京都と奈良の中間付近に位置する有名観光地・宇治の代表駅である、奈良線の島式2面4線の地上駅で、快速停車駅。
「宇治十帖」で有名な源氏物語ゆかりの地でもあり、平安貴族がこぞって別荘を建てるほど愛された絶景はいまだ健在であり、京都府内で唯一「重要文化的景観」に指定されている。
また、世界遺産・平等院をモチーフとした美しい橋上駅舎に加え、接近メロディが主流となったJR西日本における数少ない懐かしの接近ベルが残っており、周辺環境同様ノスタルジックな雰囲気が満喫できる魅力的な駅となっている。
目次
外観・駅周辺
【日本三古橋・宇治橋から京阪宇治駅・平等院方面】
京都と奈良の中間付近に位置する有名観光地・宇治の代表駅であるJR宇治駅。その南口を望む。
2000年(平成12年)に改築されたこの立派な橋上駅舎は、宇治の代表的観光スポットである世界遺産・平等院鳳凰堂がモチーフとなっているらしい。
そして、その駅前広場奥の交差点から奥の山側方面は、宇治橋通り商店街の入り口となっており、、、、
突き当りを左(東)に曲がると、その宇治橋通り商店街の緩やかな下り坂が続く。
この宇治橋通りは、その起源が何と室町時代にまで遡るという歴史ある通りで、観光地の趣きを醸し出す商店が立ち並んでいる。
その宇治橋通り商店街を東に抜けると、右手に平等院の鎮守である縣神社(あがたじんじゃ)の立派な一の鳥居が姿を現し、、、
そのまま目を左(北)に転じると、これまた趣き深い立派な橋が堂々たる姿を見せるが、これが「瀬田の唐橋」「山崎橋」と並ぶ日本三古橋の一つである宇治橋である。
この宇治橋西詰は、「夢浮橋(ゆめのうきはし)ひろば」とも呼ばれ、源氏物語の作者・紫式部の石像が飾られている。
何を隠そう、この宇治は「宇治十帖」で有名な源氏物語ゆかりの場所であり、物語のフィナーレを飾る「夢浮橋」の古跡がこの石像の隣にひっそりと佇んでいる。
その宇治橋の上から南方向には、京都市内ではなかなか味わえない宇治川上流の絶景が堪能できる。
中州に架かる左側の朱が映える朝霧橋と、右側のアーチ形状が美しい橘橋のコラボレーションが、絶景に花を添えている。
今度は、その宇治橋から北東方向を望むと、宇治橋東詰にある京阪宇治駅の姿が見える。
1995年(平成7年)のリニューアルによって駅舎とホームの間をJR奈良線の単線線路が通り抜ける構造となり、眺望美しい宇治川を渡って京阪の駅に吸い込まれるJR線の光景を見ることが出来る。
そして、紫式部像のある宇治橋西詰交差点に戻って、右側の縣神社・一の鳥居ではなく、左側の小道に入ると、、、
ここも観光地の雰囲気満載の平等院表参道が伸びている。
室町時代から続く宇治茶の老舗が並び、お茶の香ばしい香りが漂うこの通りは、環境省主催の「かおり風景100選」にも選ばれている。
そして、その平等院表参道を真っ直ぐ進むと、世界遺産・平等院の入り口にたどり着く。
この平等院は、元々は平安時代に栄華を誇った摂政・藤原道長の別荘「宇治殿」であったものを、その子である関白・藤原頼通が1052年(天喜元年)に寺院に改めたものらしい。
この表門から拝観料を払って中に入ると、国宝にも指定され10円玉にも刻まれている、かの有名な鳳凰堂の姿を見ることが出来る。
鳳凰堂は、藤原摂政時代を偲ぶことの出来るほぼ唯一の遺構であり、その余りに美しい姿は、地上に出現した極楽浄土とまで言われていたらしい。
【平等院から宇治神社・世界遺産宇治上神社方面】
その拝観料をケチって中に入らなかった平等院を後にして、今度は平等院表参道の突き当りを左に向かうと、、、
先ほど宇治橋から眺めたアーチ形状の美しい橘橋に出る。
その橘橋を渡った中州は橘島(中の島地区)と呼ばれており、宇治川東岸とは向こうに見える朱が美しい朝霧橋で結ばれている。
この周辺一帯は宇治公園と呼ばれ、観光客や地域の住民の人たちの憩いの場となっている。
