滋賀県南東部にある忍者の地として有名な甲賀市(こうかし)の代表駅である、JR草津線と信楽高原鉄道(SKR)・信楽線の2面3線の地上駅。
元々草津線の前身である関西鉄道と、北側に隣接する近江鉄道との接続駅として1世紀以上前に開業した歴史ある駅で、かつて両線が接続していた形跡を残す超レトロな廃線跡の哀愁感がたまらない魅力を醸し出している。
また、旧国鉄信楽線が信楽高原鉄道線に第三セクター化されたことにより、当駅は滋賀県内で唯一3つの鉄道事業者が集結する駅となっており、県内に唯一残る非電化路線のディーゼルカーの姿も堪能できる、魅力あふれたターミナル駅となっている。
目次
外観・駅周辺
滋賀県内で唯一3つの鉄道会社が集結する駅であり、2004年(平成16年)に平成の大合併によって誕生した甲賀市(こうかし)の代表駅である貴生川駅(きぶかわえき)。その南口を望む。
その貴生川駅南口から北西方向には、隣の湖南市南側にある阿星山系の雄大な情景が拡がる。
文字通り、当地周辺は伊賀と並ぶ甲賀忍者の地として有名だが、正しくは「こうか」と発音し「こうが」は間違いらしい。
JR貴生川駅3番のりばホームから望める駅南口には、バスターミナルが設置されており、甲賀市から委託を受けた滋賀交通(滋賀バス)のコミュニティバスが運行されている。
一方の駅北口側にも、甲賀市の代表駅にふさわしい立派な駅前ロータリーが設置されている。
ちなみに駅名となっている「貴生川」という地名は、明治時代の町村制の施行時に、内貴・北内貴・虫生野・宇川の4村が合併した際に各村から1文字ずつ取って付けられた合成地名であり、付近に貴生川という川は存在しないらしい。
その駅北側ロータリーからは、隣接する近江鉄道本線の貴生川駅の光景も見ることが出来る。
甲賀市の中心市街地は当駅から北西に約3キロ離れた近江鉄道本線の水口城南駅付近にあるが、3線が集結する当駅の利用客数が突出して多くなっている。
駅北側に隣接する近江鉄道貴生川駅2番線に留置されている、親会社である西武の401系を改造した800系電車。
いつまでも留置されている光景に、地方のローカル線特有の癒しの哀愁感が漂う。
そして、駅北東すぐのところに発見したこの巨大な建造物は、何と天理教の甲賀大協会。
そのあまりの巨大さは、商業施設がほとんど存在しない当駅周辺のランドマーク的な存在となっており、ホーム上からもその堂々たる姿を拝見することが出来る(注:私自身は天理教とは何の関係もありません)。
改札口・コンコース
当駅の歴史は非常に古く、その起源は何と今から1世紀以上前の1900年(明治33年)にさかのぼる。
開業から86年を経た1986年(昭和61年)に橋上化され、JR・信楽高原鉄道と近江鉄道の駅が橋上部分で乗り換え可能となっている。
JR・信楽高原鉄道の改札口はその橋上部分の南側に1か所ある。
元々貴生川駅は、JR草津線の前身である関西鉄道と近江鉄道との乗換駅として開業した。
上の写真の場所から東方向の甲南・柘植方面を望むと、琵琶湖湖岸の風景とは異なる、滋賀県内陸部の山深い趣の光景が堪能できる。
今度は、改札口を改札内コンコースより望む。
コンコースに掲げられている「飯道山(はんどうさん)」は、当駅の南西、甲賀市・湖南市・信楽町の境にある山で、甲賀忍者の修練場であったと言われる山岳信仰の拠点らしい。
当駅は、JR草津線と信楽高原鉄道・信楽線との共同使用駅となっている。
というのも、元々信楽線は国鉄信楽線として開業した路線が第三セクターに転換された路線であり、元々は同じJRが運営していたことによる。
今度は改札内コンコースから西方向の三雲・草津方面を望む。この険しい連山の中で、数多くの忍術修業が行われていたのだろう。
時刻表
草津線:柘植方面
当駅は、JR草津線の運行上の境界駅となっており、日中時間帯の草津方面からの電車の半分は当駅止まりとなるため、本数が半減する。
それ以外の時間帯は終点の柘植まで運行されている。
草津線・信楽高原鉄道線(SKR):草津・信楽方面
JR草津線の草津方面行きの日中は全列車草津行きで、当駅始発と柘植始発の電車がそれぞれ1時間に1本運行されている。
また、朝夕ラッシュ時は草津から琵琶湖線(東海道本線)に乗り入れて京都に向かう電車、また朝1本だけさらに大阪まで向かう快速電車も運行されている。
JR信楽線から転換された信楽高原鉄道・信楽線は、単行のディーゼルカーがほぼ毎時1本運行されており、JR草津線及び近江鉄道との連絡を意識したダイヤとなっている。
乗り場
ホームは2面3線構造となっており、ホーム北側には近江鉄道貴生川駅が隣接している。
当駅はJRと信楽高原鉄道との共同使用駅であり、JR草津線が発着する1・3番のりば側はJR仕様の駅票に、、、
