元町駅[阪神](神戸市中央区)~神戸高速線開通までの暫定終着駅で、駅構内の昭和レトロと駅周辺の西洋モダンとのギャップが魅力の特急停車駅~

初代・三ノ宮駅であったJR元町駅と直結し、神戸高速鉄道開通まで約30年間終着駅であった、阪神本線・神戸高速線の島式1面2線の地下駅。

元々西へ延伸することを前提とした暫定終着駅であったことを伺わせる狭隘・簡素なホームが特徴的で、改札階コンコースには昭和のレトロ感漂う有楽名店街の大人のディープ空間が味わえる。

また駅周辺は、日本三大チャイナタウンである南京町の情景もさることながら、大丸神戸店擁する旧居留地の西洋モダンの情景は、駅構内のディープ空間からは想像できないギャップが堪能できる。

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外観・駅周辺

【三宮の由来となった三宮神社と旧居留地・大丸前駅方面の駅東側】

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神戸の中心繁華街である神戸三宮駅からわずか1km西の位置にある元町駅。JRの高架駅と一体化されたその駅の東口を望む。

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現在は元町駅を名乗るJRの駅だが、何を隠そう1931年(昭和6年)までは、実はこの場所に初代・国鉄三ノ宮駅が存在していたのだ。

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その元町駅前を東西に走る兵庫県道21号神戸明石線(中央幹線)を東方向に望む。

現在の神戸の中心地・三宮のビル群が肉眼で確認できるが、三宮が神戸の中心地となったのは昭和に入ってからのことであり、それまではこの元町駅周辺が商業の中心地であったらしい。

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今度はJR元町駅1・2番のりばホームから駅南方向を望むと、神戸三宮駅から続く兵庫県下最大の繁華街と言われる三宮センター街の奥に、大丸神戸店の姿が見える。

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この大丸神戸店は、旧居留地のモダンな景観に配慮した見事な御影石の外装を誇り、日本で最も美しい百貨店の呼び声が高いらしい。

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そして、その大丸神戸店とメリケンロードを挟んで向かい合っているのが、東京・銀座、大阪・心斎橋と共に老舗が並ぶ名門高級商店街として知られる元町商店街である。

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この元町商店街は、ここから阪神西元町駅までの約1.2kmに渡って伸びる商店街で、昭和初期まではモボ・モガ(モダンボーイ・モダンガール)が闊歩するハイカラな商店街として名を馳せていたらしい。

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そして、その元町通商店街と大丸神戸店が向かい合うスクランブル交差点である元町通1丁目交差点から、大丸前を通る神戸市道花時計線(旧西国街道)の1本北の通りが三宮中央通りで、この地下を地下鉄海岸線が通っており、、、

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その三宮中央通りの北側には、その海岸線の旧居留地・大丸前駅の2番出入口が存在する。元町駅からは、わずか200mほどしか離れていない。

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そして、大丸前を通る旧西国街道である市道花時計線を西に向かうと、円状のアーチが美しいトアロードの横に、三宮の地名の由来となった三宮神社が姿を現す。

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この三宮神社は、現在の阪急神戸三宮駅北側にある生田神社を囲むように存在する裔神(えいしん:末社に祀られている神)八社の一つであり、航海の安全と商工業の繁栄を守る神として、古くから一般の崇敬厚い神社らしい。

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現在の元町駅の場所に初代・国鉄三ノ宮駅が存在した理由は、この三宮神社にあったのだ。

そして、各線の三宮駅(三ノ宮駅)が存在する現在の神戸の中心地は、実は地名としては「三宮」ではないという驚きのトリビアが隠されている。

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この三宮神社は、1868年(明治元年)に明治新政府最初の外交事件となった「神戸事件」が起こった場所でもある。

備前藩兵の隊列をフランス水平が横切ったことに端を発した紛争で、最終的には隊列の責任者の命を代償に問題の解決が図られたが、この事件以降明治政府の対外政策は「攘夷」から「和親」へと大転換された。

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その三宮神社の西側を走るトアロードから、西国街道を渡って南方向に向かうと、駅名のもう一つの由来である旧居留地にあたる。

