キタ(梅田)・ミナミ(難波)に次ぐ大阪の繁華街「アベノ・天王寺」地区の中心に、あべのハルカスを従える近鉄大阪阿部野橋駅とがっぷり四つに構える大ターミナル駅で、第三回近畿の駅百選認定駅。
大阪環状線・阪和線・大和路線(関西線)の3線が集結し、1日約24万人とJR西日本管内で第三位の利用客数を誇る。
半地下にある4面7線の島式ホームの北側に、私鉄駅の雰囲気満載の5面5線の地上頭端式ホームがあるのが特徴的だが、その理由は頭端式ホームの前身が、かつて国鉄とは別会社であった私鉄の阪和電気鉄道の阪和天王寺駅だったことによる。
それを国鉄が終戦間際に戦時買収して、両駅を統合した名残が現在に引き継がれている(買収当時は阪和電気鉄道は南海山手線)。
外観
毎度おなじみ(?)の近鉄前交差点。大阪市南部の大動脈・あびこ筋とあべの筋が交差する大交差点を南西角より撮影。
奥にJR天王寺駅が見える。交差点にかかる歩道橋はあべのハルカス開業に合わせて設置されたらしい。
その近鉄前大交差点の東側、東西に走るあびこ筋の北側にJR天王寺駅がある。
実はこの駅を1889年(明治22年)に開業させたのは、今の大和路線の前身である初代大阪鉄道。1900年に関西本線の前身である関西鉄道の譲渡された後、1907年に鉄道国有法により国有化され、国鉄(現JR)の駅になった。
そして、初代大阪鉄道とは全く別の近鉄南大阪線の前身である大阪鉄道が、1923年に天王寺駅の向かい側に1923年(大正12年)に開業した駅がこれ。
何と開業当時の駅名は「大阪天王寺駅」だったが、国鉄との差別化を意識して、意図的に現駅名の「大阪阿部野橋駅」に改名したというトリビアがある。
近鉄前交差点から北に進んだ橋の下を通るJR線。上町台地の独特の地形の関係から、JRの駅は半地下(掘割)になっている。
改札口・コンコース
南北に長いJR天王寺駅の中央コンコース。この奥に地下鉄天王寺駅につながる下り階段がある。
中央改札口付近。1日約28万人の利用客があり、終始人通りが絶えない。JR西日本管内では大阪駅、京都駅に次ぐ第三位の利用客数を誇る。
中央改札の横にならぶ切符売場。その正面真上にあるディスプレイに注目。
後述するが、天王寺駅は幾分ややこしい駅構造をしているので、誤乗防止のため、乗り場をディスプレイでわざわざ案内している。
関空・和歌山方面行きの特急は阪和線に乗り入れるが、阪和線ホームからは発車しない。
また、大阪環状線外回りも、阪和線・大和路線(関西線)から乗り入れる快速電車主体となったため、3分の2の電車が環状線ホームからは発車しない。
その中央改札を改札内より。改札外の中央コンコースと比べると天井が低くなっている。
そして、この後ろ側が阪和線の頭端ホーム。手前の階段が環状線内回りホームへの下り階段。
頭端ホームは高架駅のような雰囲気があるが、上町台地上に設置されており、実は中央コンコースと同じ1階だ。
変わって東改札口付近は、人通りのほとんどが駅西側の中央コンコースに向かうため、閑散としている。
時刻表
大阪環状線内回り:鶴橋・京橋・大阪方面
環状線内回りは全列車各駅停車。しかし、このうち3分の2は大阪から快速運転となって、一旦天王寺まで一周してきた後に、阪和線(関空・紀州路快速)・大和路線(大和路快速)に入る。
天王寺駅では誤乗防止のため、全列車普通電車との表記がなされている。
大阪環状線外回り:弁天町・西九条・大阪・JR難波方面
環状線外回りは、前述のように3分の2の電車が大阪まで快速電車。
快速は阪和線・大和路線からの乗り入れとなるため、環状線ホームではなく、大和路線ホーム(17・18番のりば)から発車する。
従って、環状線外回りホームからは日中1時間に4本しか発車しない。
大和路線(関西線):王子・奈良・加茂・高田・五条方面
大和路線(関西線)の平日昼間は、1時間あたり
環状線から直通の大和路快速奈良or加茂行き:4本
JR難波始発の普通電車(原則王寺行き):4本の計10本。
王寺から先は原則各駅に止まる大和路快速だけになるので、4本と半分以下に減る。
大和路線は近鉄奈良線と競合するが、現時点では最短距離を行く近鉄に分がある模様だ。
