滋賀県北東部の中心都市・彦根市の代表駅であるJR彦根駅に隣接する、近江鉄道本線(彦根・多賀大社線)の島式1面2線の地上駅。
滋賀県最古の私鉄・近江鉄道発祥の地に位置し、1世紀以上の歴史を経た同鉄道の中核駅の一つである。
利用客数では隣接するJR彦根駅の1割強に留まるも、往年の名車が保存されている大車両基地を併設し、JR彦根駅を凌ぐ存在感を誇る魅力満載の駅となっている。
外観・駅周辺
滋賀県北東部の中心都市・彦根市の代表駅である彦根駅。西口駅前広場には、彦根藩・初代藩主であった井伊直政像が出迎えてくれる。
その彦根駅西口からは、メインストリートが綺麗にまっすぐ伸びており、天候が良ければここから彦根城の姿が一望できる。
この滋賀県の駅前にお決まりのように存在する平和堂・アルプラザは、この彦根が創業の地である(一号店は彦根駅前ではなく銀座商店街にある彦根銀座店)。
そのメインストリートの突き当りには、滋賀懸(しがけん)護国神社が堂々と構えられている。
「護国神社」と称するだけに、国家のために戦火で命を落とした英霊を祀る神社で、原則各府県1社となっており、滋賀県の護国神社はこの彦根の地に鎮座している。
そして、その護国神社をお膝元に抱えるのが、彦根のシンボル・彦根城。
徳川の譜代大名・井伊氏14代の居城であり、姫路城と共に国宝に指定されている名城で、姫路城に次ぐ世界遺産登録を狙っている。
【往年の名車に出会える近江鉄道ミュージアム】
古くからの城下町が堪能できる西口に対し、この東口は当駅開業から実に100年以上を経た2007年(平成19年)に出来た新しい玄関口だ。
従って、その東口の駅前は歴史の名残を感じさせる西口とは打って変わった新鮮味のある風景となっている。
そして、この東口一番の見どころは、近江鉄道彦根駅構内にある近江鉄道ミュージアム鉄道資料館。
西武鉄道の子会社である近江鉄道は、現在では全て西武から譲渡された車両を改造して使用しているが、この500系は近江鉄道のオリジナル。
最盛期は6編成12両が在籍していたが、現在は引退し、同鉄道が経営する保育園「ほほえみ園」の遊具として保存されている。
この近江鉄道ミュージアムは、2007年(平成19年)の彦根城築城400年祭の一環として、当駅内の保存車両を整備して開設したもので、元々は一年限りの公開とする予定だったが、好評を博したため、翌年以降も特定日に公開されている。
その近江鉄道ミュージアムを、彦根駅の東西自由通路より望む。
私鉄ではほとんど見られなくなった電気機関車が保存されており、石田三成が築城した後方の佐和山と共に、時代の生き証人として、その存在感を放っている。
この大車両基地を併設する彦根駅は、1世紀以上の歴史を誇る滋賀県最古の私鉄・近江鉄道発祥の地として、隣接するJR彦根駅を上回る存在感を放っている。
改札口・コンコース
当駅西側に隣接するJR彦根駅は近江鉄道より約9年早い1889年(明治22年)に開業し、1981年(昭和56年)に橋上化された。
JR彦根駅の改札口はその橋上コンコースの西側にあり、その奥に進むと、、、
近江鉄道彦根駅への連絡階段がある。かつてはJR(国鉄)と近江鉄道は共同使用駅だったが、橋上化に伴い改札口が分離されたようだ。
近江鉄道彦根駅は、この階段を下った先にある。当駅の開業は、1898年(明治31年)。滋賀県最古の私鉄として当初は、当駅ー愛知川間の終着駅として開業した。
その階段を下った先にある改札口は、かつて共同使用駅だった時代に中間改札として使用されていたものを転用したらしい。
そして、橋上コンコースからは、近江鉄道の大車両基地の様子を堪能することが出来る。
自動券売機はあるが、改札機は存在せず、ローカル線のレトロな雰囲気を醸し出している。
近江鉄道は、かつては「近鉄(おうてつ・きんてつ)」と呼ばれていた時代もあったが、明らかに混同してしまうため、現在では「ガチャコン」の愛称で親しまれている。
時刻表
