始発の梅田行き特急が毎時6本と、山陽姫路始発の神戸三宮行き普通が毎時2本の運行となっている。
特急は阪急車8両編成、普通は山陽車3~4両編成で運行されている。
神戸高速線:新開地・山陽明石・姫路方面
西行きの日中は、梅田始発で当駅から2駅先の新開地止まりの特急が毎時6本と、神戸三宮始発の山陽姫路行き普通が毎時2本の運行となっている。
かつては阪急特急は山陽・須磨浦公園まで乗り入れていたが、1998年(平成10年)の阪神梅田ー山陽姫路間の直通特急運転開始以降、阪急の神戸高速線への乗り入れは新開地までとなった。
阪急電車では各駅停車となる区間に入っても種別を変更せず運行されるのが通例だが、この花隈駅だけは特急も「各駅停車」の表記となっているのが興味深い。
但し、駅構内放送においては、阪急車で運行される新開地行きは「新開地行き特急」と案内されており、これまた二重で興味深い現象となっている。
乗り場
ホームは相対式2面2線の構造。小さい子供が一人だったら怖くなってしまいそうな暗がりのレトロ感が魅力のホームである。
当駅属する阪急神戸高速線を敷設した神戸高速鉄道は、1988年(昭和63年)の鉄道事業法施行によって第三種鉄道事業者となった後も、列車の運行や駅の管理等を自社で行う特殊な運営体制となっており、当駅は神戸高速鉄道の駅として営業を続けていた。
しかし、経営悪化が続いたため、2010年(平成22年)より神戸高速鉄道は第三種事業者本来の資産の保有と借入金返済に特化し、運営面は乗入れている第二種業者が担う形となり、駅票等の構内設備も阪急仕様にリニューアルされた。
神戸高速鉄道は、西隣の高速神戸駅で阪神神戸高速線と合流し、山陽電車との接続駅である西代駅までつながっているが、高速神戸駅以西は阪神管理となっているため、当駅はかつて神戸高速鉄道が管理していた区間内で唯一の阪急管理の駅となった。
ここから、JR元町駅の北側を通って地上に上がり、神戸高速線内唯一の地上区間を走行することになる。
神戸三宮ー山陽姫路間で日中30分間隔で運行される普通車は、山陽車3~4両の短い編成で運行されるため、ホーム中央付近に停車する。
当駅周辺の見どころの一つである、モダン寺で有名な本願寺神戸別院もしっかりと宣伝されている。
乗り場番号の無い上りホームに、山陽3000系の神戸三宮行き普通が短い3両編成でやってきた。
かつては山陽車も阪急六甲駅まで乗り入れを行っていたが、阪急が新開地までの乗入れに短縮したことに合わせ、山陽車の乗入れも神戸三宮止まりとなった。
次に上りホームにやってきた阪急9000系の特急梅田行きは、長い8両編成で運行される。
2016年(平成28年)のダイヤ改正で阪神管理の神戸高速線の駅は阪神仕様の構内放送に変更され、独特の魅力を放つ神戸高速仕様の放送が聞けるのは当駅と新開地駅の神鉄電車ホームだけになってしまった(旧・神戸高速東西線内では当駅のみ)。
向かいの下りホームには、梅田始発の新開地行き特急がやってきた。
時刻表上は「各駅停車」となっているが、駅構内放送上は「特急」と案内され、律儀に「高速神戸に停車致します」とのアナウンスも入る。
その新開地行き「特急」が発車した。
どちらかと言えば存在感が薄めの花隈駅だが、他の駅が阪神仕様の放送にリニューアルされた今、神戸高速鉄道時代のレトロ感を引き継ぐ生き証人として、その存在感がにわかに高まっている。
次の下りホームには、山陽3000系の姫路行き普通がやってきた。
山陽姫路行きの普通は日中毎時4本運行されているが、うち2本が阪急神戸三宮始発で、残りが山陽須磨始発となっている。
えきログちゃんねる
[神戸高速仕様の放送が唯一残る阪急花隈駅]阪急梅田行き特急接近放送201604
阪急管理の阪急の駅になったのも関わらず、神戸高速仕様の放送を使用し続けているため、「阪急・阪急梅田行き特急」という独特の言い回しが堪能できます。
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2つの先の新開地駅止まりでかつ各駅に停まるにも関わらず「特急」と案内され、ご丁寧に停車駅まで案内されます。
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神戸高速仕様では「各駅停車」ではなく「普通」と案内されます。
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