奈良市の目抜き通りである三条通商店街の西端に位置する、大和路線(関西線)・奈良線・万葉まほろば線(桜井線)の3面5線の高架駅。
1890年(明治29年)の開業から長らく地上駅であったが、市街地を東西に分断していた難を解消するため、平城遷都1300年にあたる2010年(平成22年)に高架化。
奈良の中心市街地と代表観光地は、近鉄王国の代表駅である近鉄奈良駅周辺にあり、利用客数でも同駅に譲るものの、長らく利用されていた和洋折衷の2代目駅舎の保存が決め手となり、第3回近畿の駅百選に選定されており、近鉄奈良駅同様、古都・奈良の玄関口にふさわしい風格を有している。
目次
外観・駅周辺
2010年(平成22年)に高架化された3代目・JR奈良駅。
奈良の旧市街地を東西に分断していた難を解消するために、平城遷都1300年を機に、街の再生と交通の円滑化を図るために連続立体交差工事が敢行された。
その東口には、1934年(昭和9年)から2003年(平成15年)まで使用されていた和洋折衷様式の2代目駅舎は、奈良市総合観光案内所に姿を変えて保存されている。
この旧駅舎の保存が決め手となり、第3回近畿の駅百選に選定されている。
近鉄奈良駅のある市街地や、奈良公園・東大寺等の有名観光地にも近いメインの東口には、立派なバスターミナルも設置されている。
一方の西口は、当駅の高架化に伴って再開発され始めた地域で、「シルクロードタウン21」と称されている。
かつて奈良運転所のあった場所だが、大和路線(関西本線)・奈良線・桜井線(万葉まほろば線)電化後は不要となり廃止された。
奈良市市制施行100周年の一環として建設された県内最大のホールである「なら100年会館」とは、ペデストリアンデッキでつながっている。
駅西側は、東側とは一変した落ち着いた様相を呈している。
近鉄奈良駅を中心とする駅東側の旧市街地と、近鉄新大宮駅を中心とする新市街地の中間地点として新副都心形成を目指しているが、目下のところ道半ばのようだ。
奈良市の目抜き通り・三条通り
JR奈良駅は、奈良の目抜き通りである三条通商店街の西端に位置する。
全国に約1000もある春日神社の総本社である春日大社の参道の始点でもあるこの三条通からは、春日山の美しい姿が垣間見える。
この日は、偶然にも「春日若宮おん祭り」当日であったらしく、その「お渡り式」にばったり遭遇できた。
その混雑激しい三条通をさらに東に進むと、、、
近鉄奈良駅の面する登大路通までを南北に結ぶ、これも奈良の旧市街地を代表する商店街の一つである東向(ひがしむき)商店街の横を通り、、、
そこからさらに東に進むと、、、
古都奈良の文化財として世界遺産に登録されている、五重塔が映える興福寺・五重塔を水面に移す絶景が魅力の猿沢池に出る。
興福寺が行う放生会(ほうじょうえ)の放生池として、749年(天平21年)に造られた人工池である。
その猿沢池からさらに東に進むと、春日大社の一の鳥居前にたどり着く。
その一の鳥居をくぐって、表参道に入る。
さきほど遭遇した「春日若宮おん祭り」は、春日大社の摂社・若宮神社の祭祀(さいし)として、1136年に時の関白・藤原忠通によって始められ、現在まで途切れることなく開催された歴史ある催しだ。
その「おん祭」で繰り広げられる猿楽や雅楽などは、伝統芸能保存に大きな役割を果たしており、「春日若宮おん祭の神事芸能」として、1979年(昭和54年)に国の重要無形民俗文化財に指定されている。
鹿と緑の大スケール・名勝奈良公園
そして、その春日大社の表参道を東に進むと、奈良の中心市街地から徒歩圏内にあるとは思えない開放的な眺望が開ける。
これは、春日大社一帯に拡がる春日野。
