中国・明朝風様式を堅持する大変珍しい仏教・黄檗宗(おうばくしゅう)の大本山・萬福寺の最寄駅である、奈良線の相対式2面2線の地上駅。
明治時代から存在する線路上に戦後になって開業した駅で、大正時代から存在する京阪黄檗駅とはホーム同士が目と鼻の先にあり、JR奈良線と京阪宇治線との完全並走の情景が堪能できる。
しかし、両線が完全競合関係にあるためか、東福寺駅のような見事な乗換え連係プレーは一切取られておらず、「近くて遠い」存在の一見変わった共演関係が楽しめる駅となっている。
目次
外観・駅周辺
【近くて遠い京阪黄檗駅】
京都を代表する観光地の玄関口である宇治駅の一駅北に位置する超難読駅である黄檗駅(おうばくえき)。
その改札口は駅の東側にあるが、、、
実は駅北側には何と京阪宇治線黄檗駅が目と鼻の先に迫っており、縦列駐車的なホーム配置となっている(写真はJR黄檗駅構内の跨線橋より撮影)。
しかし、京阪黄檗駅が目と鼻の先にあるホーム北側には改札口は存在しないため、同駅に向かうためには駅東側改札から北に向かう必要がある。
この駅東側を南北に走る道路は京都府道7号、別名を宇治街道と呼ぶ。
日本三古橋の一つである宇治橋の西詰からJR奈良線の東側をほぼ並走し、JR・地下鉄六地蔵駅北側までつながっている。
その宇治街道を、奈良線の線路の奥に見える京阪黄檗駅を横目に見ながら北に進む。
JR奈良線の線路自体は京阪宇治線黄檗駅よりも15年先(1896年(明治29年))から存在していたが、長らく国鉄(JR)の駅は存在しなかった。
そのまま北に進むと、JR奈良線の線路を跨ぐ踏切が存在し、そこからJR黄檗駅の様子が伺える。
そのJR奈良線の単線踏切を超えて西に進むと、、、
ようやく京阪宇治線の黄檗駅にたどり着く。
ホーム同士は目と鼻の先にあるはずなのに、乗換にはスリリングな宇治街道を300mも歩く必要がある。まさに「近くて遠い」である。
【明朝風様式を今に伝える独特の黄檗宗大本山・萬福寺】
さて、当駅のハイライトである黄檗山・萬福寺へは、京阪黄檗駅に向かう宇治街道の途中から東に折れて、、、
民家の間を縫う細い小道を抜けると、、、
その小道の突き当たりから少し南に向かったところに存在する。
これが、日本三禅宗の一つである黄檗宗の総本山・黄檗山萬福寺の総門。
1661年(万治4年)に明朝時代の中国僧・隠元隆琦(いんげんりゅうき)によって開創された、日本の仏教宗派では最も新しい部類に入る。
この総門の扁額に記された「第一義」は、禅の本髄を示す言葉らしく、第5代住持であった高泉性敦によって書されたものである。
この書は、何と弟子から何度もダメ出しを喰らい、数十回も書き直しをさせられたという逸話が残されている。
この黄檗山萬福寺の特徴は、伽藍建築や文化等すべてのおいて中国の明朝様式が堅持されているところにある。
左右の部分が低く、段差が設けられているこの総門は、まさに中国・明朝風様式で、日本の一般的な社寺建築には見られない大変珍しいものらしい。
当初3年の約束で来日した隠元であったが、周囲の熱心な要請によって日本に骨をうずめることを決意した。
当時の日本は鎖国政策を敷いていた江戸時代であったが、時の将軍・徳川家綱も隠元に帰依し、祖国の寺と同名のこの黄檗山萬福寺が建立されたらしい。
隠元の来日は、日本に新しい禅がもたらされただけでなく、当時の日本文化にも多大な影響を与えたとされている。
総門を入って左手にあるこの立派な孟宗竹(もうそうちく:タケノコ)は隠元時代に日本に入ったとされており、同僧はインゲンマメ(隠元豆)の名称にその名を残している。
そして、総門入って左奥には、何とも中国らしい大スケールが魅力の三門が姿を表す。この三門は総門と共に、国の重要文化財に指定されている。
当時から日本でも名の知れた著名な高僧であった隠元は、中国様式へのこだわりを持っていたようで、この萬福寺の住持も中国僧が務めるべきと考えていた。