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「旧居留地」とは、1858年(安政5年)に締結された不平等条約である安政五か国条約に基づき、外国の治外法権が及んでいた地域のことで、神戸では1868年(明治元年)から1899年(明治32年)まで存在していた。

東洋で最もよく設計された居留地と評され、成立の経緯はともかく、この整然とした西洋の街並は、神戸のシンボル的存在として見直されており、阪神・淡路大震災の鎮魂と復興を祈念して行われている電飾イベント「神戸ルミナリエ」の会場にもなっている。

【日本三大チャイナタウンの一つである南京町方面の駅西側】

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今度は、駅の西口に出る。

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神戸らしい西洋モダンが堪能できる駅東側に対し、西側は打って変わってレトロ感満載の雰囲気が味わえる。

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そのレトロ感を演出しているのが、当駅と神戸駅との高架下に運営されている元町高架通商店街(通称:モトコー)である。

戦後の闇市をルーツとするとも言われており、裏通り的存在としてマニア受けする商店街となっているようだ。

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その元町高架通商店街の道向かいにあるウィンズから南に向かい、、、

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さきほどの元町商店街を横切ってさらに南に向かうと、、、

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横浜中華街・長崎新地中華街と並ぶ日本三大チャイナタウンの一つである、南京町の西側の入り口である「西安門」が見えてくる。

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この南京町の誕生は、1868年(明治元年)と言われており、安政五か国条約の対象外となり、外国人居留地に住むことが叶わなかった中国人(当時:清国)が、当居留地西側の当地に居を構えたことが発端となっているらしい。

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昭和初期には「関西の台所」として繁栄した南京町だが、先の大戦の大空襲以降退廃化が進んだ。

1981年(昭和56年)の南京町商店街振興組合設立以降、ソフト・ハード両面での整備を重ね、今では平日昼間でこの人だかりを生むほどの観光地として再生を果たしている。

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南京町は横浜中華街に比べると規模が小さいが、在住華僑の人数は同地の倍近い数を誇ると言われている。

神戸華僑は他の地域と比べて日本人社会と良好な関係を築いているらしく、横浜・長崎では改称された「南京町」の名称を現在でも使い続けている。

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中央広場には、先日の熊本地震を受けて応援メッセージ(加油:頑張れ)が掲げられていた。

この南京町では中国式に旧正月に春節祭が行われるが、多数の日本人も参加する南京町のみならず神戸の重要イベントとなっており、近年緊張高まる日中友好の懸け橋的存在となっている。

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その中央広場を後にしてさらに東に向かうと、東側の入り口である「長安門」に出る。

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その長安門では、七福神の一神である「布袋(ほてい)」と思われる、満面の笑顔をした巨大な石像が出迎えてくれる。

布袋は、唐の時代に実在したとされる仏教の禅僧で、富貴繁栄をつかさどるものとして広い信仰を集めている。

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そして、その長安門からメリケンロードを挟んで道向かいには、さきほどの大丸神戸店が存在している。

メリケンロードは、旧居住地の西洋モダンと、南京町の代表される東洋レトロとの境界線となっているようだ。

改札口・コンコース

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JR元町駅と同居している阪神元町駅。東口の入り口は、周辺の西洋モダンな景観を意識した意匠となっている。

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そして、東口は内装も西洋モダンを意識した造りとなっており、阪神元町駅へは写真左奥の階段を下りて地下に向かう。

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JR(国鉄)元町駅は、初代・三ノ宮駅跡地に1934年(昭和9年)に請願駅として復活開業したが、阪神元町駅はその2年後の1936年(昭和11年)に開業している。

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上の写真の階段から地下へ降りると、地上の西洋モダンの雰囲気から一変、何となくレトロな香りが漂う空間となっている。

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当駅は、開業から約30年間は終着駅であったが、1968年(昭和43年)に開通した神戸高速鉄道との接続駅として同線への乗り入れを開始し、中間駅となった。

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そして、阪神元町駅ならではのハイライトとなるのが、この地下東口改札の右手から奥に進んだところにある。

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そこは、改札口付近のレトロ感にさらに拍車がかかった様相が感じられる「有楽名店街」なる地下街となっている。