そして、その橘島と宇治川東岸を結ぶ朝霧橋を東方向に望む。
この朝霧橋自体は1972年(昭和47年)に架けられた比較的新しい橋だが、色鮮やかな橋桁が宇治の風景に見事に溶け込んでいる。
その朝霧橋から北の宇治橋方向を望む。下流に近い川幅にも関わらず見事な透明感を湛える宇治川。
秀吉が宇治橋上から茶の湯を汲ませたという逸話が残されており、現在行われている「茶まつり」では、この宇治川の水が用いられているらしい。
そして、朝霧橋から南方向は、工事車両の興冷め感を補って余りある宇治川上流の絶景が堪能できる。
平安貴族がこぞって別荘を建てるほど惚れ込まれた宇治の情景は、京都府内で唯一の「重要文化的景観」に指定されている。
その朝霧橋を渡り切って宇治川東岸に降り立つと、橋のたもとに宇治神社の美しい一の鳥居が姿を現す。
「古事記」にも登場する第15代・応神天皇の息子である菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)を祀ると言われる非常に歴史のある宇治神社。
実は「宇治」という地名は、この「菟道稚郎子(『うじ』のわきいらつこ)」が起源となっているという、まさに当地の氏神様である。
菟道稚郎子(うじのわきらいつこ)は、父・応神天皇の寵愛を受けて皇位継承を授けられるほどの聡明な人物であったようだ。
しかし、異母兄の大鷦鷯尊(おほさざきのみこと)に皇位を譲るべく自殺したとされる「悲劇の皇太子」としての美談が「日本書紀」に残されている。
その後、菟道稚郎子に代わって即位した兄・仁徳天皇によって、自身の邸宅跡であり、父・応神天皇の離宮跡であったこの地に祀られたらしい。
若くして聡明であった菟道稚郎子を祀る宇治神社は、学問の神様としても崇められている。
また、国の重要文化財にも指定されているこの本殿には、当地に向かう途中に道に迷った菟道稚郎子を導いたと言われる「見返り兎」の像が飾られている。
その兎は、人生を道徳の正しい道に導く神様の使いとされている。
実は、この宇治神社には明治時代まで二社一体の存在であったもう一つの神社が存在する。
それは、宇治神社の境内北側(写真左側)にある「さわらびの道」を上ると、、、
境内全体の世界文化遺産に認定された、宇治上神社の色鮮やかな鳥居が出迎えてくれる。
この参道の景観も世界遺産に認定されている。
明治維新前までは、宇治神社と宇治上神社は二社一体の「宇治離宮明神(八幡宮)」であり、当社は「上社」・宇治神社は「下社」と称されていた。
荘厳な雰囲気が漂うが、神社としての規模が比較的小さい宇治上神社。
この簡素な神社が世界文化遺産にまで上り詰めた理由は、当社が現存する日本最古の神社建築によるものらしい。
この宇治上神社は、元々宇治神社と対となっている神社であるため、同社と同様に菟道稚郎子(うじのわきいたつこ)が祀られている。
この入り口入ってすぐのところにある拝殿は、鎌倉時代前期の建立と言われる現存する最古のものであり、何と国宝に指定されている。
その拝殿横には円錐型の「清め砂」が盛られており、1年間盛られ続けた後に、祭事の際に境内に巻いてお清めをするらしい。
そして、その拝殿の奥にある本殿は、何と平安時代後期の建立と言われる、こちらも現存最古のものであり、拝殿と並び国宝に指定されている。
この簡素な神社にも外国人観光客の姿が多数見られた。この集客力が「世界遺産」ブランドの威力であり魅力なのだろう。
改札口・コンコース
当駅は1896年(明治29年)に開業した非常に歴史ある駅だが、2000年(平成12年)に駅舎が橋上化されたため、真新しい印象が残っている。
その橋上コンコースからは、西方向のJR小倉・木津・奈良方面の情景が一望できる。
駅東側は観光地の風情が色濃いが、西側は打って変わった普通の住宅地の様相が展開されている。
改札口は、その橋上コンコース中央に1か所ある。