時の江戸幕府もそれに同意し、13代住持までは中国僧が務めていたらしいが、時が経つにつれて中国僧が少なくなり、22代目以降は和僧となったらしい。
この山門をくぐった先は大人500円の拝観料が必要なゾーンとなっているため、ご興味のある方は是非ご自身で足を踏み入れて頂きたい。
ご覧のように、総門・三門はこの黄檗山萬福寺の序の口でしかなく、東方の妙高峰に向かって、かなり巨大な本山が形成されている。
また、当寺院では違反行為を重ねた競輪選手の「特別指導訓練」と称する5泊6日の修行が行われる場所としても知られており、その内容は「お寺行き」と恐れられるほどの過酷なものらしい。
改札口・コンコース
改札口含む駅舎は、駅西側に存在する。
この地には何と明治時代から線路が敷設されていたが、駅が開業したのは戦後高度成長期に入った1961年(昭和36年)。京阪黄檗駅よりも半世紀後のことである。
時刻表
奈良線:宇治・奈良・京都方面
JR奈良線の時刻表は、何と先の黄檗山萬福寺境内にも掲げられている(京阪宇治線の時刻表は存在しなかった)。
快速通過駅である当駅は、毎時4本の運行体系で、半分が終点奈良まで向かい、残りは途中の城陽止まりとなる。
京都方面も毎時4本で、全列車京都行きとなっている。奈良行きは次の宇治で快速の待ち合わせを行う、京都行きと城陽行きは終点まで先着するダイヤとなっている。
乗り場
ホームは相対式2面2線の構造。
開業当初は改札口に直結する現2番のりばホームのみであったが、奈良線輸送改善の一環で1番のりばホームが増強された。
そのホーム増強の際に設置された両ホームを結ぶ跨線橋から、南方向の宇治・奈良方面を望む。
ここから約1キロほどは、JR奈良線と京阪宇治線との完全並走の情景が堪能できる。
今度は反対側の北方向、木幡・京都方面を望む。
真北にある元祖・黄檗駅である京阪黄檗駅の宇治方面行きホームの敷地は、増設されたJR奈良線の京都方面行きホームと被っているのがわかる。
電化を含む度重なる輸送改善の結果、民営化後の利用客数が何と3倍に膨れ上がったJR奈良線。
京都ー奈良間の2大古都を結ぶ路線であるため、「日本の古都を結ぶクラシックな落ち着いたイメージ」とされる茶色がラインカラーとなっている。
輸送改善著しい奈良線だが、当駅含むJR藤森ー宇治間は現在でも単線のままである。
上の写真の場所から、反対のホーム方向を望む。
日中は普通電車同士の交換駅となっており、関西ではまだまだ現役で活躍している往年の国電車103系の並びの姿を見ることが出来る。
そこからさらに目を東に転じると、さきほどの黄檗山萬福寺擁する妙高峰の眺望が展開される。
JRに快適革命をもたらし、私鉄王国関西におけるJR復権のキーマンとなった221系で運用されるみやこ路快速は当駅を通過するが、一線スルー構造とはなっていないため、低速で通過していく。
JR黄檗駅の横を通り過ぎて、京阪電車の新型車両10000系が、中書島行きとして北側の京阪黄檗駅に入線していく。
そして、今度は反対に京阪黄檗駅の横を通り過ぎて、JR奈良線の往年の国電車・103系が、普通奈良行きとして南側のJR黄檗駅に入線してきた。
ホーム北端から目と鼻の先に見える京阪宇治線黄檗駅。
ホーム同士は目と鼻の先にあるのに、連絡通路等の設備は一切存在せず、乗換えるには駅の外側を回り込む必要がある。
その京阪黄檗駅を出発した10000系の宇治行き。
京阪本線とは東福寺駅で見事な連係プレーを展開しているJR奈良線だが、完全並走する宇治線とは、完全に「見て見ぬふり状態」となっているが、それはそれで興味深い光景である。
当駅の利用客数は、1日約7500人。
非電化時代は京阪黄檗駅の独壇場であったが、度重なる輸送改善の効果が表れ、近年は逆転に成功している。
普通電車同士の交換を終えて、京阪黄檗駅を見て見ぬふりをしながら、103系普通京都行きが次の停車駅の木幡に向けて出発していった。
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