南都八景の一つにもなっており、奈良時代に烽(とぶひ)が設置されたことから、「飛火野(とびひの)」の別名がある。
その春日野(飛火野)から北方向に進むと、大仏殿交差点に到着する。
写真は交差点南東角より撮影しており、県庁・近鉄奈良駅は奥の東側方向にある。
その大仏殿交差点南東角からも、春日大社への参道が伸びており、、、
北東角は奈良随一の観光スポットである、名勝奈良公園の入り口となっている。
総面積502ヘクタールの大スケールの公園が、市街地から徒歩10分もかからない場所に存在している。
その奈良公園の入り口を入ると、すぐに眼前に開ける、全面が芝で覆われた若草山の大眺望。
この芝はノシバ(日本芝の一種)と呼ばれ、近畿では当地が唯一の自生地とされており、毎年1月に行われる「山焼き」は奈良を代表する行事となっている。
そして、「鹿」の群れも、奈良公園には欠かせない光景だ。
春日大社の神使として1000年以上前から生息している野生動物で、その生態はノシバの生育には欠かせないらしい。
世界遺産・東大寺
今度は、さきほどの大仏殿交差点に戻り、北方向を望むと、古都の観光地らしい沿道が伸びており、、、
鹿と戯れながらその沿道を進むと、、、
「奈良の大仏」で有名な、世界遺産・東大寺の南大門前に出る。
奈良時代(8世紀)に聖武天皇が国力を尽くして建立したとされる東大寺。その入口に堂々と君臨する南大門は、国宝に指定されている。
その南大門をくぐった先にある二月堂への参道からは、、、
重要文化財に指定された中門と、国宝に指定された大仏殿が、水面に映える絶景を眺めることが出来る。
当寺は、今では仏教の少数派となった華厳宗の総本山だが、日本仏教黎明期には大きな影響を与えたらしい。
これが、重要文化財に指定されている中門。両脇からコの字型に回廊が伸び、大仏殿(金堂)を取り囲んでいる。
その中門に取り囲まれた、大仏が宿る大仏殿(金堂)。
実際の御大仏の荘厳な姿は、入堂料500円をケチった私に代わって、是非ご自身の目で確かめて頂きたい。
そして、中門正面から東に向かうと、手向山八幡宮(たむけやまはちまんぐう)の鳥居が見える。
749年(天平勝宝元年)に、東大寺と大仏建立に当たって、その守護神として宇佐八幡宮より勧請されたらしい。
奈良市内が一望できる絶景スポット・県庁屋上広場
次にさきほどの大仏殿交差点から、登大路を東に下る。
奈良県内の路線バス事業をほぼ独占する、近鉄グループの奈良交通のバスを眺めながら、、、
通北側にある、しだれ桜で有名な氷室神社を抜け、、、
車どおりの多い県庁東交差点の整備されている歩行者用地下道を抜けると、、、
幅員が広くなり、綺麗に整備された登大路の北側に、奈良県庁が見えてくる。
その屋上広場は、実は観光名所ひしめく奈良市街が一望できる、一大絶景スポットなのだ。
まず、県庁東側には、左手から世界遺産・東大寺と、山腹が芝で覆われた奈良の代表景観の一つである若草山の見事なコラボが堪能できる。
そこから、目を少し右に転じた南東方向は、これも奈良を代表する観光地である奈良公園と春日山の絶景が飛び込んでくる。
写真右下の交差点が、さきほど通った地下道のある県庁東交差点だ。
そして、南側には、五重塔が映える興福寺の姿が。
さらに、南西方向は、JR大和路線(関西本線)に沿った奈良の市街地が広がり、、、
中心市街地に近い近鉄奈良駅も、県庁南西方向に見ることが出来る。
そして、西方向は近鉄奈良線に沿った大阪のベッドタウンが拡がり、、、
北西方向は、近鉄京都線・JR奈良線に沿った「けいはんな」の学研都市が拡がっている。
そして、絶景スポットの奈良県庁を後にして、登大路をさらに東に下ると、、、
近鉄王国・奈良の代表駅である近鉄奈良駅が堂々と構えている。