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この「有楽名店街」は戦後間もなくの1947年(昭和22年)に「阪神メトロ街」として開業した、自称・日本一歴史のある地下街で、大人向けの居酒屋がスナックが立ち並び、昭和のレトロ感満載の味のある空間となっている。

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駅の真上がこのようなディープな空間となっているのは、何とも阪神電車らしい光景と言えなくもないが、実はこの名店街は2014年(平成26年)に阪急十三駅前の飲食店街で発生した火災事故を受けて、安全上の理由から、2016年(平成28年)3月をもって閉鎖する決定が貸主の阪神電車よりなされ、存亡の危機に立たされた。

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この突然の決定に、店主からは当然反対運動が起こり、数千名の署名を集めて陳情した結果、「引き続き協議する」として現時点(2016年4月)では営業が継続出来ている模様である。

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その波乱とレトロ感満載の有楽名店街を抜けると、西口改札に繋がっており、左手奥の階段を登ると、、、

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JR元町駅の西口に直結している。

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駅西側は、西洋モダンの景観が意識された東側とは打って変わった東洋レトロの雰囲気が醸し出されており、一見同じ駅とは思えない風情が楽しめる。

時刻表

本線:尼崎・大阪梅田・難波・奈良方面

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全列車停車駅となっている当駅の日中は、梅田行きの特急(直通特急含む)と普通が毎時6本ずつの運行となっている。

難波奈良方面の表記もあるが、阪神なんば線から近鉄奈良線に乗り入れる奈良行き快速急行は、一つ先の神戸三宮駅始発となっている。

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一方の西行きは、高速神戸行きの普通が毎時6本、須磨浦公園行きの特急(各駅に停車するため実質は普通)が毎時2本、姫路行き直通特急が毎時4本となっている。

阪神本線は10分ヘッドであるのに対し、山陽電車本線は15分ヘッドであるため、直通特急のうち半分は時間調整のため板宿まで各駅に停車する。

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乗り場

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ホームは島式1面2線の構造。長らく終着駅の役割を果たしてきた駅とは思えないホームの狭隘さが印象的である。

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当駅は開業から30年間終着駅であったが、元々当駅以西に延伸することを前提とした暫定的な終着駅扱いだったらしい。

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狭隘ホームで天井も低いため、ホーム中央の柱を駆使して様々な運行案内情報が掲示されている。

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2番線に、山陽5000系で運行される姫路行き直通特急がやってきた。

阪神・山陽間の直通特急による相互乗り入れは、並走するJR新快速・快速への対抗措置として1998年(平成10年)より開始されている。

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そして、向かいの1番線にやってきた大阪梅田行き直通特急も山陽5000系での運行だ。

直通特急は山陽電車区間の方が長いため、乗入れ協定で両社車両の走行距離を相殺する関係上、山陽車での運行が多くなっているらしい。

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当駅は将来的な西方向への延伸を前提とした暫定終着駅であったが、開業当時は神戸高速鉄道の構想は無く、逆に東方向への延伸を企図していた山陽電車と、当時の中心繁華街であった湊川駅で接続を図ることを企図していたらしい。

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しかし、湊川駅への延伸は実現しなかったが、戦後神戸市内に点在する民鉄ターミナル駅の接続を目的とした神戸高速鉄道構想に乗り、1968年(昭和43年)に同鉄道東西線との直通運転を開始した。

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1番線に5500系ジェットカーの各駅停車大阪梅田行きがやってきた。

各停は神戸高速鉄道乗り入れ後も長らく当駅を起終点としていたが、1998年(平成10年)の阪神・山陽間の直通特急運行開始を機に、高速神戸駅まで延伸された。

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その普通高速神戸行きが、2番線に5550系でやってきた。種別・行先幕が液晶となっている、1編成しか存在しない貴重な遭遇である。

当駅には引上げ線がないため、当駅起終点時代の普通は、この2番線からそのまま梅田方面に折り返していたらしい。

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青胴車・各駅停車同士の並び。

当駅の利用客数は1日約17000人で、真上にあるJR元町駅の約5分の1程度であるが、至近にある地下鉄海岸線の旧居留地・大丸前駅と比較すると4~5倍程度となっている。

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