そして、3番のりば向かい側にあるのりば番号の無い信楽線ホーム側の駅票は、信楽高原鉄道仕様となっている。
【1番のりば】草津線:柘植方面
当駅以南に向かうJR草津線の柘植方面行きの電車は、単式ホームの1番のりばから発車する。
当駅止まりとなる折り返しの草津行きは、113系が停車している3番のりばから発車するので、1番のりばからは日中1時間に1本のみの発着となる。
その1番のりばホーム西寄りからは、隣接する近江鉄道貴生川駅の様子を堪能することが出来る。
現在は柵が設けられ、JRと近江鉄道側で分断されているが、かつては近江鉄道側のホームも使用されていた形跡が伺える。
上の写真の場所から西方向を望む。
左に折れて草津方面に向かうのがJR草津線、そして右に折れて甲賀市の中心市街地である水口方面に向かうのが近江鉄道の線路となっている。
地方のローカル線の哀愁感が漂う近江鉄道の貴生川駅。
現在は島式1面2線の駅だが、1番線の手前側にはJRの駅と柵で区切られてしまったホームと廃線跡が何かを物語っている。
その近江鉄道・貴生川駅の終端部からはさらに線路が伸びており、レトロ感にさらに磨きがかかった萌え萌えの光景が展開される。
そして、よく見るとJR貴生川駅1番のりばホームの東寄りは何と切り欠き構造となっており、さらに廃線が加わるたまらない展開となり、、、
何とその先はJR草津線と繋がっていた。
先ほどの柵で区切られた向こう側のホームは、かつて近江鉄道と国鉄との間で貨車の授受に使われていたものらしく、また戦前にはこの接続線を介して近江鉄道と国鉄の列車が相互乗り入れを行っていたらしい。
1番のりばの113系柘植行きは、ホーム東側に停車中の県内唯一の気動車である旧・JR信楽線の信楽高原鉄道と、、、
歴史の名残を感じさせる近江鉄道との接続廃線跡を横目に見ながら、次の甲南駅に向けて発車していく。
【3番のりば・信楽線のりば】草津線:草津方面/信楽高原鉄道線:信楽方面
JR草津線の草津・京都方面行きと、信楽高原鉄道は駅南側の島式ホームから発車する。
草津線ではまだまだ現役で頑張る113系に加え、JRに快適革命をもたらしたこの221系も徐々に浸透してきている。
草津線は、米原経由ルートとなった東海道本線を補完する目的で、本来の東海道である名阪短絡ルートとして旧・関西鉄道によって敷設された路線である。
当駅始発の草津行きは、3番のりばに入線してから4分後には出発するという、なかなか慌ただしい折り返しの光景が展開される。
その3番のりばは、一見単式ホームのように見えるが、、、
ホーム東側半分からは島式となり、当駅始発の信楽高原鉄道の列車が発着するのりばが現れる。
信楽高原鉄道は、元々国鉄信楽線として1933年(昭和8年)に開通したが、1987年(昭和62年)に現在の第三セクターに転換された路線である。
信楽線は、滋賀県で唯一残る非電化路線であり、当然ディーゼルカーも県内ではここでしか味わうことが出来ない。
そのため、現在でも同線の駅はJRと共同使用駅となっており、このような簡易式の中間改札が設けられているものの、同一ホームでそのままJR線への乗換が可能となっている。
信楽線の乗り場は、のりば番号が付与されていない「信楽線のりば」となっており、先端には車止めが設置された切り欠き構造となっている。
JRから第三セクター化された信楽線だが、国鉄・JR時代の1日9往復から現在はほぼ1時間に1本の15往復まで大増便させている。
かつては、JR草津線から信楽線への乗入れ列車も存在したが、1991年(平成3年)に発生した衝突事故を機に廃止されている。
その後、厳しい経営状況が続く当線は路線維持のため、2013年(平成25年)に鉄道施設を甲賀市に譲渡する「公有民営方式」へと移行し、再活性化を図ろうとしている。
その活性化策の一環として、当駅で接続する近江鉄道本線と信楽線を結び、さらに信楽から西に京都府の京田辺駅まで路線を敷設してJR学研都市線(片町線)を経由して大阪方面へ直結させるという、壮大な「びわこ京阪奈線」構想が持ち上がっているが、実現には至っていない。
その信楽線のディーゼルカーが止まる向かい側のJR草津線・3番のりばに、柘植方面からの草津行きが入線してきた。
JR草津線113系と信楽線のディーゼルカー・SKR312号との並び。
哀愁感満載のレトロな廃線跡に、滋賀県唯一のディーゼルカーも堪能できる貴生川駅。この魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい。
ホーム東端から甲南・紫香楽宮跡方面を望む。
JR線と信楽線はしばらく並走し、奥に見える高架道路をくぐった先から信楽線が大きく右に折れていく。
えきログちゃんねる
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