阪和線・関西空港線:鳳・和歌山・関西空港方面
阪和線の平日日中は、1時間当たり
環状線から直通し、大和路線ホームから発車する関空・紀州路快速:4本
当駅始発で阪和線頭端ホームから発車する区間快速日根野行き(鳳から各駅停車):4本
当駅始発で阪和線頭端ホームから発車する普通鳳行き:4本の計12本体制。
これに、関空特急はるかと和歌山方面行き特急くろしおが1本ずつ程度加わり、計14~15本/時の高頻度運転となっている。
乗り場
【1~9番のりば】阪和線・関西空港線(当駅始発):鳳・和歌山・関西空港方面
上町台地上の1階にある5面5線の阪和線頭端式ホーム。実際に見るとなかなか不思議な感覚が味わえる。
阪和線ホームの駅票。ラインカラーのオレンジは、陽光あふれる大地につながるイメージとのこと。
8番のりばに到着の折り返し103系普通鳳行き。まさに103系の保守本流といわれるこのカラーの電車は、阪和線でいまだ健在。
線の両側をホームで挟まれた頭端式ホームはJR(旧国鉄)の駅らしからぬ私鉄駅の雰囲気満載の珍しい構造だ。
その謎を解くカギは、阪和線が元々「阪和電気鉄道」という私鉄だったことによる。
この阪和線ホームは、当時「阪和天王寺駅」と名乗っており、「国鉄天王寺駅」とは全く別の駅だった。
阪和電気鉄道は、1929年に阪和間輸送の南海独占を切り崩すために、京阪と大阪商船等の出資で建設された私鉄路線。
しかし、南海との激しい乗客獲得競争に敗れ、1940年に南海に吸収合併され、さらに終戦直前の1944年に国鉄に戦時買収された経緯がある。
その結果、当時の国鉄天王寺駅と統合されて今の形になったとのこと。この頭端ホームにはその歴史の名残が色濃く刻まれている。
5・6番のりばは降車専用ホーム。このまっさらの空間が何とも言えず心地良い。
5番のりばに到着した折り返し225系の区間快速日根野行き。乗車は隣の4番のりばから。
終着駅到着後に人がホームの先頭に流れてくる絵は、頭端ホームの醍醐味だ。
4番のりばから車止め方向を望む。この5線ある頭端ホームから発車する電車は、普通と区間快速が4本ずつ。
大阪上本町駅頭端ホーム並みのゆったりとした時間が流れている。
かつては紀州方面のターミナル駅の性格が強く、特急くろしお号もここから発車していたが、環状線との直通運転が主流となった今では、ゆるやかな時間が流れており、栄枯盛衰を感じさせる雰囲気となっている。
3・4番のりばホームは主に当駅始発の快速・区間快速が発車する。ホーム中ほどに進むにつれてホーム幅は狭くなる。
平日昼間は普通で4~6両、区間快速は4両での運転なので、ホームの半分から先はほとんど使われておらず、頭端部分からはさらに閑散とした様相を呈している。
周囲忙しい大和路線ホームとの差が著しい。
2番のりばに停車中の225系区間快速日根野行き。短い4両編成で鳳からは各駅に止まり、鳳以遠の各駅停車の役割を担う。
その横顔。225系・223系の新型快適車両中心の快速系統と、レトロ感満載の103系主体の普通。このギャップもなかなか面白い。
1・2番のりばは頭端部分が奥にあるため、ホームもその分先まで伸びている。
【11・12番のりば】大阪環状線内回り:鶴橋・京橋・大阪方面
阪和線9番のりばに直結する東改札口につながる連絡通路より。
ここは1階で、阪和線以外のホームは階段を下って、半地下(掘割)ホームから発車する。
半地下ホームが旧国鉄天王寺駅であり、頭端ホームである阪和天王寺駅より前の1889年に、初代大阪鉄道が湊町(現JR難波)ー柏原間の中間駅として開業した。
大阪環状線ホームの駅票。「大阪環状線改造プロジェクト」によってクールなスタイルに一新された。
大阪環状線は大和路線・阪和線乗り入れの快速主体のダイヤとなったため、このオレンジ色の電車が見れるのは1時間に4回だけとなった。
12番のりばに停車中の225系の環状線内回り電車。
実はこの電車は天王寺出発後関空・紀州路快速に変身し、大阪まで各駅に止まった後、天王寺駅15番のりばに戻ってきてから阪和線に入る。
関空・紀州路快速とするとややこしいので、誤乗防止のために天王寺駅では「普通・大阪環状線」となっている。