左側のアーケード街は、これも奈良の中心商店街の一つである東向(ひがしむき)商店街だ。
改札口・コンコース
名古屋以西を京都ルートと奈良ルートで激しい綱引きが行われているリニア新幹線。果たして決着はつくのだろうか。
2010年(平成22年)に高架リニューアルされたコンコース。
古都・奈良の玄関口にふさわしい、寺社の伽藍と垂木をイメージした趣きのある装飾が施されている。
改札口は中央の1か所に集約された。
多数の観光客の利用を想定してか、かなり開放感のあるコンコースとなっており、正面には観光案内が堂々と掲げられている。
床の光沢が美しい改札内コンコース。
当駅は競合の近鉄奈良駅に先立つこと約四半世紀の1890年(明治23年)に、初代・大阪鉄道の王寺ー当駅間開通の際に開業した。
その後、1896年(明治29年)にJR奈良線の前身・奈良鉄道が木津ー当駅間延伸に伴い乗り入れを開始。
さらに、初代・大阪鉄道及び奈良鉄道は、関西鉄道に合併され、その関西鉄道は1907年(明治40年)に国有化されている。
時刻表
大和路線・大阪環状線:王寺・天王寺・大阪方面
大阪方面行きの日中は、王寺まで各駅に止まる大和路快速が毎時4本の運行。
天王寺から大阪環状線の外回り線に入り、大阪まで快速運転を行ったのち、天王寺まで一周して戻ってくる。
大和路線の終点はJR難波駅だが、同駅へは、日中は新今宮駅で王寺始発の普通電車に乗り換えとなる。
大和路線・奈良線:加茂・亀山・宇治・京都方面
日中毎時4本の大和路快速は、半分が当駅止まりとなり、非電化・関西線との境界駅である加茂行きは30分間隔で運行される。
また、JR奈良線・京都方面は、みやこ路快速と普通が30分間隔で交互に運行されている。
大和路線・奈良線ともに、近鉄と競合しているが、いずれも本数では近鉄に差をつけられている。
万葉まほろば線・和歌山線:桜井・高田方面
万葉まほろば線との愛称に変わった桜井線は、2両編成の電車が日中30分間隔で運行されており、半分は途中の桜井止まりで、残りは終点・高田以遠の和歌山線に乗り入れている。
乗り場
ホームは地上3階にあり、島式3面5線の構造となっている。
手前から2つの島は、大和路線の列車が発車するため、駅票には同線のラインカラーが用いられている。
一番奥の島は、当駅始発の万葉まほろば線(桜井線)のホームのため、ラインカラーは無く、JR西日本のコーポレートカラーが施された駅票となっている。
【1番のりば】万葉まほろば線・和歌山線:桜井・高田方面
1番のりばからは、当駅始発の万葉まほろば線(桜井線)の電車が発車する。
左側がその1番のりば。そのホーム向かい側にものりばがあるが、番号無しホームとなっている。
万葉まほろば線は、ラインカラーが存在しないため、JR西日本のコーポレートカラー仕様の駅票だ。
京終(きょうばて)寄りからホーム全景を望む。姫路駅同様に屋根の位置が低いため、コンパクト感が出ている。
上の写真の場所から南方向を望む。左側に折れる単線が万葉まほろば線で、右に折れる複線が大和路線の天王寺方面となる。
そして、1番のりばに、105系の折り返し普通電車が短い2両編成でやってきた。
同じ105系だが、1両目と2両目で顔立ちが違っている。この電車は折り返し桜井行きとなるようだ。
その横顔。和歌山地区地域統一色である青緑色が施されており、和歌山線と共通運用となっている。
万葉まほろば線は、1893年(明治26年)より存在する歴史ある路線で、かつては大阪・京都から橿原・桜井・天理方面に向かう重要路線であった。
しかし、ライバル近鉄が強力な競合路線(大阪線・京都線・橿原線・天理線)を敷いたため、利用客が奪われた結果、現在はローカル線の趣きが強くなっている。