当駅の利用客数は、1日約17000人弱。度重なる輸送改善の効果により、この15年で何と4割も増加している。
改札内コンコースからは、駅東側の黄檗・六地蔵・京都方面の情景が一望できる。
こちらは、観光地の宇治らしい情景が展開されている。
時刻表
奈良線:京都方面
当駅は京都・奈良方面共に日中は緩急接続が行われ、快速系統(みやこ路快速・快速・区間快速)が毎時2本、普通が毎時4本運行されている。
京都までは快速でたったの16分、普通でも25分で到着し、電化を含む度重なる輸送改善で利便性が大幅に向上している。
奈良線:木津・奈良方面
奈良方面行きの日中は、奈良行きのみやこ路快速が毎時2本、普通が毎時4本運行されている。
普通は半分が途中の城陽止まりとなり、奈良行きの普通は当駅で快速の待ち合わせを行う。
乗り場
ホームは島式2面4線の構造。
かつては国鉄によくある2面3線構造であったが、輸送改善の一環で駅舎橋上化と共に現在の2面4線に拡張された。
電化を含む度重なる輸送改善の結果、民営化後の利用客数が何と3倍に膨れ上がったJR奈良線。
京都ー奈良間の2大古都を結ぶ路線であるため、「日本の古都を結ぶクラシックな落ち着いたイメージ」とされる茶色がラインカラーとなっている。
【1・2番のりば】奈良線:六地蔵・京都方面
当駅では日中緩急接続が行われており、まず往年の国電車103系の普通京都行きが、待避線の1番のりばにやってきた。
そして、向かいの2番のりばに、221系のみやこ路快速京都行きが到着。
この「みやこ路快速」は2001年(平成13年)より運行開始された奈良線の最速達種別で、当駅以北は六地蔵・東福寺に停車する。
その両者の並び。度重なる輸送改善によって利便性が大幅に向上したJR宇治駅は、競合の京阪宇治駅の3倍もの利用客数を誇っている。
宇治市内における利用客数は、近鉄京都線の大久保駅・小倉駅の方が多いが、当駅は宇治観光の表玄関として同市の代表駅の座を獲得している。
221系は普通電車にも利用される。城陽始発の普通電車は、当駅で緩急接続は行わず、終点・京都まで先着する。
【3・4番のりば】奈良線:城陽・木津・奈良方面
今度はホーム東端から、黄檗・京都方面を望む。輸送改善著しい奈良線だが、当駅からJR藤森駅までは現在でも単線となっている。
当駅以北が単線であるため、当駅は上下線の列車交換も行う重要な役割を担っており、上下線の緩急接続がほぼ同時に展開される。
木津・奈良方面行きは内側線が待避線となっており、103系普通奈良行きは、3番のりばに停車する。
その普通電車が当駅で待ち合わせる「みやこ路快速」。種別名が長いため、発車案内掲示板の「種別」欄に入りきらないため、、、
乗車位置を表示する際は、単なる「快速」表記となるのは、どうでもいいがちょっとしたトリビアである。
その本線である外側・4番のりばにやってきた221系・みやこ路快速奈良行き。
当駅以南は城陽・玉水・木津に停車するが、奈良線に快速電車が登場した1991年(平成3年)当初の京都ー木津間の停車駅は当駅だけであった。
その両者の並び。現在は電車が頻発する都市型近郊路線へと大変貌と遂げたが、奈良線が電化されたのは1984年(昭和59年)のことであり、それまではディーゼルカーが1時間に数本程度運行されるしがないローカル線であった。
城陽行きの普通電車は、当駅で緩急接続を行わず、終点まで先着するため、本線の4番のりばに停車する。
今や主要駅では洗練された接近メロディが主流となったJR西日本だが、この宇治駅は一昔前の懐かしの接近ベルが使用されており、平城山駅同様のノスタルジックな雰囲気を味あわせてくれる。
当駅以北は引き続き単線だが、こちら側は2つ先の新田駅までが2001年(平成13年)に複線化されている。
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