11・12番のりばのホーム中ほど付近。暑さ対策のミストが施されている。
【14番のりば】大阪環状線外回り:弁天町・西九条・大阪方面
14番のりば。人が少ないのにはわけがある。
ここからは環状線外回り電車が発車するはずだが、前述のように、その3分の2が大和路線・阪和線から乗り入れる快速となっており、それらは大和路線の17・18番のりばから発車する。
従って、14番のりばは1時間に4本だけオレンジ色の電車が発車するという何ともマイナーな扱いとなってしまった。
14番のりばに15分に1回だけやってくるオレンジ色の103系外回り普通電車を15番のりばから望む。
同じく15番のりばホームから環状線の11~14番のりばを望む。
手前が14番のりばで、12・13番のりばに挟まれた線に天王寺出発後関空・紀州路快速に化ける223系が停車中。
【15番のりば】阪和線・関西空港線(環状線からの直通):関西空港・和歌山方面
15番のりばは正式には大和路線(関西線)のホームだが、昼間は環状線から直通して阪和線に乗り入れる電車が発車する。
停車中は281系関空特急はるか号。奥の14番のりばは、環状線外回りからやってきた大和路快速当駅止まりの電車。
新今宮方面ホームより。この大和路線(関西線)ホームが最も人が集中する。
ホーム東側。16番のりばに停車中は、205系大和路線(関西線)の普通王寺行き。
今度の15番のりばは、阪和線から紀勢線に入って南紀方面の白浜に向かう287系特急くろしお号。
かつては天王寺始発で阪和線頭端ホームから発車していたが、今ははるか号と同じ梅田貨物線を経由して新大阪あるいは京都始発となった。
くろしお号の種別幕。381系時代の波模様がなくなった。
15番のりばホームから阪和線頭端ホームから出発する103系普通電車を望む。
くどいようだが、あそこが上町台地上にある1階、この15番ホームは半地下の位置にある。
【16番のりば】大和路線:王子・奈良・加茂・高田方面
大和路線仕様の駅票。15番ホームも同じ。
16番のりばに到着の205系普通王寺行き。ウグイス色らしい。
その正面。真ん中下の白のラインが印象的。短い4両編成だ。
今度は221系大和路快速奈良行き。1時間に4本発車するうち、半分は奈良の先の加茂まで向かう。
大阪環状線内回りからの直通運転だ。日中は6両か8両で運転される。
今度も同じ221系だが、JR難波始発の快速王寺行き。こちらは短い4両編成だ。
16番のりばの普通王寺行きを17番のりばホームより撮影。
ホーム新今宮寄り付近の中央出口につながる階段。降車した客のほとんどはこっち方向に流れる。
【17・18番のりば】大阪環状線外回り:弁天町・西九条・大阪・JR難波方面
17番のりばに到着の大和路線から環状線外回りに乗り入れる221系大和路快速大阪方面行き。
大阪まで快速運転の後、各駅停車となって天王寺駅環状線ホーム(13or14番のりば)に戻ってくる。
なので、終点は大阪ではないが、発車案内掲示板上は「大阪」行き、放送上は「大阪方面行き」と案内される。
ホーム中ほどから新今宮方面寄りに来ると、半地下構造になっていることがよくわかる。
18番のりばに到着の281系関空特急はるか号京都行き。
ここから福島付近まで環状線外回りを走り、梅田貨物線を経由して新大阪からJR京都線(東海道線)方面に向かう。
次の18番のりばは阪和線から環状線外回りに乗り入れる223系関空・紀州路快速大阪方面行き。
車両先頭の行先案内表記上は「大阪環状線」となっているのが印象的。径路は先ほどの大和路快速と同じで、ここから環状線を一周する。
17番のりばに到着の205系普通JR難波行き。「JR」も駅名の中に含まれている。
えきログちゃんねる
8番のりば阪和頭端ホームに入線する折り返し普通鳳行きの入線放送。阪和線バージョン。
16番のりば大和路線ホームから発車する大和路快速奈良行きの入線放送。環状線・大和路線バージョン。
15番乗り場関空特急はるか号入線放送。冒頭に「お待たせしました」の案内が付く特急仕様の接近放送。
はるが号は、京都から環状線を経由してやってくるため、阪和線の頭端式ホームではなく、大和路線のホームから発車する。