特に桜井ー高田間は近鉄と完全に並走しており、日中の半分の電車は競合を避けるため、桜井駅止まりとなっている。
1番のりばの向かい側の線は、2番のりばと挟まれた格好となっており、、、
加茂方面からやってきた221系・大和路快速大阪方面行きが入線して両側の扉が開き、1番のりばの万葉まほろば線との乗換に配慮している。
同列車到着の際は、「『こののりばに』電車がまいります」と案内される。
【2・3番のりば】大和路線・大阪環状線:王寺・天王寺・大阪方面
真ん中の島からは、大和路線(関西本線)の大阪方面行きの電車が発車する。
かつては、木津から学研都市線(片町線)に乗り入れる電車も発車していたが、現在は早朝の2本を除いて廃止されたため、掲示からも消されている。
当駅始発の221系・大和路快速大阪方面行きは、2番のりばの向かい側の3番のりばから折り返す。室温を保つため、ドアは手動で開閉する扱いとなっている。
関西線から大阪環状線に乗り入れる快速電車が国鉄時代から運行されていたが、JR発足後の1989年(平成元年)に正式に「大和路快速」の愛称が付けられた。
その3番のりばの電車を4番のりばホーム側から撮影。当駅から天王寺まで33分、大阪までは約50分で乗り換えなしで行ける。
競合の近鉄奈良線に比べて遠回りのルートとなり、大阪ミナミの中心・難波へは新今宮での乗り換えが必要となるが、それでも輸送改善によって、同線に遜色ない所要時間が実現できている。
当駅の利用客数は、1日約35000人。
競合の近鉄奈良駅の6割程度だが、ジャパンレールパス等の登場により、外国人観光客の利用が増加しているらしい。
【4・5番のりば】大和路線・奈良線:加茂・亀山・宇治・京都方面
4・5番のりばからは、大和路快速の加茂行きと、JR奈良線の京都方面行きが発車している。
関西線の伊賀上野・亀山方面の案内もあるが、当駅から直接乗り入れる列車は無く、加茂駅での乗り換えとなる。
日中当駅を発車する1時間当たり12本のうち、半分の6本がこのホームから発車するという、奈良駅で最も忙しいホームとなっている。
5番のりばに、大阪方面からやってきた221系の大和路快速の加茂行きが入線。王寺から各駅に止まるが、終点の加茂まで大和路快速であり続ける。
大和路快速は、ほぼ全列車221系での運転だ。
向かい側の4番のりばには、当駅折り返しのJR奈良線・みやこ路快速京都行きが入線。これも221系で短い4両編成だ。
みやこ路快速は2001年(平成13年)に登場した奈良線の最速達種別で、近鉄京都線・急行の強力なライバルとなっている。
車内の快適さの点では、クロスシート車仕様のJR・みやこ路快速がロングシート車の近鉄急行の一歩上を行っている。
ホーム端より北方向・京都方面は、観光地の雰囲気があまり感じられないが、、、
駅東側に開ける若草山と春日山の眺望からは、観光地・奈良の風情を存分に味わえる。
えきログちゃんねる
[JR奈良駅の日常]221系・大和路快速とみやこ路快速のコラボ201512
大和路快速大阪行き発車@3番のりば
⇒大和路快速加茂行き入線@5番のりば
⇒みやこ路快速京都行き入線@4番のりば
[JR奈良駅入線発車風景]221系大和路快速大阪行き@2番のりばと「こののりば」201512
加茂方面からやってくる大和路快速は2番のりばと1番のりばの向かいのホームに挟まれた中線に入線しますが、1番のりば向かいのホームは番線が無いため、「こののりば」という珍しい案内放送が聞けます。
[JR奈良駅入線風景]万葉まほろば線(桜井線)105系普通桜井行き201512
和歌山地区地域統一色である青緑色が施されています。短い2両編成です。
[JR奈良駅発車風景]万葉まほろば線(桜井線)105系普通桜井行き201512