当駅は公式上は米原ー貴生川間の近江鉄道本線だが、2013年(平成25年)より米原ー高宮ー多賀大社前間に「彦根・多賀大社線」の愛称が設定された。
日中は米原・貴生川方面行きが毎時1本ずつ運行されるが、朝夕ラッシュ時は高宮から多賀線に乗り入れる電車や、八日市から八日市線に乗り入れる電車も運行されている。
乗り場
隣接するJR彦根駅2番のりばホーム北端から鳥居本・米原方面を望む。奥に見える佐和山をJR琵琶湖線は左から複線で、そして近江鉄道本線は右から単線で回り込み、6キロ先の米原駅で再び合流する。
その近江鉄道からJRへはかつて線路がつながっていたと思われる形跡が残っており、哀愁感が引き立てられる情景が展開されている。
元西武401系を改造した現在の主力となっている800系。近江鉄道はカーブが多く車両の建築限界が小さいため、20m級の大型の西武車両導入の際は、車両の四隅を三角に切り取る面取り改造を施すというユニークな手法が採られている。
そして、上の写真の場所から南に進むと見えてくるのが、近江鉄道の彦根工場。
創業以来の歴史を持つ伝統ある工場で、さきほどの面取り改造と言い、地方鉄道にしてはかなり高い技術力を持っているらしい。
そして、さらに南下していくと、駅舎橋上化に伴って設置された跨線橋の向こう側に、近江鉄道彦根駅のホームが見える。
当駅の構造は島式1面2線だが、、、
隣接するJR彦根駅2番のりばホームとの間に微妙な空間が空いているのが気になる。
そして、隣接するJR彦根駅2番のりばホームの柵側には、列車が来るはずの無いのに、なぜか黄色い点字ブロックが埋め込まれている。
その近江鉄道ホームの1番線に、これも元西武101系を改造した100系潮風号の米原発・多賀大社前行きがやってきた。
左側通行が基本なので、進行方向左側の2番線に入線するのかと思いきや、右側の1番線に入線するという興味深い配線になっている。
今では完全に区切られてしまったJRと近江鉄道だが、何とこの微妙な空間には、当駅橋上化まで線路が走っていた。
その線路は近江鉄道の電車が走行し、実は米原方面行きの電車は、この2番のりば向かい側から発着していたらしい。
その名残が、微妙な空間とかつて乗り場が存在していたことを示す黄色い点字ブロックとして残っているのだ。
駅舎橋上化以前は、このホームで近江鉄道と国鉄の列車が対面乗り換えが出来たのだろうか。
JR彦根駅2番のりばホームから近江鉄道彦根駅を望む。かつて乗り場が存在していたことを占める黄色い点字ブロックが、哀愁感を醸し出している。
日中の営業列車は1時間に1本。時間が止まったかのような長閑な光景が魅力的である。
そして、西武鉄道で活躍して往年の名車が、ローカル仕様に改造されて、子会社の近江鉄道で立派な余生を送っている。
そのホーム南端からJR線の南彦根・近江鉄道線のひこね芹川方面を望む。ローカル色満載の近江鉄道と、都会色満載のJR線とのコラボが楽しめるのも当駅の魅力の一つである。
そして、今度は2番のりばに、高宮方面からの800系米原行きが、進行方向右側となる2番線に入線してきた。
この800系には、近江鉄道の「鉄道むすめ」である豊郷あかね嬢がラッピングされている。
テレビアニメ「けいおん!」のモデルとされる豊郷小学校の最寄である「豊郷駅(とよさとえき)」と、同駅属する「万葉あかね線」に因んだ名づけられ、夏季限定で運行されるビール飲み放題電車・ビア電に業務する駅務係らしい。
JR線との接続を重視するダイヤのため、当駅での長い停車を経て、次の停車駅の鳥居本駅に向けてゆっくりと発車していく。
そして、今度は地元フジテックの鮮やかなラッピングがまぶしい近江鉄道800系が当駅始発の米原行きとして2番線に入線していく。
当駅の利用客数は1日約2500人。隣接するJR彦根駅の1割強となっているが、実は過去10数年で利用客数は倍増している。
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